2つの都市の物語

デトロイトとミュンヘン: よく似た二つの都市、その課題は対照的

Nick Lerner
17 May 2016

1 min read

2016年7月10~14日にシンガポールで開催される世界都市サミットへの参加準備を各都市の職員たちが進めている中、 本誌COMPASSはデトロイトとミュンヘンの二つの都市の比較を行ってみようと思います。どちらの都市も自動車を主要 産業としていますが、それぞれの将来に待ち受けている課題は大きく異なります。とはいえ、両都市とも、今後の進化に向 けてリアルな3Dモデリングが欠かせないものと捉えています。

米ミシガン州のデトロイトとドイツの ミュンヘンには、共通点が数多く あります。まず、ミュンヘンは北緯 48.13度、デトロイトは北緯42.3度と緯度が ほぼ同じです。どちらも川の流れる風景が美 しい場所で、20世紀に入ってからは、自動車 産業が両都市の経済において圧倒的な地 位を占めてきました。

デトロイトの発展は、ヘンリー・フォード氏が フォード・モーターを設立した1903年から始 まりました。フォード氏の後、すぐにダッジ兄 弟、パッカード、ウォルター・クライスラーの 各氏が続いたことから、デトロイトは「自動 車の街」と称されるようになったのです。ミュ ンヘンでは、BMWが市内最多となる41,000 人の従業員を雇用していますが、この人数 は第2位の企業の3倍に相当します。

その一方で、どちらも先進西欧国に位置して いる二つの都市が、経済的には相当異なっ ているというと、意外に聞こえるかもしれま せん。

ミュンヘンは、失業率が3%、2 0 0 7 年の一 人当たり国民所得は30,663米ドルに迫り、 2015年の調査(Mercer Survey)によると、 生活水準はドイツで最も高く、世界でも4番 目に高いとされています。人口はここ10年 で20%増加し、合計で150万人を超えていま す。そうした成功を示す数値を考えると、ミュ ンヘンにとっての最大の課題は、環境を犠 牲にしたり、交通渋滞に悩まされたりするこ となく、310平方キロという限られたスペー スの中で、いかにして成長を続けるかという ことです。

                                                                             デトロイトのダウンタウンに建つパークアベニュービル ( The Park Avenue Building)は、市が再生し始 める前に使われなくなった 80,000以上の物件の一つです。(Image: © AFP Photo / Maria Oberman)

一方、デトロイトは、米国の自動車産業の繰 り返される不振とドーナッツ化現象によって 打撃を受けており、その人口は1950年の国 勢調査時の180万人から現在では70万人弱 にまで減少しています(人口の60%を失った 計算)。失業率は14.5%、2010年の一人当た り国民所得は14,118米ドルとミュンヘンの 半分にも達していません。都市環境も、市内 の住宅の20%にあたる80,000以上の建物が 使われなくなるなど最悪の状態でした。デト ロイトは雇用と税の基盤が脅かされ、185億 米ドルの債務を抱えて2013年12月に破産申 請を行いました。

上記のように二つの都市を取り巻く経済情 勢があまりに異なるため、2016年7月にシ ンガポールで開催される世界都市サミット では、デトロイトとミュンヘンがそれぞれ の課題に対する共通の解決策を見出すこ とはできないという結論を導く方がたやす いでしょう。しかし、実際には、どちらの都 市も、開催都市が手がけている「バーチャ ル・シンガポール」プログラム(http://bit. ly/VirtualSingapore)を綿密に調査するこ とにしています。現在開発中のこの試みで は、市民のスマートフォンの移動状況から自 動的に生成されるデータがダイナミックな 3Dバーチャルモデルに送信され、日々内容 が豊富になっています。その結果、リアルタ イムで進化を続けるシンガポールをシミュ レーションする(進化の状況も含めてモデル 化する)ことが可能になり、目まぐるしく動い ている都市国家では、将来の計画を立てな がら市民との質の高いインタラクティブな 対話を行うことが実現されています。

以下に、デトロイトとミュンヘンがそれぞれ 抱える課題と、シンガポールで用いられてい るテクノロジーを使うことでそうした課題に どのように取り組むことができるかを見てい きましょう。

デトロイトの「製造業中心」の 経済

都市の低迷が続く中、デトロイトは製造業の 文化とともに、再び立ち上がろうとしていま す。「デトロイトは、アメリカの成功をもたら した都市ですから、まだ諦めてはいません」 と、デトロイトに本拠を置く企業、シャイノー ラ(Shinola)の社長であるJacques Panis氏 は述べています。同氏は自社のことを「雇用 創出の牽引車」と表現しています。

