イノベーションの共有でひらく、もっと明るい未来

Frédéric Vacher
16 September 2020

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが世界に拡大するにつれて、この規模の危機に全面的に対処するには、個人防護具(PPE)や人工呼吸器の製造会社だけでは間に合わないということがすぐに明らかになりました。業界はさらなる協力を必要としており、それを存分に提供したのがオープンイノベーションのコミュニティです。

オープンイノベーションは、メイカー(デジタル技術を駆使してモノづくりに関わる個人)、イノベーター、そのほか高いスキルを持つ個人やボランティアの人々が、具体的な問題を集合的に解決するためのコラボレーションを実現します。このコンセプトは過去20年にわたって大きな可能性を示してきましたが、これまでそのポテンシャルが生かされたことはほとんどありませんでした。しかし世界が危機に見舞われたことで、オープンイノベーションの真価が問われました。

ダッソー・システムズのOPEN COVID-19コミュニティは、この協調的な問題解決アプローチが達成しうる成果を示す1つの例に過ぎません。わずか数日のうちにエンジニア、ファブラボ、メイカー、病院、医療専門家による世界的なネットワークが形成され、力を結集し、医療用品不足という問題をクラウドベースのプラットフォームを使って新しいクリエイティブな方法で解決することを目指しました。そして目覚ましい効果を上げたのです。  

オープンネットワークのプラットフォームは、こうしたチームに助言や指針を与えられる設計者、メイカー、エンジニア、熟練者、専門家など30万人以上で構成されるファブラボのネットワークと、具体的な要望やニーズを表明できる医療専門家を結びつけました。異なる業界の様々なプロフェッショナルが、共通の困難を解決するために形成したこのコラボレーションは、まさに類を見ないものでした。医師の発した要望が、ものの数秒で地球の反対側にいるメイカーやイノベーターに届いたのは刺激的で感動的でした。通常、これらの人々の活動が交わることはありません。オープンイノベーションによって彼らがつながることにより、異例とも言える集合知が発揮されたのです。

OPEN COVID-19コミュニティはコラボレーションを促進しただけでなく、参加するメイカーやスタートアップが使用できるクラウドベースの設計・3Dモデリング・シミュレーション用ソフトウェアを通して、生産に入る前に現実世界のシミュレーション環境で設計表現を正確に検証し、最適性能を確保することを可能にしました。その結果として、命を救う機器の供給不足を解消し、それらを最も必要としている人々に素早く届けることができました。

実際、世界最大手の製造会社が従来のプロセスや手順といった制約を受けたのに対し、オープンイノベーションのコミュニティは自由に新しい働き方を試し、リスクを厭わず、迅速に行動しました。こうした自由は、一部のメイカーが夜を徹して最前線に送る部品を生産したこともあって、設計や組立に前例のないスピードをもたらしました

OPEN COVID-19コミュニティの成功は誇るべき成果ですが、最も心躍るのは、この経験によってもっと明るい未来への扉がひらかれたことです。これに勝るオープンイノベーションの事例は過去になく、それに続く成功は、集合知がいかに大義のための画期的なイノベーションを実現できるかということを如実に示しました。

今後の数年を考えると、オープンイノベーションによって、いっそう多くのメイカーやスタートアップが結びつくとともに、熟練者や専門家による迅速かつ確実な指導が実現するでしょう。これらの自発的な問題解決者たちは、今回の世界的な災難を出発点にして、これまで以上に画期的なアイデアに命を吹き込み、人類の直面する最も大きな課題に立ち向かって解決していくでしょう。各参加者が知識や専門技能を生かし、公益のために貢献することを唯一の「ルール」としたとき、不可能はなくなるのです。

OPEN COVID-19コミュニティの協調的な取り組みについて、詳しくはこちらをご覧ください。

Frédéric Vacherはダッソー・システムズの3DEXPERIENCE Labのイノベーション責任者で、OPEN COVID-19コミュニティ Open COVID-19 Community を創設しました

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