意識の高い消費

健康や環境に積極的関心を抱いている消費者を惹き付けるために、パッケージ製品のメーカーはますます健康と持続可能性を強調

William J. Holstein
8 June 2017

若い消費者の情熱に触発されて、あらゆる年齢層の買い手が、食べ物の成分がより健康的で、パーソナルケア製品や家庭用品がより環境に優しいことを求めるようになってきています。パッケージ製品のメーカーは、地球環境を重視する競合他社からの圧力の高まりを受けて、古いブランドの配合を変更したり、トレンドに沿った新しいブランドを投入したりして、こうしたニーズへの対応を進めています。

さてここで、早押しクイズです。次の商品を作っている会社の名前を答えてください。果物と野菜のジュース商品「Naked」、アーモンドミルクで作られたスムージー、一杯ごとに生きている「体に良い」細菌を10億個届けるプロバイオティクスのオレンジジュース、心臓に良いオート麦を加えた乳飲料、ただ水源から採取しただけではないプレミアム価格のボトル入り飲料水…。ちなみに最後に挙げたのは、「おいしさのために電解質でphが調整された」LIFEWATERという飲料水商品です。

これらの商品は、トレンディな自然食品を扱うスタートアップ企業が出しているわけではありません。これらすべての商品を手掛けているのは、ソフトドリンクやスナックで知られる大手メーカー、ペプシコです。

それではなぜペプシコが健康に夢中になっているのでしょうか。多くのパッケージ製品(CPG)メーカーと同様に、ペプシコは、健康意識が高い消費者に向けて特に企画された新しいブランドを発売するのと同時に、既成のブランドにより健康的な選択肢を求める消費者の要求にも応えようとしています。

ペプシコのフード関連商品のポートフォリオの本部は、米国ではシカゴに置かれています。そこでNutrition Insights担当バイスプレジデントを務めるJoseph Gottschalk氏は次のように述べています。「これは押し寄せ続ける高波のように思えます。このトレンドはすべての世代が原動力になっていると判断していますが、特に若い世代が牽引役で、彼らは食べ物の成分に新しい異なるメリットを求めています」

手作りか大量生産か

CPG企業はこれを「意識の高い消費者」のトレンドと呼んでおり、このトレンドの流行語には「ビーガン」、「自然素材のみ」、「ホルモン投与なし」、「グルテンフリー」などがあります。

消費者はまた、少量生産メーカーの「手作り」製品に群がり、有機素材のみが含まれるプレミアムな化粧品、香水、シェービングクリームなどを、先を争って購入しています。たとえば米国の小さなベンチャー企業、Caldrea Company社は、水分含量を含めて成分の少なくとも97%が自然由来である「Mrs. Meyer’s Clean Day」という洗濯洗剤で評判を高めています。同様に、リサイクル原料から作られたティッシュペーパー、トイレットペーパーや、コーヒーを育てる途上国の農民にリビングウェイジ(人間らしい生活に見合う対価)を支払われたことを意味する「フェアトレード」のコーヒーは飛ぶように売れています。

40%
自分たちが使う洗濯製品に環境に優しいというメリットを求めている世界の消費者の割合

専門家は、意識の高い消費者が増加した鍵になったのは、いつどこでもつながっている今日の世界における、製品情報の流れ方だと指摘しています。消費者はまだ、パッケージのラベルを読み、食品にGMO(遺伝子組み換え作物)が含まれていないか、化粧品に有害な化学物質が含まれていないかを確かめたいのです。しかしパッケージに記載されている情報だけではもはや十分ではないため、違いが分る消費者は、多くの場合、購入を決める前に売場でスマートフォンを使用してQRコードにアクセスし、より多くの製品情報があるウェブサイトを参照します。

Gottschalk氏は次のように述べています。「人がインターネットで情報を集めて購入を決めるというやり方によって、こうした購買行動が起き得るようになってきています。その結果、とても小さな新しい世界とほかにないメリットが存在できるようになります。これは少しベルトコンベアの流れに似ていて、ニッチな方法や独自の小さな販売チャンネルで出現した物が、その後トレンドとなり、主流になっていくのです」

成功への三つの鍵

ロンドンに拠点を置くマーケット情報コンサルティング会社のMintel社は、同社のレポート2017 Global Food & Drink Trendsにおいて、意識の高い消費の高まりを支えるの三つの領域を明らかにしています。

