顧客の心をつかむ

エクペリエンス重視のビジネスモデルで顧客を惹きつけるアマゾンとアリババ

Rebecca Lambert
20 June 2018

自動車のベンディングマシンからレジ会計不要の買い物まで——刺激的で斬新な顧客エクスペリエンスを、今よりももっと便利でパーソナライズした形で提供することに企業は全力で取り組んでいます。エクスペリエンスのリーダー企業は、顧客の注目を集める方法を新たに探し出し、継続的なリピートにつなげているのです。

ワシントン州シアトルのコンビニエンスストアでは、買い物客がスナック菓子や食料品、日用品を手に取ると、そのまま店を出て行きます。もちろん、万引きではありません。これはアマゾンの最新の実験で、実店舗での買い物を待ち時間なくスピーディに済ませたいという顧客の希望を叶えるものです。

店内を歩き回ったり商品を手に取ったり、といった買い物客の行動をカメラとセンサーが追跡し、仮想カートを作成します。買い物客が店舗を出るときに商品代金をアプリが集計し、買い物客のアマゾンアカウントに請求する仕組みです。

このコンセプトは消費者の心を見事にとらえたようです。この店舗がGoogleレビューで獲得した星は5.0点満点中4.6点。顧客はこの店舗を「小売店の未来」と呼び、「ユニークでシームレス」なショッピング・エクスペリエンスを絶賛しています。「安価な食料品が技術の進歩で便利に買える。ショッピングの未来がここに!」と、あるレビュアーは投稿しています。

あらゆる業界で、パーソナライズされ、イノベーティブかつ破壊的な革命をもたらす顧客エクスペリエンス(CX)が新たに開発され、高まる消費者の期待に追い付こうと企業は躍起になっています。フォレスター社の2017年調査レポート「Pivot to Person-First Personalization(顧客ファーストのパーソナライゼーションへの転換)」によると、調査対象企業の3分の2以上が、オーダーメイド型エクスペリエンスの提供を優先事項に掲げています。理由は明らかです。2016年のフォレスター社レポート「The CX Transformation Imperative(命題となるCX改革)」によれば「CXのリーダー企業はその対応が遅れている企業よりも収益成長が速い」からです。

個人レベルでのビジネス

顧客を戦略の中心に据えることの重要性を理解している企業の1つにドイツのMecuris社があります。装具や義肢のメーカーである同社は、フィッティングプロセスのデジタル化と設計プロセスのオートメーション化を実現しました。デジタル化した設計図を3Dプリンターに出力すると、使用者それぞれの骨格や動きに合うように設計された器具が、ものの数時間で出来上がります。

「私どもが目指すのは、動きやすさ以上にカスタム設計した製品であることです」と同社CTOのFelix Gundlack氏は語ります。結果、格別な顧客エクスペリエンス―使用者が望んだ通りのフィット感とデザインで製作された義肢―を実現しています。

Mecuris社のCEO、Manuel Opitz氏が思い出すのは、3歳の女の子のために製作した、ユニコーンのデザインを側面に施したピンク色の義足のことです。その義足を最初につけたとき、その女の子は「これが私の足ね」と声を上げました。

「かつては、運動障害を隠そうとする風潮がありました」とOpitz氏。「(しかし今、)私たちが目指しているのは、患者用補助具といわれるものへの意識を一新し、もっと他の器具のように使ってもらうことです。例えばメガネは、一昔前にはあまり人前でかけたくないものでしたが、今やある種の自己表現、つまりアクセサリーの1つになっています。義肢や装具も同じような変遷を経て、ユーザーが誇れるものにしたいのです」

Mecuris社をはじめ、多種多様なリーダー企業は、最新の自動化テクノロジーによって大規模パーソナライゼーションが手に届くものになったことを理解しています。たとえば、オーストリアを本拠とする自動車製造設備の世界的大手メーカーであるスリーコン社は、顧客との連携の効率化を高めるために最新の技術を利用し、カスタマイズしたソリューションをシミュレートすることで、設計プロセスにかかる時間を30%削減しました。

「現在設計者は、特注の個別コンポーネントを既存の部品設計に自在に加え、カスタマイズとコスト効率を両立させた新たな部品を作成することが可能になりました」とスリーコン社のCEOであるHannes Auer氏は述べています。

イノベーションの共創

設計段階から消費者も参加し、カスタマイズしながらエクスペリエンスを作り上げていく「オープンイノベーション」と呼ばれる手法が盛んになってきています。

「オープンイノベーションとは、イノベーションプロセスに社員、サプライヤー、スタートアップ企業、大学、顧客といった組織の関係者全員がかかわることを意味します」と語るのは、フランスにあるオープンイノベーションのコンサルティング会社、bluenove社の創業者兼共同社長Martin Duval氏です。「企業がイノベーションプロセスに顧客を参加させるといっても、たいていは遅きに失しています。新しい製品やサービスの設計終盤であったり、最終試験への反応を得るためのものに過ぎなかったりします」この段階で製品に新たなアイデアや異論が出たとして、初期のコンセプト段階と比べ、その対処にかかるコストは桁違いに高くなる可能性があります。

