Consumer goods & retail

民衆に力を : 力を与えられた消費者と向き合うことでブランドを強化

Jacqui Griffiths
19 October 2014

ソーシャル メディアは消費者に対し、公の場で発言力を与えます。そして、双方向の対話が成功の鍵であるということに、 ブランドは気付きはじめました。

2013年、世界人口のほぼ4人に1人(17 億3,000万人)がソーシャル ネットワー クで繋がっています。ニューヨークに本
社を置くデジタル メディア調査会社 eMarketer社の予測によると、その利用者数 は2017年までに25億5,000万人に達する見込 みです。これらの消費者の誰もが、自分の意 見を数秒足らずで世界に向かって叫ぶことが できます。そして、そのような状況に対応する 必要があることに、ブランドは気付きつつあ ります

企業がソーシャル メディア上で声は発する ものの、耳を傾けないためにダメージを受け る例は少なくありません。「デジタル時代の到 来により、筋書き通りに一方通行の情報を発 信することは過去のものとなりました。それ は、今よりもチャネルが少なかった時代の話 です」と語るのは、米国イリノイ州のノー ス ウェスタン大学でKellogg Markets and Customers Initiative(KMCI)の主任を務める Gregory Carpenter博士です。「企業と消費者 は、筋書きのない予定外の議論を幅広いソー シャル メディアで交わすようになりました」

Carpenter博士によれば、そのような議論はリ スキーにも有益にもなり得るといいます。「誰 もが『送信』ボタンを押すだけで、利益を脅か すような危機を生み出す力を持っているとい うことを企業幹部たちは知っています。それと 同時にソシャル メディア活動は、消費者の 生活に対する洞察をもたらす可能性のある 大量のデータを生み出してもいるのです」

成功に向けた戦略

ロンドンを拠点とするソーシャル系セール ス・コンサルティング会社のBuyapowa社が 最近発行したレポートによると、平均的な大 企業は年間1,900万米ドルをソーシャル メ ディアに費やしていますが、そのほとんどは 製品の販促費用であるといいます。 Buyapowa社は、ソーシャル メディアの成熟 度を3段階に分けています。すなわち、オー ディエンスを集める段階、そのコミュニティを 関与させる段階、そして、ソーシャルな販売チャネルを構築する段階です。多くのブラン ドはまだ 初の段階にありますが、 Buyapowa社は、スコットランドのクラフト ビール会社であるBrewDog社を第3段階の 草分けであるとしています。

「誰もが『送信』ボタンを押すだけで、 利益を脅かすような 危機を生み出す力を 持っているということに、 企業幹部たちは気付いています」

GREGORY CARPENTER博士
ノース ウェスタン大学 KELLOGG MARKETS AND CUSTOMERS INITIATIVE 主任

「コンテンツを押し出すだけでは不十分で す」と話すのは、BrewDog社のデジタル マー ケティング担当「砲術長」を務めるSarah Warman氏です。「自社と関わり合うべき理由 を消費者に与える必要があります」

Warman氏によれば、BrewDog社は新製品の 開発およびネーミングと、ラベル、ポスターお よびTシャツの絵柄の選定に消費者を関与さ せてきたといいます。「当社のソーシャル メ ディアのフォロワーは、当社の製品である #MashTagのあらゆる要素を決定しています。 この製品は、世界で最もクラウドソーシング を利用したビールとして、ちょうど2年目を終 えたところです。」と、Warman氏。「当社では また、クラウドファンディングの手法を利用し て700万ポンド(1,17 万米ドル)以上を調達し てきました。現在は4,000人の株主が存在し、 当社のビール、ビジネス、醸造所について はっきりと意見を述べ関与する人ばかりが 揃った素晴らしいコミュニティを形成してい ます」

ブランド価値の構築

デンマークに本部を構えるLEGO Group社は 過去10年で、時代遅れで経営不振の玩具ブ ランドから、2013年には45億米ドルの収益を 上げ、130ヵ国以上で製品を販売するブランドへと変貌を遂げました。そこでは、ソーシャ ル メディアでの消費者との関わりが重要な 役割を果たしました。

LEGO Group社のグローバル コミュニティ コークリエーション責任者を務めるPeter Espersen氏は、ローマで開催されたFestival of Media Global2014(2014年メディア フェ スティバル グローバル)で、次のように述べ ています。「LEGOブランドは、消費者の心の 中に存在する必要があります。そこに存在し なければ、本当の意味で価値があると言える でしょうか」

LEGO社では、FacebookやInstagram、Twitter などのソーシャル ネットワークを通じてファ ンを巻き込みました。独自のソーシャル サイ トとしては、ファン向けのフォーラムが設置さ れたBrickipediaや、ファンが新しいセット製 品の提案や、製品化してほしい案への投票が できるクラウドソーシング サイトのLEGO Ideasがあります。また、ReBrickというサイト では、さまざまなサイトに投稿されたLEGOの 画像や動画を登録できるようにすることで、 ウェブ上のどこでどのようにLEGOが取り上げ られているのかを一目で分かるようにしてい ます。

「ユーザーが作り手になりました。彼らは限 界を押し広げ、LEGOには手の届かない穴を すべて埋めてくれます」と、Espersen氏。「当 社は現在、世界中で200の独立したユー ザー コミュニティと連絡を取り合っていま す。彼らとは、デジタルなイニシアチブやオフ ラインのイニシアチブも通じて連携するよう 努めています」

販売とはサービスなり

英国を拠点とする独立系の苦情調停サービ ス会社のOmbudsman Services社が英国の 消費者を対象に最近実施した調査によると、 製品やサービスに関する苦情を申し立てる顧 客の4分の1以上は、その苦情の内容をソーシャル メディアで共有しているといいます。

「多くの消費者は現在、ブランドのソーシャ ル アカウントを、すぐに見つかる――そして 非常に公的な――顧客サービス チャネルと して利用しています」と話すのは、英国に本社 を置きグローバルに展開する販促リスク マ ネジメント会社のVCG Promorisk社でクライ アント サービス担当ディレクターを務める Ed Gray氏です。「顧客サービス機能に適切な 人材などのリソースを割り当て、即座に対応 できるようにすることが重要です」

消費者との間で双方向の対話を成立させるこ とは容易ではありません。しかし、そのぶん報 いはあります。「消費者中心のアプローチを 導入するのは、時間と手間がかかる作業で す。とはいえ、避けては通れません」と、KMCI のCarpenter博士。「適応できない企業は生 き残りに苦労するでしょう。しかし、この変化 は新たな機会を生み出します。そして、新た な勝者を生むことでしょう」

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