Consumer goods & retail

効率的なデザイン

Sean Dudley
23 November 2016

アーリーアダプターが3Dプリントを称賛するのは、デザインの自由度を高め、コストを削減し、生産期間を短縮できるから。 こうしたメリットはいまや製造現場のみならず、小売店舗にまで及んでいます。

ジョギングで健康を増進しようと思 う人は、スポーツ店でランニング シューズを購入するでしょう。しか し、そのシューズが足に合わなければ、まめ ができたり、履き心地が悪かったりして、走 るのが辛くなり、二度とそのブランドを買わ なくなるかもしれません。

そこでアディダスは、購入者の満足度を向 上のため、3Dプリント技術を取り入れた オーダーメイドのランニングシューズ用 ミッドソールを開発し、一人ひとりの足の 形や凹凸にぴったり合わせたサポート力 やクッション性を実現しようとしています。 「Futurecraft 3D」と名付けられた同社の コンセプトは、アディティブ・マニュファク チャリング(積層造形)関連のソフトウェアや サービスを専門とするマテリアライズ社(ベ ルギー)との共同プロジェクトから生まれま した。今は試作品の段階ですが、いずれは アディダスの店舗に立ち寄り、ランニングマ シンに飛び乗って軽く走れば、足のスキャン データに合わせてミッドソールをカスタム ビルドした3Dプリントのランニングシューズ がオーダーできる、というサービスを目指し ています。

「3Dプリントは当初から、デザインの自由を 高めるテクノロジーとして期待されていまし た。アディダスとの共同プロジェクトで明ら かになったように、従来のような製造工程を 踏まなくても、より美しいもの、機能を最適 化したものをつくることができます。デザイ ンの自由度も最高レベル、つまりパーソナラ イゼーションの域に持っていくことが可能で す」とマテリアライズ社でウェアラブル製品 のコーポレートビジネスデベロップメント マネージャーを務めるAlireza Parandian氏 は語ります。

新たな可能性

3Dプリントの別名でも知られるアディティ ブ・マニュファクチャリングは、固形物を切り 出してパーツをつくる昔ながらの製造方法 とは異なり、コンピュータや3Dモデリングソ フトウェアを駆使し、プラスチックやナイロ ン、エポキシ樹脂、レジン、紙といったさまざ まな素材を一層ずつ積み上げて最終製品を 作り上げます。

「人々をパワーアップし、一人ひとりのニーズや独創性を 最終製品に取り入れることができれば、さらなる付加価値が生まれます。 それこそがアディティブ・マニュファクチャリングの強みなのです」

ALIREZA PARANDIAN氏
マテリアライズ社でウェアラブル製品の コーポレートビジネスデベロップメントマネージャーを務める

このテクノロジーはウェアラブル品や家庭用 品、メガネのフレーム、ジュエリー、かばんや おもちゃ等の消費財業界はもとより、整形外 科などの医療分野でも商品の製造に活用さ れており、3Dプリントが家庭やオフィスに普 及するにつれて用途が急拡大しています。ア ディティブ・マニュファクチャリングの専門家 は、掃除機の部品に不具合があれば、製造 元のウェブサイトにログインしてCADファイ ルをダウンロードし、交換部品を3Dプリント するような時代が来ると予想しています。

裾野が急速に広がる中、スウェーデンのモ ルンデルに本社を置き、航空宇宙業界や整 形外科用インプラントなどの業界で主に利 用される電子ビーム溶解(EBM)装置を専門 とするArcam社のような企業が進化を続け ています。

Arcam社のMagnus René社長兼CEOは次
のようにコメントしています。「当社は試作 品をつくる3Dプリンターのサプライヤーと して創業しましたが、いまでは製造現場用 のプリンターを供給するようになっていま す。顧客が当社のプリンターを実際の製造 に利用しているため、他社もこの手法を生 産に活用できることに気付き始めました。ア ディティブ・マニュファクチャリングが現実的 な製造手法になると気付く人はますます増 えています」

デザインと品質

アーリーアダプターは、アディティブ・マニュ ファクチャリングに製品デザインを大幅に 改良する可能性があることに気付いていま す。顧客やメーカーが必要なものを、必要な ときに、すばやく製造できるため、コストの 削減にもなります。

「アディティブ・マニュファクチャリングは 製造の効率化につながります。工具費や初 期費用が抑えられ、実質的に製造コストを 削減できます。アディティブ・マニュファク チャリングのテクノロジーは日々進化して いるので、ますます効率化が進むでしょう」 (René氏)

「顧客が当社のプリンターを 実際の製造に利用しているため、 他社もこの手法を生産に 活用できることに気付き始めました」

MAGNUS RENÉ社長兼CEO
Arcam社の

アディティブ・マニュファクチャリングを後押 ししているのは、品質、信頼性、トレーサビリ ティという三つの強みだとParandian氏は言
効率的なデザイン 3Dを活用し始める小売業者とデザイナー
アーリーアダプターが3Dプリントを称賛するのは、デザインの自由度を高め、コストを削減し、生産期間を短縮できるから。 こうしたメリットはいまや製造現場のみならず、小売店舗にまで及んでいます。 著者: Sean Dudleyいます。これらは、医療や航空宇宙といった 規制の厳しい業界では特に重要です。企業 各社はアディティブ・マニュファクチャリング の柔軟性を活かして、各業界の規制に最初 から対応しなければなりません。

「当社は医療分野に特化したサージカルガ イド専用の製品ラインを備えていますが、こ れは医療業界における所定の基準を満たす 必要があります。航空宇宙業界向けにも同じ ようなモデルがあります。ウェアラブル業界 では、認証を受けたメガネ用製品ラインを 備えています。ウェアラブル業界は美観に関 する要求が厳しく、高レベルな品質や制御 性、一貫性が求められます」(Parandian氏)

利用者へパワーを

米国ミネソタ州に本社を置く3Dプリンター と生産システムのメーカー、ストラタシス社 でヨーロッパ・中東・アフリカ(EMEA)地区 のトップを務めるAndy Middleton氏は「製 品を大量に生産する消費財メーカーの間で 3Dプリントが広く普及するためのカギは、ア ディティブ・マニュファクチャリングが従来の 手法より効率的かどうかという点に尽きる」 と確信しています。

「試作品のラボから製造現場へと進化してい る3Dプリントには、少量生産や部品の受注 生産によってワークフローを改善する上で 大きなメリットがあります」とMiddleton氏は述べています。「3Dプリントがプラス効果 をもたらし、効率化やコスト削減に役立つア ディティブ・マニュファクチャリングを採用す る企業が増えていけば、製造業そのものも 進化していくはずです」

小売店舗でも製造現場でも、アディティブ・ マニュファクチャリングによって、デザイナー の(そして、アディダスの例のように消費者 の)創造力を高めることができる――そんな 未来をParandian氏は信じています。

「人々をパワーアップし、一人ひとりのニーズ や独創性を最終製品に取り入れることがで きれば、さらなる付加価値が生まれます」と 彼は言います。「それこそがアディティブ・マ ニュファクチャリングの強みなのです」

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