ですから、オープンイノベーションのメリットは二倍になります。企業は問題を解決し、新たな事業機会を特定できるようになります。それと同時に、あらゆる段階で顧客が意思決定に関与していることから、より顧客中心の文化が形成されるようになります。

顧客が求めるもの

フォレスター社の2017年レポート「Improving CX Through Business Discipline Drives Growth(事業統制による成長推進を通じたCXの向上)」では、顧客エクスペリエンスのスコアが高い企業は、スコアが低い競合企業と比べて、収益の成長速度が5倍になることが明らかになりました。

自動車業界において、この軸となるのはロイヤルティです。J.D.パワー社の米国自動車サービス満足度(Customer Service Index: CSI)の年次調査によると、自らのエクスペリエンスに満足している顧客はそのディーラーのサービスやセールスの利用を人に薦める傾向が強くなります。またこれは特定のブランドやモデルへのロイヤルティにも影響を与えます。

「満足している顧客はブランドにとどまり、知り合いを紹介してくれる傾向があります」と話すのは、J.D.パワー社でUS Automotive Retail Practiceのバイスプレジデントを務めるChris Sutton氏。「何かが欠けているということは、別の店で買うよう顧客に退出を促すようなものです」

Amazon Goストアでは、買い物客が入店時に自分のモバイルデバイスのAmazon Goアプリをスキャンします(2018年1月22日ワシントン州シアトル)。1年を超えるベータテストを経て、アマゾンはレジ会計不要の実店舗を一般向けにオープンしました。(Image © Stephen Brashear / Getty Images)

顧客が求めるもの

顧客に足繁く来店してもらうため、企業は提供するエクスペリエンスのさらなる改善を模索しています。例えば、フランスの食料品小売Intermarché社とチーズ製造のSavencia社は、最近ある調査を実施し、顧客がチーズを買い求める際、チーズの種類(ハードチーズやソフトチーズなど)よりも実際の目的に従って選びたいと思っていることを探り当てました。両社は協力し、新たなディスプレイ戦略を策定しました。

Intermarchéビュク店(フランチャイズ加盟店)で責任者を務めるMarie-Noelle Lefebvre氏は次のように述べています。「顧客から受けたフィードバックは実に好意的でした。データを調べたところ、売上は4%増です。当社の取扱品目の多くが生鮮食料品や日用品であることを考慮すると、店頭販売で得られたこの数値はかなりの好成績です」

オンラインマーケットプレイスのアリババのように、新たなビジネスを一から構築している企業もあります。アリババは、オンラインとオフラインのショッピング・エクスペリエンスをシームレスに融合するテクノロジーを利用する「ニューリテール(新しい小売)」コンセプトを立ち上げ、その行程のあらゆる段階で一貫して顧客に参加してもらうことを目指しています。

「現代の消費者は非常に豊かなデジタルライフを送っている一方で、オフラインの世界でも多くのエクスペリエンスを必要としています」と語るのはコンサルティング会社、ベイン・アンド・カンパニー北京オフィスのパートナーであるJason Ding氏です。彼はニューリテールに関するレポートのアリババグループのAliResearchとの共著者でもあります。「統合型エクスペリエンスを実際に提供する際にブランドが従うべきは消費者の声です」

中国の広州で、アリババは米国自動車メーカーのフォード社と連携し、新しいタイプの自動車のショッピング・エクスペリエンスを公開しました。顧客はアプリに表示される100種類以上の自動車モデルを閲覧し、試乗したい車を1つ選択します。多層式の巨大なベンディングマシンの中から目的の1台が選ばれると、10分もかからずにその車が運び出されてきます。顧客は最長3日間その車を試運転してみてから、購入するかどうかを決断できます。

「私たちは顧客の生活をシンプルにし、究極の試乗エクスペリエンスを提供する方法を模索しています」

DEAN STONELEY
フォード・アジア・パシフィック

bluenove社のDuval氏は、将来的には、ショッピング・エクスペリエンスにとどまらず、社会問題についても同様に、進歩的な企業が顧客と連携して取り組むようになると確信しています。Duval氏は次のように述べています。「ブランドにとって次なる手とは、膨大な情報収集プロセスを通じ民主的な討論を開始して、ブランドの持つ力を上手くミックスして市民の願望と顧客のニーズを融合させることとなるでしょう。今後、最も革新的な製品やサービスは、社会問題も考慮したものとなるでしょう」

For more information on new customer experience in transportation: go.3ds.com/KFj7

in industrial equipmentgo.3ds.com/1oce

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