Aerospace & defense

メーカーからの 業務移管 設計責任の移管で大幅に高まる 航空宇宙関連サプライヤーの負担

Tony Velocci
11 June 2014

航空宇宙産業のメーカーは、究極の品質と信頼性、予定通りの納品、各年のコスト削減が要求される環境において、小規模サプライヤーに対して開発や製造の計画に伴う事業面、財務面のリスクをさらに分担するよう求めています。

航空宇宙関連のサプライヤーは大変動の渦中にあり、適応能力が企業の命運を決めるかもしれません。

大変動を引き起こしている圧力には、グローバル化、競合企業の出現、価格圧力、民間航空機の生産比率の高さ、成熟市場である防衛産業への支出の落ち込み、最終製品メーカーと下の階層に位置するサプライヤーとの関係の変化などがあります。

現在、航空宇宙システムの価値のうち、サプライヤーが作成する部分は50~60%を占めており、ロッキード・マーチン社執行役会長(Executive Chairman)であるBob Stevens氏は、この数字は大きくなってゆくと予測しています。より安価な製品を求める最終使用顧客からの価格圧力を受けて、サプライチェーンの最上位に位置する企業では、イノベーションと生産性についての責任を、下の階層に位置する部品やサブシステムのメーカーにより多く負わせる動きが始まっています。

60%

航空宇宙システムの価値のうち、サプライヤーが作成する部分は50~60%を占めています。

「今日、(防衛産業の)サプライヤーは非常に大きな圧力を受けています」とStevens氏は述べています。防衛産業の市場は、ほとんどの地域で財源の制約により縮小しつつあります。

スピードが不可欠

専門家は、サプライヤーが生き残るためには、運営コストの管理を改善し、イノベーションを推進して、取引先メーカーとの間でより緊密なパートナーシップを築かなければならないと指摘しています。

プライスウォーターハウスクーパース社で航空宇宙分野のコンサルティング業務を指揮するScott Thompson氏は、「成功を収める可能性が最も高いのは、プロセスの簡素化、リーン生産の原理の実現、インフラの再設計を進める企業です」と述べています。

それらと並行して、品質に対する管理をさらに徹底し、戦略的な専門技術を獲得するためにサプライヤーの買収を進めているメーカーもあります。たとえばGE社は、2012年に低圧タービンやギアボックスのサプライヤーであるイタリアのAvio S.p.A.社と、米国に本拠を置く精密製造企業のMorris Technologies社を買収しました。どちらの買収も、GE社の3Dプリンティングの力を飛躍的に拡大させることになりました。
 
前述した要因にもまして、メーカーとそのベンダーにとって、より安価な製品をより迅速に提供する必要性が、変化を促す要因となっています。

アビオニクス(航空電子工学)システムとITシステムを提供する企業のRockwell Collins社で民間システム部門の上級副社長兼最高執行責任者(COO)を努めるKent Statler氏は、メーカーが製品設計プロセスの初期段階からサプライヤーに関与を求めることが、スピードアップに貢献すると考えています。「コスト圧力が高まり、航空機の複雑性が対数的に高まっていることから、顧客の期待に応えるためにはシステム インテグレーターとサプライヤーの間で、リスク分担についてより緊密なパートナーシップを築く必要があります。サプライヤーは構想段階から参加し、アイデア面で貢献する責任を負うのです」(Statler氏)。

米国に本拠を置く油圧空圧制御機器メーカーであるTactair Fluid Controls社の社長、Michael Yates氏は、業界の動向として、メーカーとサプライヤーの間にはより緊密な関係が必要とされていると述べ、次のように指摘しています。「下の階層に位置するサプライヤーは自社の責任を理解しなければなりませんが、それを可能にするのは、オープンなコミュニケーションが存在する場合のみです。」◆

「下の階層に位置するサプライヤーがメーカーとの間に築く関係が緊密になるほど、最適な顧客エクスペリエンスを提供できる...可能性が高まります。」

MICHAEL YATES
TACTAIR FLUID CONTROLS

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