                                                                          Maurice Cox氏、デトロイトのプランニング・ディレクター

シャイノーラは、デトロイトのダウンタウン地 区の再建を図ろうと集まっている多くの新興 企業の一つで、時計、自転車、皮革製品、雑誌 などさまざまな高品質の製品を作っており、 すべての製品に「ビルト・イン・デトロイト(デ トロイト製)」のブランドを誇らしげに掲げ ています。従業員500人と小規模ながら、あ と200人ほど増えると、デトロイトの従業員数 トップ25社に名を連ねるようになります。

多くの新規スタッフに複雑な製造工程に求 められる高度な技術を授けることが最大の 課題であると、Panis氏は説明します。「スイ スの時計メーカーが工場づくりに参加し、ス イス標準に適う社員教育の実施と工場オペ レーションの構築を手伝ってくれました。新 しい技術を導入・理解し、そして的確に「作る こと」に、全員参加で取り組んでいます」

「これまで注目されたことも、資金を受けたこともない場所が、 いまやそのどちらも獲得しています。 変革の機会は、ありふれた風景の中に潜んでいるのです」

MAURICE COX氏
デトロイト市プランニング・ディレクター

シャイノーラは税制上の優遇措置は受けて いませんが、市当局の対応は心強いもので あると、同氏は言います。「デトロイトには昔 からの蓄績があるため、空港、港、鉄道といっ た、グローバル製造業に必要なものがすべ て揃っている上に、市当局も革新的なコンセ プトを促進する態勢で、新規企業を心から歓 迎してくれています。市は意見を聞く時間を 取って、機会創出の支援をしたいと考えてい ます。デトロイトは、機会とはどのようなもの かを体現している都市です」と続けます。

広がる課題

そうした見方は、デトロイトで市のプランニ ング・ディレクターを務めるMaurice Cox氏 にとってうれしいものです。自動車、モータウ ン・ミュージック、そして米国史上最悪の自 治体破産(デトロイトはリストラを実施して わずか一年の2014年12月に破産状態から 立ち直った)で最もよく知られている都市に 人と投資を呼び込むために、2015年にこの 職務に任命されました。

経済の疲弊した地域のプランニング・ディレ クターとしての仕事は、計画を策定すること だけではありません。開発を実現につなげ る役割のほか、主要メンバーとして市の応援 団も務めています。2013~2014年だけで、 52億米ドルもの新規投資がデトロイトに流 入しました。ダウンタウンとミッドタウン、近 隣周辺地域を含む主要エリアの人口は増え 始めており、人口減少のスピードは全体で 年間2.5%から約1%に減速しています。Cox 氏は流れを変え続けることに意欲的です。

                                                           Jacques Panis氏、シャイノーラ社長

「デトロイト全体の面積は、マンハッタン、ボ ストン、サンフランシスコをまとめた広さで すが、多くは人口の少ない地域です。そのた め、開発のポテンシャルは非常に高いとい えます。我々は現在、都市のマッピングを行 い、革新的なスタートアップ企業向けの開発 区画を決めています」と同氏は語ります。

このような「超大型都市」では、田舎そのも のの雰囲気を保ったままの地域もあります。 「我々は新たな都市形態について検討し、 この土地の利用法を決めることにより、市 内全域に離れ小島のように点在する企業と 企業を結び付けなければなりません。それ ができれば、ダウンタウンではない近隣地 域に拠点を置いても、新規ビジネスが生ま れ、成長し、ネットワークを構築できるように なるでしょう。これは都市の新しい枠組みで す。投資を通して、成長のエンジン、文化的 な支え、戦略的な雇用機会を生み出してい る最中です」と説明を続けます。

デトロイトが成長を続けるためのもうひと つの重要な焦点は、住宅です。デトロイトで はデベロッパーや建築家のコンペが行われ ており、家族や企業にやさしく密集度が中程 度の住宅群と、歩いて行ける距離にあるそ の他の近隣地域というコンセプトとで競い 合っています。同氏は次のように指摘してい ます。「デトロイトの未来を拓くポイントは、 ビレッジサイズの近隣地域です。これまで注 目されたことも、資金を受けたこともない場 所が、いまやそのどちらも獲得しています。 変革の機会は、ありふれた風景の中に潜ん でいるのです」

