Consumer packaged goods & retail

買い物客の本音を 見抜く力とイノベーション : デジタル テクノロジーを活用して消費者と 小売業者に付加価値を提供 - Kimberly-Clark 社

Lisa Rivard
19 February 2014

Kim Greenwood 氏は、米国に本社を置く、パーソナル・ ケア製品を中心としたパッケージ製品の世界的メーカー Kimberly-Clark Corporation 社で、仮想現実部門のシニア マネージャーを務めています。Compass誌は、Kimberly-Clark 社が小売パートナーと消費者のエクスペリエンスを向上させるために、シミュレーションや仮想現実などのデジタル ソリューションをどのように役立てているかについて、Greenwood 氏にお話を伺いました。

COMPASS誌:  Kimberly-Clark社のInnovation Design Studioはどのようなことを目的としていますか。

KIM GREENWOOD氏(以下KG):  Innovation Design Studioは、弊社製品の小売業者が、候補となるさまざまなバージョンの「将来の店舗」に入り込み、体感することができる最先端の施設です。このスタジオは、製品のイノベーションを紹介したり、仮想店舗と物理店舗のソリューションを組み合わせて今後の製品リリースに向けた準備をしたりする目的で利用しています。また、顧客企業の施設など、スタジオ以外の場所にこれらのサービスを持ち込む「出張型」のイノベーションイベントも開催しています。

この機能を使用するのに大きな施設は必要ありません。たとえば、スターバックスで取引先とミーティングするときに仮想技術を利用できない理由はないのです。もう一つ注目すべきなのは、この技術が急速に、テクノロジーの専門家だけでなく、ビジネス分野の担当者も利用できるものになりつつあるという点です。当社は、業務や営業の担当者、デザイナーなど、組織内でさまざまな役割を果たす人たちが仮想現実(VR)機能を利用できるようにすることを、ビジョンとして掲げています。仮想現実技術は、タッチアプリケーションほど気軽に利用できませんが、その距離は縮まっています。5年後には、モバイルデバイスでも簡単にVRを利用できるでしょう。

ビジネス面では、この先進的な構想からどのような付加価値がもたらされますか。

KG: この構想は、弊社だけでなく小売パートナーにも貢献します。物理的な製作作業を行う必要もなく、コンセプトの設計とテストを行えるメリットを考えてみてください。現実世界の制約にしばられないので、数多くのアイデアやコンセプトをテストして最適なソリューションを確実に手にできます。同時に、時間とコストの節約にもなります。

各商品分野の分析担当者やショッパー心理の専門家は、店舗の通路にいる買い物客の注意を惹き付ける最善の方法を検討する過程を通して、さまざまな決定を下す必要があります。まず、何が起きるかを考え、実際に起きていることを観察してから、それを再現するものを物理的に製作します。仮想機能を利用して、ソリューションがどのように見え、どのように機能するかを可視化すれば、物理的なモデルを作る場合と比べて、プランニングプロセスのごく初期に決定した事柄を実際にテストできるのです。これでプロセスが合理化されて、効率の向上を図れるほか、成功を収める見込みも高くなります。

KIM GREENWOOD 氏、KIMBERLY-CLARK 社 仮想現実部門シニア マネージャー

仮想現実を利用したおかげで、誤った方向に行きすぎてしまう事態を回避できた例を教えていただけますか。

KG: 数年前に「U by Kotex」製品を発売した際には、プロセスの非常に早い段階でブランドチームやパッケージデザインチームと連携し、マーチャンダイジングと店頭看板に関するさまざまな案を考えました。次にそれらの案をVRで形にして、VR世界の中、実際の店舗、疑似店舗の各シナリオでテストすることを決める際の参考にしました。その結果、非常に効果的なアプローチにたどり着いたのです。あの黒いパッケージが、通路を行く買い物客の目に止まることは明らかです。あのパッケージからは、店舗のパーソナル・ケア製品売場ではまったく見たことのない何かが伝わってきます。若々しくさわやかなパッケージとして、見る者の注意を惹き付けます。

マーチャンダイジングに関するアイデアとコンセプトを考案した後は、VRを使用して、それらを個々の店舗構成に当てはめ、イノベーションの内容と、それが小売業者の実店舗でどのように機能すると思われるかを説明しました。実施してきた研究と、社内に蓄積されたショッパーインサイトを反映させたVR技術は強力な援軍で、店舗で起こると考えられることを販売の観点から目に見えるようにできます。当社と小売パートナーが、買い物客の購買行動にどのような影響があるかを理解しやすくなるのです。

「5年後には、モバイル デバイスでも簡単に VR を利用できるでしょう。」

KIM GREENWOOD 氏、KIMBERLY-CLARK 社
仮想現実部門シニア マネージャー

VRはその他の用途にも用いられていますか。

KG: VRは新製品の投入を支援するだけではありません。小さなプロジェクトも実施しています。棚に陳列されるパッケージに新しいメッセージやタブを付けた場合に、買い物客がそれに気付くかどうかを調べるためにVRを使用しています。パッケージを単独で見れば、すぐにメッセージやタブに注意が向かいます。ところが、棚に置かれたパッケージを見たときには、数百もの他の製品に囲まれてメッセージがまったく目立たなくなる可能性があります。

伝えたい情報は、お客様の目に実際に届いているか。情報が飛び出し感を表現し、買い物客が探しているものを見つけて一日の用事をどんどん片づけられるようにするには、どうしたらよいでしょうか。3人の子供の母親が、手早く買い物を済ませて、20分以内に子どもをサッカーの練習に連れて行かなければならないとします。この母親が、必要としているものを簡単に見つけて買い物カゴに入れる助けとなるために、私たちメーカーは何をすべきでしょうか。小売店の立場から何としても避けたいのは、彼女が必要なものを見過ごし、その場から立ち去らせてしまうことです。

Kimberly-Clark社の小売パートナーとの協力関係を強化し、拡大するために、何をされていますか。

KG: 私たちは、小売店との関係強化のために常に尽力しています。目標としているのは、当社の登録商標でもある「Indispensable Partner(かけがえのないパートナー)」になることです。これは、自社のブランドと製品について理解し、その成長を推進するだけでなく、当社製品が販売されている市場カテゴリーの小売業者に対しても同じことを行うパートナーを意味します。弊社はこの目標を、行動を起こすことができる新たなインサイト、業界をリードするイノベーション、そしてマーチャンダイジングとショッパーを主題とした、世界に通用するプログラムを通して追求しています。

私たちは、小売業者がプロジェクトのパートナーとなるメーカーを探しているときや、業界動向の詳しい情報を必要としているときに、真っ先に連絡をもらう存在になることを目指しています。小売業者が扱う特定の商品カテゴリで、どのような成長機会が見込まれるかを決めるような新しいイノベーションを推進することで、確実にそうなれるよう努力しています。

これは、製品のイノベーションにとどまらない、スケールが大きなイノベーション(Big Iinnovation)を指しています。

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