アディティブ・マニュファクチャリング または3Dプリンティングは、プロト タイピングのはるか先を進んでき ました。今日、航空宇宙関連メーカーの大半 が、この技術を活用して既存コンポーネント の機能性を高め、商用民間機向け非構造部 品の組み立てを行っています。
アディティブ・マニュファクチャリングの熱狂 的な支持者は、機体、翼、組み込みセンサーや 他の電子機器などの複雑な形状をしたエン ジンの重要部品を、このような革命的なプロ セスを用いて「プリント」するようになる日を思い描いています。しかし、米国エネルギー省 のオークリッジ国立研究所(ORNL)によると、 そうした破壊的な未来像を実現するには、ア ディティブ・マニュファクチャリングが直面す るハードルを乗り越えなければなりません。 ORNLでは、さまざまな業界の何百社もの企 業と連携し、アディティブ・マニュファクチャリ ングの最新技術の促進を図っています。
「アディティブ・マニュファクチャリングはラ ピッド・プロトタイピングや特殊な医療機器な どへの適用で数多くの部品をプリントした実 績があり、かなり成熟している技術と言えますが、大多数の分野での適用についてはまだ初 期段階です」と、ORNLで製造実証施設のディ レクターを務めるBill Peter氏は述べています。
品質の保証
ORNLでは毎年、約700の組織を代表する 5,000名超の訪問客を受け入れていますが、訪 問はとりわけアディティブ・マニュファクチャリ ングについて意見交換したいと考えています。 Peter氏によると、最終製品に不可欠である部 品の性能と安全性などについて、従来のプロ セスによるものと同様の品質レベルをアディティブ・マニュファクチャリングで製造した部 品でも達成できるかが最大のハードルである ことが、訪問客との意見交換から明らかになり ました。
「最大の懸念は、アディティブ・マニュ ファクチャリングによって作成したコンポーネ ントの品質を保証する手法がないことです」
「ラピッド・プロトタイピングや 特殊な医療機器などへの適用では 数多くの部品をプリントした実績があり、 アディティブ・マニュファクチャリングは かなり成熟している技術といえますが、 大多数の分野での適用については まだ初期段階です」
BILL PETER氏
ディレクター、オークリッジ国立研究所 (米エネルギー省の製造実証施設
処理パラメーターの若干の修正のほか、粉 末のチタンやニッケルなどの堆積物による 微細構造が最終製品の機能を大きく変える ことになると、Peter氏は続けます。
さらに、 「データ解析・視覚化システムのフレーム ワークを使用して、航空宇宙産業関連メー カーが求める品質レベルで複雑な部品を繰 り返し製造する方法を時間をかけて示して いくことになりますが、完全なソリューション に到達するにはまだ数年かかるでしょう」
スピードの必要性
別のハードルは、1つの部品のプリントに使 われる材料の堆積速度です。
アディティブ・マニュファクチャリングのプロ セスは、CADによる3次元部品設計から始ま り、次にそのファイルが積層マシンのコン ピュータにダウンロードされ、電子的に非常 に薄い層にスライスされます。マシンでは、 金属の層であってもビルドプレート上に薄 く広げることが可能です。コンピュータ制御 されたレーザーやその他のエネルギー源 は、オリジナルの3D設計のスライスデータ に対応するパスの後に、金属の薄い層を焼 結または融解させます。積層プロセスは部 品がレンダリングされるまで繰り返されます が、このプロセスでは従来の製造技術よりも 時間がかかる場合があります。
メーカーは常に生産サイクル時間を短縮す る方法を探し求めているため、その点が問 題となります。「堆積速度の向上を図ること が、航空宇宙産業やその他でも、アディティ ブ・マニュファクチャリングによるコンポー ネントの適用に対する実現可能性を高める ことになります」と、Peter氏は指摘します。
しかし、わずかこの数年での進歩を踏まえ れば、研究者は希望を見出すことができる でしょう。たとえば、ORNLは米国を拠点とす る受注生産機械メーカーであるCincinnati Incorporatedと共同で非常に革新的なア ディティブ・マニュファクチャリング・システム を開発しました。このシステムでは、今日のマ シンより最大10倍大きい強化ポリマーのコ ンポーネントを、最大1,000倍速くプリントで きます。つまり、過去に市販されていたマシ ンでは1時間当たり16~65立方センチであっ たのに比べて、1時間当たり16,000~65,000 立方センチの堆積速度でのプリントが可能となります。このポリマーによる作業から得た 知識を適用し、チームは現在、粉末金属を用 いて同様の堆積速度の改善を達成すること に注力しています、とPeter氏は説明します。
見覚えのある行程
Kevin Michaels氏はICF Internationalの航空 宇宙・MRO(保守、修理、点検)コンサルティン グ事業のバイス・プレジデントで、航空宇宙 製造分野での世界的な権威です。アディティ ブ・マニュファクチャリングが進化を続ける中 で、業界は他の変革技術、とりわけ複合材(コ ンポジット)の経験から教訓を学び取らなけ ればならない、とMichaels氏は強調します。
l970年代、複合材はその強度と耐食性から 広くもてはやされたものの、完全に受け入れ られるには数十年かかりました。現状行われ ているような機体全体が複合材で構成され る日が来ることを、予見した人はほとんどい ませんでした。
「アディティブ・マニュファク チャリングも、10年後に振り返れば複合材の 時と同様に論理的な帰結に見えるかもしれ ませんが、今日の時点でそれを予測すること は困難です」と、Michaels氏は述べます。
複合材とアディティブ・マニュファクチャリング 双方の開発を比較することは有益であると、 Paragon European Partner(s ロンドン、独立 系プライベートエクイティ・ファンド)のマネー ジング・ディレクター兼戦略経営コンサルティ ング会社Candesicの航空宇宙産業プラクティ スリーダーであるAntoine Gelain氏は次のよ うに説明します。
「類似性が教えてくれること は、テクノロジーの適用性と市場性には大き なギャップがあるということです。このギャッ プを埋めるには数年はかかると思います」
複合材もアディティブ・マニュファクチャリン グと同様、メーカーの信頼を獲得しなけれ ばなりませんでした。Gelain氏は続けます。 「複合材を使った航空機の構造が早い段階 から確立されていたのに対し、(複合材を使用した機体の)認定と製造プロセスの確立 に関しては長い時間を要しました。これまで の常識を塗り替えるような素材であったた め、複合材を用いた製造で実行可能なビジ ネスモデルに切り替えて製造するよう、顧客 を説得する必要があったからです。しかし、 アディティブ・マニュファクチャリングはそれ よりも速く進む可能性が高いでしょう。とい うのも、デジタル時代には、変革技術はより 容易に適応することができるからです」
In the end, he said, business challenges will drive advancements in AM.
ビジネスの課題があるからこそ最終的に、ア ディティブ・マニュファクチャリングの進歩は 促進されるだろう、と同氏は指摘します。「イ ノベーションのペースは全体としてはるか に速くなっています。主な理由として、名だた る企業は迅速に移行しない場合の危険性を 認識しており、今までよりも積極的にリスク を取って躍進的なテクノロジーに多額の投 資をしようと考えているからです」
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