スタートアップ企業のように行動する

デジタルネイティブのように戦う既存企業に役立つ、クラウド技術に関する5つのアドバイスを紹介します

Rebecca Lambert
7 July 2020

スタートアップ企業は現状に満足することはありません。敏捷性や革新性など、彼らには、市場の変化に素早く合わせ、従来型の企業よりもチャンスをいち早くつかめるという共通した特徴があります。COMPASSマガジンは、クラウドを利用することでスタートアップ企業のような行動が可能になる5つの主要領域について考えます。

デジタルネイティブな企業は、最新技術を使って新製品の発売や新たなビジネスモデルの立ち上げを競合企業よりも早く実現し、幅広いメリットを手にします。

例えば、Capgemini-Sogetiの2018年のレポート『The Automation Advantage(オートメーションの優位性)』によると、デジタルネイティブな企業の84%はクラウド技術により売上げの増加と運営費の低減を実現し、81%はクラウドを使うことでビジネスモデルのイノベーションを達成しています。

それでは、レガシーインフラ上で運営している既存企業が遅れを取らないようにするにはどうすればよいのでしょうか。それにはまず、スタートアップ企業の戦略にならい、オペレーションの一部だけでもクラウドに移行することです。

「オンプレミスソリューションは、リソースの配備に多額のコストがかかるにもかかわらず、今日の市場で企業が競合するために必要な機敏性やタイムリーなイノベーションを提供できません」と述べるのは、米国に拠点を置くコンサルタント会社XD Innovationのデジタルイノベーション部門バイスプレジデント、David Mann氏です。「当社は顧客の財政面や運営面のニーズを把握しています。また、顧客の将来的な要求に合わせて容易に拡張できるという理由から、クラウドベースのソリューションを提案しています」

クラウド技術を採用することにより、既存企業がスタートアップ企業のように行動できる5つの主要領域を以下に紹介します。

1. 最新機能に目を向ける

モーション/制御技術分野でフォーチュン250社にも選ばれている世界的リーダー企業、Parker Hannifinはクラウドベースの技術を利用して、新たな機能を取り入れています。

「クラウドプラットフォームが当社にもたらす一番のメリットは、オンプレミスよりもずっと早い時期に、新しい特徴や機能を実装できることです」と、Parker HannifinのエンジニアサービスとIT部門のディレクターを務めるBob Deragisch氏は述べています。「クラウドがこれほど速いスピードで成果を上げるとは夢にも思いませんでした。この機能性のおかげで、当社チームは取り組み方を一新し、業績を伸ばしています」

さらに重要なのは、同社のクラウドベースのアプリケーションは、設計者やデベロッパーが習得してきた数百年にわたるスキルや専門知識を保存し、それを将来の製品開発に適用できることです。

「設計の再利用だけでも、開発全体の30~60%を改善できるようになると私たちは確信しています」とDeragisch氏は話します。「これは単に1つの製品をあるアプリケーションから別のものに適用することにとどまらず、特性や機能を把握し、それらをこれまでにはない方法で再利用します。かつて設計のノウハウは、それを生み出した個人の手の中にだけ存在するものでした。しかし今では、その情報を設計や計画から製造、組み立てに至るまでの全体で使用し、統合することができるので、製品のライフサイクル全体を通じたデジタルスレッドをつくることができます。これは私たちの目標の重要な部分であり、当社の市場での長所を強めるものとなるでしょう」

2. スピードと機敏性を高める

クラウドを使うと、過去のITインフラではこれまで実現できなかったスピードやスケールで、設計から製造へと製品を移行することが可能になります。 「当社の顧客が必要としているのは、拡張性と機敏性があり、迅速に導入可能な技術です。なぜなら、この技術が彼らのビジネスモデルの中核となりつつあるからです。クラウドベースを導入し活用することにより、投資家や取締役のメンバーに対して、要求される実行スピードを実現できる技術を採用していると断言できます」(Mann氏)

「当社の顧客が必要としているのは、拡張性と機敏性があり、迅速に導入可能な技術です。なぜなら、この技術が彼らのビジネスモデルの中核となりつつあるからです。クラウドベースを導入し活用することにより、投資家や取締役のメンバーに対して、要求される実行スピードを実現できる技術を採用していると断言できます」(Mann氏)

Parker Hannifinにとって、スピードは重要です。「私たちは市場に一番乗りしなくてはなりません。クラウドベースのツールを使えば、早い段階から情報にアクセスできるため、必要条件の把握、スペックの定義、開発をこれまでよりも迅速に実施できるようになります」とDeragisch氏は述べています。「そして、人工知能などの高度なツールや機能を使って設計を改善し、即座に製造やエンジニアリングに引き継ぐことで、個々の製品の製造計画をスピーディーに行えます。このようにして協力体制とフィードバック機能を強化すれば、生産不可能な製品を設計するといったことに時間を浪費することは確実になくなります」