植物に力を: Mintel社の 『Global New Products Database』 の記録によれば、2010年から2016年の間に世界中で発売された食品と飲料の中で、「ビーガン」を称するものは257%も増加しました。食品会社はますます、果物や野菜を含む飲み物にスポットライトを当てています。たとえば、昔からミネラルウォーターで知られているエビアンは2016年に、イギリス、フランス、スイスで果物と植物の味がする「フレーバーウォーター」のラインナップを発売しました。

無駄にしない: 世界中の消費者は、食べ物を駄目にしたりごみにしたりする問題や、パッケージングに関する懸念にますます敏感になっています。たとえばMintel社の調査によれば、中国で、家で調理をする20歳から49歳の成人の53%が、無駄を避けるために、もっと多くのソースや調味料が、もっと小さなパッケージで売られれば良いのにと考えていました。

万人にとっての健康:高所得のグループに健康食品を購入する余裕があるのは明らかですが、低所得セグメントでも、より健康な食品がより低価格で求められている。とMintel社は言及しています。たとえばデンマークの小売業Fakta社は、プライベートブランドの1リットル入り有機牛乳を、バーゲン価格の1.53ユーロで販売しています。

スタートアップ企業がゲームを変える

ペプシコを始めとする米国ベースのCPG企業と同じように、ヨーロッパの有名企業もこうしたトレンドに対応しつつあります。そして、これらの企業は、自社で開発していない物は買っています。

たとえば2016年後半に、オランダと英国に本社を置く消費財企業ユニリーバは、米国に拠点を置くSeventh Generation社を買収しました。Seventh Generation社が指針としている哲学は、紙製品から洗剤に至るまで、染料や人口蛍光剤を含まない植物ベースと鉱物ベースの製品だけを販売することで、7世代先までの環境保全を目標として掲げています。

Seventh Generation社は、染料や人口蛍光剤を含まない植物ベースと鉱物ベースの製品だけを販売していて、次の7世代にわたる環境保全を目標として掲げています。(Image © Seventh Generation)

消費者を惹き付けて競合企業に挑戦するために計画された動きの中で、Seventh Generation社は「ComeClean」という陳情活動のキャンペーンを行っています。これは、すべての家庭用品企業が自社製品に含まれる全成分を表示するよう、規制当局に圧力をかける活動です。Seventh Generation社CEOのJohn Replogle氏は、意識の高い消費がどのように広まってきたかに関して、論理的な推移が見られると述べています。「食品・飲料業界から始まって、消費者は『自然の』商品を探し求め、自分たちが何を食べるかに最も関心を持っていました。それから間もなく、消費者は体につけるものをより意識するようになって、パーソナルケア業界での変化が続きました。そして最後に、消費者は身の回りにある物をより意識するようになってきて、環境に優しい(家事)製品の需要が高まる状況に至っています」

「自分自身の健康は、地球の健康と切り離せないと考える人がますます増えています」

Joseph Gottschalk氏
ペプシコNutrition Insights担当バイスプレジデント

彼は2016年にニールセンが実施した、世界の消費者の40%が、自分たちが使う洗濯製品に環境への優しさを求めていることを示す調査を示しながら消費者向け製品の業界全体がSeventh Generation社の先例に倣うだろうと主張しています。

ペプシコは、一杯ごとに生きている「体に良い」細菌を10億個届ける「トロピカーナ」ジュースのラインナップを含む新製品を提供し、より健康的な選択肢を求める消費者に応えています。(Image © PepsiCo)

「使命を重視する企業として、商業の変容をもたらし、7世代先までの健康を育むことが常に私たちの義務であり続けています。私たちは商取引において誠実さ、責任、徹底的な透明性を実現するべく業務に打ち込んでいて、消費財業界は総じて先例に従うだろうと楽観しています」(Replogle氏)。

25%
2010年から2016年の間に世界中で発売された食品と飲料の中で「ビーガン」を称するものの増加率

個人と地球が手に手を取り合って進む

ペプシコのGottschalk氏は、世界で最も豊かな国々では特に、消費者が選択する経済的余裕があり、意識の高い消費というトレンドが広がり続けるという見解に同意しています。

Gottschalk氏は、「自分自身の健康は、地球の健康と切り離せないと考える人がますます増えています」と述べ、消費者の感じ方についての最近の調査を引き合いに出しています。「消費者は、地球と自分たち自身は一つの生態系であると考え始めています」

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