「デトロイトは、機会とはどのような ものかを体現している都市です」

JACQUES PANIS氏
デトロイト市へ会社の移転を決断したシャイノーラ社長

変化をもたらすROCKグループ

デトロイトの再生に多く貢献した企業の一 つは、Quicken Loansの親会社であるRock Venturesです。世界最大の住宅ローン融資 会社の一つであるQuickenは、デトロイト出 身のDan Gilbert氏によって設立されました。 2010年に、同氏によって、4,600人のQuicken Loansの従業員はデトロイトのダウンタウン に集約されました。Quickenは現在、同市第 3位の従業員数を抱え、主要医療施設と市役 所に次ぐ雇用規模を誇っています。

R o c k V e n t u r e s 系列の別の企業である Bedrock Detroitは、デトロイトの使われて いない不動産の区画全体を、将来有望な新 興企業向けの魅力的なスペースへと再生を 図っています。RockとBedrockは22億米ドル を共同で出資して、デトロイトの130万平方 メートル)の物件を購入し、建築家、資産管理 者、メンテナンススタッフ、住宅金融業、さら にはIT、営業、マーケティング各部門の専門家 など、8,000もの新たな雇用を創出しました。

Bedrockのプリンシパル兼Rock Companies の社長であるSteve Rosenthal氏は、デトロ イトのダウンタウン北部に位置するブラッ シュパーク歴史地区周辺の4ブロック、3.4ヘ クタールの区画の再活性化をあらゆる側面 から主導しています。2011年以降、同社は再 開発用に90の建物を購入し、現在進められ ている数多くの主要な他の建築プロジェク トにも携わっています。Rosenthal氏はその ことを「ここ30年でデトロイト最大の開発」と 形容しています。

動き出すミュンヘン

デトロイトが消滅寸前からの再生を果たそ うとしている中、ミュンヘンでは過度な繁栄 をどのように管理すべきかに取り組んでい ます。うまく管理できないと、わずか310平方 キロの都市に150万人の人口(過去10年で 20%も増加)が集中することによる圧迫感が 増すだけです。失業率は3%に過ぎず、一人 当たり国民所得も欧州最高水準であると同 時に、ドイツで最も物価が高い地域です。

BMWは、ミュンヘンで41,000名の従業員を雇用しており、市の中心部を占めています。BMWワールド博物館(左下)、本社タワービル(右上)、工場(中央)。(Image: © Ulrich Baumgarten / Getty Images)

そのうえ、高級車メーカーのB M W(同市 で既に圧倒的な従業員数を誇る)が市中 心部に研究活動拠点の集約を行ってお り、ミュンヘンの従業員数はさらに15,000 人増加すると予想されます。同社の新し い研究活動拠点F I Z(F o r s c h u n g s u n d Innovationszentrum、リサーチ・イノベー ション・センター)として知られ、使われてい ない軍事施設を、未来の輸送イノベーショ ンの構築に重点に置いた200万平方メート ルのキャンパスへと転用する予定です。

BMW FIZフューチャー・プログラムのリー ダーであるMarkus Baumgartner氏は次の ように説明します。「FIZは、今後30年の技術 や環境の課題に取り組むR&D部門の主要拠 点となります。FIZの敷地はこれまで非公開 でしたが、将来的にはよりアクセスしやすく なります。建物自体が唯一の境界になるとこ ろもあるでしょう。FIZでは、アイデアがひら めきやすいように、できるだけ多くのパーソ ナルな会合や偶然の出会いが促されるよう に設計されています。敷地一帯がパブリック スペースとなり、5ヘクタールの緑地公園も 設けられる予定です」

「FIZは、今後30年の 技術や環境の課題に取り組む R&D部門の主要拠点となります」

MARKUS BAUMGARTNER氏
FIZフューチャー・プログラムのリーダー

BMWにとって、コミュニケーションは、プロ ジェクトを進める際の重要なポイントです。 「早期から継続的にコミュニケーションを 取ることは、共通目的の定義、強力な支援 の獲得、さらに変化への動きの加速を図る 上で、カギとなります。隣接地域や市と連携 して、FIZの美学、機能、大都市構造への統 合を明確にし、誰もが満足する改善を実施 できるように支援します。たとえば、バス、地 下鉄、鉄道、トラムのスムーズな接続のほ か、道路や歩道の整備が挙げられます」と、 Baumgartner氏は強調します。