3. 顧客中心主義を強化する

Capgemini-Sogetiのレポートにより、クラウドベース技術を導入した企業の86%のカスタマーエクスペリエンスが向上したことが明らかになりました。Deragisch氏は、これは知識主導型プロセスを組み込み、顧客の要求を素早く取り入れることで工学技術を飛躍的に発展させることができるクラウドの機能に起因すると考えています。「現在、私たちは顧客のニーズに今まで以上に耳を傾け、彼らの問題を克服するソリューションを提供できるようになりました。カスタマーエクスペリエンスは重要ですが、顧客が過去に経験したことは、今後に期待する経験とは異なります。このようなクラウドベースの技術がなかったら、ビジネス環境の変化についていけなくなるでしょう」(Deragisch氏

Parker Hannifinがこの5年間に行った最大の変革は、起業家的思考を自由に取り入れることにより、パフォーマンスの高いチームを作ったことです。

「これらのチームは、スタートアップ企業の運営方法と同じように、かなり高い自律性を持って仕事をしています」と、Deragisch氏は述べています。「最新のクラウド技術を利用すれば、ピーク時の作業負荷に対応するために新規のサーバーに速やかにサインアップし、旧式のプロセスやプラットフォームの制約なく新たなアイデアを連携することが可能になります。私たちはチームが型にとらわれず自由に発想し、技術が彼らにとって妨げではなく助けとなるようにサポートしています」

4. イノベーションの流れを止めない

スタートアップ企業のほとんどはイノベーションへの情熱を持って誕生する一方で、既存企業は自分たちが確立したこれまでのベースを守ることに注力するものです。しかし、イノベーションの欠如は顧客離れの一因となるため、既存企業は新しいアイデアを奨励し、失敗からしっかり学んでいくような開放的な文化をつくることに改めて目を向けています

「クラウドは、もっと革新的で無駄のないプロセスを採用するという顧客のビジョンを実現するものです」とMann氏は話します。「彼らは最初、いつも決まってこう答えます。『わかりました。これに似たものを従来の技術でやったことがあります。どうやって再現しますか。』組織がこれまでのやり方を変えることこそが最大の課題です。求められているのは過去の再現ではなく、再発明です」

Parker Hannifinが変革のためにおこなったことは、新技術の導入だけではありません。Deragisch氏は次のように述べています。「私たちはイノベーションを単なるツールとしてとらえているわけではありません。重要な技術的課題の解決をサポートするためのツールがクラウド上で容易に利用できるため、チームに活躍の場を与えやすい雰囲気が高まります。チームはwhat-if型の質問をして顧客のニーズに真摯に耳を傾けることが奨励されるため、私たちの誰もがより良い明日のための夢を追求できるのです。

私たちはイノベーションを成長と発展を続けていくための唯一の方法だと考えています。それには、早い段階から新しい技術を使ってリスクを負えるような環境が必要であり、その環境によって、そのイノベーションが顧客の望むものであることを確認し、その後それをスピーディーにソリューションとして発展させて、市場に投入できるようになります」

5. デジタルリーダーになる

Parker Hannifinと同様に、マッキンゼーも、スタートアップ企業に遅れを取らないようにするならば、既存アプリケーションをクラウドに移行する以外にもやるべきことがあると述べています。

「レガシーアプリケーションを取り出して、それらをクラウドに移行する(リフトアンドシフト)だけでは、クラウド基盤やシステムが提供可能な利益を自動的に生み出せない」と、マッキンゼーは2018年同社の記事『Cloud adoption to accelerate IT modernization(ITの近代化を加速するためのクラウドの採用)』に記しています。「実際のところ、場合によっては、そのアプローチが今までよりも複雑で扱いにくく、コスト高なITアーキテクチャになる可能性もあります。クラウド全体の価値は、1回限りの戦略的判断ではなく、デジタル変革を追求するための全体的な戦略の一部として、クラウドという選択肢を活用することにあります」

クラウドを単なる新たなIT機能としてではなく、戦略的な実現手段として利用することは、Parker Hannifinの将来的なビジネス戦略の推進に役立っていると、Deragisch氏は述べています。

「当社の事業のキーマトリックスの一つは、デジタルリーダーシップです。当社はこれらの工学技術上の難題を解決するためにスピード、機敏性、そしてイノベーションを取り入れていますが、これらなくして現在顧客が期待する時間枠内で彼らの要求を満たすことはできないでしょう。当社は最近、自社の目標を再定義し、『より良い明日へとつなげる工学技術の飛躍的発展を実現する』と定めました。この目標達成には、当社のクラウド戦略が重要なカギを握ると私は心から信じています。この技術なくして、工学技術を飛躍的に発展させることなど不可能です」

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