Architecture, engineering & construction

インフラの イノベーション

Nick Lerner
28 October 2015

人口の増加により繁栄をするために、土木エンジニアや建設会社が官公庁向けに建設する道路、橋梁、その他公共施設といったインフラが質、量ともに向上することが求められています。そうしたプロジェクトでは多くの場合、コストが超過していますが、関係者のコラボレーションを強化することで多くの課題を克服できると、専門家の意見は一致しています。

土木プロジェクトは、水道、交通、通信、エネルギー、廃棄物処理の各システムを社会に提供することによって、コミュニティが機能し、発展および成長するように支援します。しかし、世界のインフラの大半は不十分で崩壊しつつあり、また、人口増加によりさらにインフラが必要となります。

ニューヨークに拠点を置くコンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニー社によると、今後 2030 年までの間に予想される経済成長に対応するためだけでも、インフラへの世界的な投資は 60% の増加、つまり世界で 57 兆米ドルの増加が必要になるとのことです。しかしながら、支出を増やすだけですべてを解決することはできません。マッキンゼー・アンド・カンパニー社は土木エンジニアリングの生産性を高めることで年間 1 兆米ドルを節約できる可能性があると推定しており、土木業界に効率化を取り入れるようにとの圧力がかけられています。

「個々の建物の建設や開発事業に比べると、国内経済を支える大規模な土木プロジェクトはこのうえなく複雑です。そして、こうしたプロジェクトは納税者が資金を提供するため、多くの場合、厳格な公開審査を受けなければなりません」と、土木専門家向け雑誌「New Civil Engineer」のエディターである Mark Hansford 氏は述べています。

ロンドンを拠点とする国際職能団体の土木工学技術者協会は、審査が増えた別の理由を説明しています。土木プロジェクトに対する公的融資の減少により、公的投資を補完する民間資金が必要になりますが、民間の支援者はプロジェクトからわずかな無駄も見逃さずに引き締めることに長けています。その結果、プロジェクトを予算内で期日通りに終わらせることがますます要求されるのに加えて、新たに利益も重視されるようになり、土木業界はすばやく順応することを強いられています。

コラボレーションのモデル

非効率は土木プロジェクトでよく見られます。その理由について、「旧態依然で細分化されている事業構造は、専門家と市民の間での情報共有の欠如につながり、多くの大規模で複雑な土木プロジェクトの問題を悪化させています」と、英国を拠点とする Hawes Associates の政府および地方自治体向けの洪水防止コンサルタントである Andrew Hawes 氏は説明します。

Hawes 氏は、数十億ドルもの価値がある土地、作物、企業、住宅を洪水から守る海岸堤防を担当し、次のように述べています。「このような重要なプロジェクトでは、複雑さ、規模、リスクのレベルが必然的に高くなるため、コントラクターや関係者には、設計、エンジニアリング、運用に関する情報を得るために、専門的な知識をリアルタイムで提供してくれる統一プラットフォームが必要です」

さらに続けて、「そうしたプラットフォームは製造業でよく見られるのに対し、土木エンジニアリングではほとんど使用されることはありません。新しいコラボレーション型商用モデルを使用すれば、オンサイトおよびオフサイトにいるプロジェクトチームやファブリケーターを1つにまとめることができるため、無駄を削減して作業することができるでしょう」と述べています。

資金について

インフラプロジェクトへの民間資本の流入に関するレポート「InfrastructureInvestor.com(インフラの投資家)」のエディターである Matthieu Favas 氏によると、複合的なコラボレーション・プラットフォームにより、土木プロジェクトで必要とされる多くの資本を呼び込むことが可能になります。Favas 氏は次のように説明します。「投資家はオープンさと透明性を求めます。それは、すべての関係者が最適な形式でプロジェクトの情報を利用できるようになればリスクを低減することが可能であると、理解しているからです」

優れた情報は重要な競争上の優位性をもたらすこともできると、同氏は続けます。「投資家は迅速なプロジェクトの完成による早期の収益の獲得により競合会社に勝つことができます。情報共有を促進することで、政府、コントラクター、市民とのコラボレーションを実現できます」

「急速な成長を遂げている中国では、投資家からの圧力ではなくスピードの必要性から、効率的なインフラ構築が大きな焦点です」と、上海市政工程設計研究総院 (集団) 有限公司 (SMEDI) IT センターのアソシエーション・チーフ・エンジニアの Lv Wei Zhang 氏は述べます。「効率化が中国の急速な開発に伴って進んでいる要因の1つは『3つの並行作業』の実施を採用したことです。これは、計画、設計、建設の3つのプロセスを並行して行う、つまり、設計プロセスの途中で建設フェーズを開始するということです」

建設が進むのに従って変化していくプロジェクトを管理する唯一の方法は、高度な管理システムを使うことであると、Zhang 氏は説明します。「当社の土木エンジニアリング BIM ソリューションにより、頻繁に起こる設計の変更に対応することが、ナレッジベースおよびテンプレートベースの設計技法を利用することではるかに容易になりました。現在では、きりがない修正作業の苦痛は大幅に解消されています」

人口のシフト

サウジアラビアでは、英国に拠点を置く建築エンジニアリング企業の Newtecnic が、アブドゥッラー国王金融地区で Zaha Hadid 氏設計の地下鉄システムの新しいファサードの設計エンジニアリングを現在行っていますが、土木エンジニアリングの高度なシステムに対するニーズをコラボレーションが後押ししています。リヤドのビジネス中心地に位置する数十億ドル規模の交通ハブは、市の地下鉄6路線の主要インターチェンジとして機能し、市のモノレールネットワーク、およびキング・ハーリド国際空港や近郊の大学へのアクセスを提供する予定です。

「データを利用しやすい知識に変換することで、適切な業務の効率化と財務利益を土木エンジニアリングにもたらす」

ANDREW WATTS 氏
創立者、NEWTECNIC

このプロジェクトでは情報共有システムを利用して、さまざまなグループ間の目標を調整しています。「これにより関係者全員が確実につながり、同時に、意味のある方法で現在の設計や関連する情報についてコラボレーションできます」と、Newtecnic の創立者である Andrew Watts 氏は述べています。

大規模インフラプロジェクトの合理的な次のステップに関して、Watts 氏は次のように説明します。「同時に実行可能で柔軟性が高く、コラボレーティブな作業のやり方を導入することで、ビジネスプロセスの分断の解消、ドキュメントの統合、設計と建設の安全なスピードアップを図るテクノロジーを展開することです。データを利用しやすい知識に変換することで、適切な業務の効率化と財務利益を土木エンジニアリングやインフラの投資家および関係者にもたらすのと同時に、あらゆる人に対して経済的利益と社会的利益を強化できます」

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