                                                                   Markus Baumgartner氏、 FIZフューチャー・プログラムのリーダー

適度な成長

Volker Brambach氏は、ミュンヘンの都市計 画・建設局のプランナーとして、FIZをミュン ヘン中心部に組み入れる計画を主導してい ます。「多くの利益団体との協議を仲介し、皆 にとってメリットがあるように、市の仕組み や将来の開発を定義するマスタープランを 策定しようとしています。主な目標は、地域 のスペースの補強と改善を行い、美しく見え るようにし、できるだけ緑化することです」と 同氏は語ります。

新しい人を受け入れる環境を整えることは、 急速に成長を遂げている都市における優先 事項です。同氏は続けます。「ミュンヘンの BMWには現在、41,000人の従業員がいます。 FIZは今後数十年でその数をさらに15,000 人増やす予定です。そのため、住宅を増やさ なければなりません。土地が不足しているの で、人口密度が高くなる可能性があります」

ミュンヘンも、BMWと同様、反対意見を理解 し、対処する際のカギとなるツールとしてコ ミュニケーションを捉えています。「我々は一 連の非常に複雑な問題に取り組みながら、 同時に市の計画を明確に伝えなければなり ません。それにより、FIZに対して非常にポジ ティブな印象が生まれてきました。というの も、ほとんどの人は求めたものを手に入れ てきたからです。トラフィック負荷の増大が 解決しなければならないが永遠に続く問題 になるとしても、文句を言う人はほとんどい ませんでした」と、同氏は続けます。

200万平方メートルのキャンパスと、BMWのR&D部門の15,000人の従業員の住宅を備えたFIZを作るために、使われていない軍事施設を転用。BMWとミュンヘン市 職員は緑化を図り、市中心部の人口密度の上昇を相殺する環境にやさしいウェルカムスペースに重点を置いてきました。(Image: © HENN Architects)

「その成果として、BMWは望んだ場所で拡張 を続けています。これは市にもメリットがあ り、ビジネスと市民の双方に利益をもたらす インフラ整備に、より多額の資金を集めるこ とができます。プロジェクトの成功がさらな る成功を生んでいるのです」

未来を3Dで可視化する

デトロイトは自己改革を進め、ミュンヘンは 市中心部に根本からインパクトを与えるプ ロジェクトの統合を目指していますが、どち らの都市も3Dビジュアライゼーション技術 を将来の予測に活用しています。

たとえば、デトロイトでは、前述のBedrock が3Dビジュアライゼーションを広く利用し、 開発が都市や都会生活にどのようなインパ クトを与えるかを示してきました。こうした ビジュアライゼーション(視覚化)を実際の 建設前に導入し、建物やその利用計画のシ ミュレーションを行うことはよくあります。3D という一種の「共通言語」により、Bedrockは その計画をコミュニティの各利益団体に説 明し、理解を形成し、賛同とサポートを得る ことができますと、Rosenthal氏は強調しま す。「当社には専門家達で構成する支援チー ムがあり、月次でミーティングを開催して、ビ ジョンを共有したり、要望に耳を傾けたりし ています。その場所に以前からあったものを 尊重した上で、仕事、遊び、生活の場として 優れた環境を協力して作り出しています」

「3Dビジュアライゼーションの使用は 都市プランナーにとって、 非常に価値があります」

VOLKER BRAMBACH氏
ミュンヘンの都市計画・建設局プランナー

ミュンヘンでは、コンペの勝者であるHENN Architecture(ミュンヘン、ベルリン、および 北京)から支援を得て、FIZのマスタープラン が策定されました。そのプランの3Dデジタ ルモデルの中には敷地全体が描写され、各 建物が表示されていました。審査員は3Dモ デルを使用して、プロジェクトと市内の既存 インフラとの融合を実証できたのです。

BMWの人事担当役員であるMilagros Caiña- Andree氏は、FIZとミュンヘン北部の周辺近 隣地域との融合だけでなく、コミュニケー ションと業務プロセスの改善においても、 選ばれたデザインに優位性を見出していま す。同氏は次のように説明します。「緑地、ミ ニ公園、広場、屋上庭園を備えたオープンス ペースのコンセプトは、職場環境の質を高 めることになります。そして、FIZの北部に位 置する近隣公園のようなランドマークや、一 般の人々に開放している多目的ビルにより、 我々は周辺都市と相互に関連し合い、結び 付いている状態をさらに高めることができ ます」

                                将来のプランニングを行う際、デトロイトとミュンヘンはいずれも3Dバーチャルモデルを使用して、 関係者が可能性を視覚 化できるようにしました。(Image: © denisgo / iStock)            

3Dビジュアライゼーションにより、市当局、 近隣住民、隣接した土地のオーナー、(輸送 手段や環境に関心を持っている団体のよう な)他の利益団体などの関係者に、FIZの複 雑なプロジェクト計画を説明することができ ました。

Baumgartner氏は続けます。「FIZはBMW にとって長期的なプロジェクトです。現時点 で誰かが、2040年の世界を心に描くことは 困難です。コミュニケーションやコラボレー ションのさまざまな方法が生まれているで しょう。そして、将来が実際にどうなっている か分からないからこそ、柔軟性のある計画 を立てなければなりません」

Brambach氏も賛同して言います。「我々は 一連の非常に複雑な問題に対処しながら、 同時に当社の計画を明確にしなければなり ません。3Dビジュアライゼーションの使用は 都市プランナーにとって、非常に価値があり ます。政治家、プランナー、地域団体、市民に マスタープランを説明するのに大いに役立 ちます。また、オリンピックパークや旧市街 など都市の一部地域については、物理的な モデルも使用します。デジタル3Dモデルは 容易に適用できるため、関連するスケール や寸法についての操作性も良好です」

高性能プラットフォーム

オンラインでリアルタイム性のある政府 情報の透明化を推進するNPO、Sunlight Foundationは、都市・政府の全データに対 応した統一プラットフォームを導入するこ とは大幅な効率化につながると指摘してい ます。そうしたプラットフォームを使用すれ ば、ほとんどの都市で、物理的に分散された 場所やコンピュータシステム上で個々にに 並存するデータへのアクセス時間を短縮で きます。視覚とその文脈に応じて直感的に、 データをより利用しやすく、かつ理解しやす くすることで、関係者は3Dビジュアライゼー ションを使って、ビジネス・ソーシャル・財政 的な機会のそれぞれに対して、現実になる 前にシミュレーション、分析、テストを実行す ることが可能になり、都市の課題に取り組む こともできます。

Brambach氏は次のように説明します。「ミュ ンヘンにとっての夢は、市全体の完全な 双方向デジタルモデルを一つのプラット フォームで実現することです。インフラ、サー ビス、輸送手段、学校、病院に加えて、建物や 土地の所有の詳細を表示できるものがあれ ば、透明性が高まり、計画段階の課題をどの ように解決するかをより効率的に実証でき るようになります。過去数十年のデータや異 なる部門に蓄積されたデータを組み合わせ れば、過去の変化のインパクトを把握した上 で、都市の将来に対する的確な情報に基づ いた意思決定が行えるようになるため、大き な付加価値を与えることができるでしょう」

デトロイトでは、Cox氏も3Dビジュアライ ゼーション・プラットフォームの可能性に注 目しています。開発アイデアのフォーラムと して、「土地の区画ごとに提案用として、都市 の開発機会の包括提案や要望を表示でき る」ような、全体的なオンライン・リソースを 思い描いています。

Cox氏は建築業界出身であり、デザインを重 視しています。3Dビジュアライゼーションに よって、一般市民も、彼のような都市プラン ナーも、設計段階でプロジェクトを完全に理 解できるようになります。同氏は強調します。 「適切なデザインを体系化することは困難 です。そこで、新しい人材、建築家、歴史的建 造物保存の専門家、プランナーなどのエキ スパートらを迎えて拡大しつつあるチームと 連携しています。専門家たちのビジネス意識 と素晴らしいアイデアに、潜在的投資家は驚 いています。当社はデザインの水準を高め、 数々の選択肢を提供しています」

デトロイトおよびミュンヘンの市職員が 2016年の夏にシンガポールを訪問した際 に、開催都市であるシンガポールが、「バー チャル・シンガポール」のプラットフォームを どのように開発しているか、また既存の都市 データの統合、視覚的な表示、都市生活がも たらす複雑な時間・空間的な影響を捉えて 伝えるためのIoT(モノのインターネット)の 活用などを、直接見ることができるでしょう。 輸送管理や廃棄物管理といったシステムな ど、人々と、その生活環境の間のパターンや 相互の影響度を分析することによって、シン ガポールは、より効率的で住みやすく、持続 可能な将来を目指すほかの都市をも成功へ と導いています。◆

See Detroit’s comeback
http://bit.ly/RevitalizeDetroit

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