Consumer packaged goods & retail

責任ある パッケージング

Rebecca Gibson
28 April 2015

日用品メーカーのプラスチック包装 が環境に与える影響をライフサイク ル全体を通して減らすためには、新し い生物材料(バイオマテリアル)やス マートな製造工程、ライフサイクル評 価ツールが重要な役割を果たします。

シュリンクラップや各種ボトル、ポ リエチレン製のレジ袋など、日用品・消費財業界で使われるプラスチック包装は、毎年世界中で発生するゴミのかなりの割合を占めています。たとえば、米国カリフォルニア州に拠点を置いてプラスチックによる環境汚染を減らす活動をしている団体、5 Gyresが公表した数字では、米国で生産されたプラスチックのうち回収されたのはわずか5%にすぎず、50%は埋立て処理され、残りは海洋に流出しています。実際のところ、『陸地から海へ流出するプラスチックゴミ(Plastic Waste Inputs From Land In to The Ocean)』と題する研究報告が2015 年2月に科学雑誌『サイエンス』に発表され ましたが、これによると、毎年およそ800万 トンのプラスチックゴミが世界中の海に流 出しています。

こうした状況を踏まえ、多くの企業は環境 に対してより大きな責任を持ちながら自社 製品の調達、生産、廃棄を行うための新し い材料や製造方法、これまでとは異なる使 用後の選択肢を探しています。

北米で事業を営んでいる食品サービス会社 の業界団体で、米国バージニア州に拠点を 置くFoodservice Packaging Institute(FPI) の会長、Lynn Dyer氏は次のように説明しま す。「食品サービス企業が梱包材(パッケー ジング)を設計する際には、主に二つの点を 重 します。一つは何を原料にするのかと いうこと、そしてもう一つは使用後はどう 処理されるのかという点です」

Dyer氏はさらに、「各メーカーは新しいテ クノロジーを利用し、リサイクル材料を 使って梱包材を開発したり、従来から用い られている材料を新しい方法で用いたりし て環境面での自社への信頼度を高めていま す」と語ります。「たとえば、リサイクル材 料を使って50年間使える発泡スチロール製 のコップを生産できる、などということは、 数年前まではありえませんでした。断熱性 のあるPETやポリプロピレンで作ったコッ プを業界で初めて採用した企業もあります し、紙コップメーカーはプラスチックの内 張りの代わりに使える別のコーティング材 料を研究しています」

また、米国のカリフォルニア州立ポリテク ニック大学の専門課程で学ぶAlex Henige 氏は、生分解性のあるコーヒーカップを大 量生産するための資金を調達するために 「Reduce Reuse Grow」プロジェクトを立ち 上げました。このコーヒーカップには植物 の種が埋め込まれており、使用後は水に浸 して土に埋めれば分解されます。Henige氏 によると、すでに地元カリフォルニア産の 種を使用して問題なく試験を完了してお り、このコーヒーカップは180日以内に完 全に生物分解されます。

バイオマテリアル

植物油脂やコーンスターチ、農業副産物な どの再生可能なバイオマス資源に由来する バイオプラスチックが頻繁に用いられるよ うになっています。コカ・コーラ社やネスレ 社、ペプシ社、ハインツ社などの食品・飲料 業界の多国籍企業、そしてテトラパック社 な の梱包材メーカーはすでにバイオプラ スチック製品の品揃えを強化しています。 ベルギーに拠点を置き、環境に優しい洗剤 を製造しているエコベール社は、サトウキ ビに由来するプラスチック(75%)と再生 プラスチック(25%)を使った植物性プラス チックの梱包材を開発しました。

ベルギーのブリュッセルに拠点を置く欧州 の業界団体、Plastics Europeの予測では、世 界中で一年間に生産される3億トンのさま ざまなプラスチック素材のうち、バイオマ テリアルが使われているのは現在1%未満 です。しかし、ドイツのベルリンに拠点を 置く団体、European Bioplasticsが行った調 査では、2013年には160万トンだったバイ オプラスチック生産能力は2018年にはお よそ670万トンになり、400%の伸びを示す と予測されています。バイオプラスチック のほぼ75%はアジアで生産され、現在、研 究・開発の先頭を走る欧州は全体の8%にと どまります。

世界中で梱包材製品を提供しているアム コール社でグローバル・サステナビリティ 部門を統括するCharlie Schwarze氏は次の ように語ります。「バイオプラスチックは この10年間で大幅に進歩しました。今で は、たとえば植物由来のPETは30%がエタ ノール系の素材を使って作れますが、こう いった材料が市場で簡単に手に入ります。 私どもはドイツに拠点を置くパートナー 企業、KHS社と連携してPlasmaxという製 品を商品化しています。これは酸化ケイ素 を用いたコーティング剤で、ボトルの内面 に使用して内容物の酸化を防ぎます。この コーティング剤はPETリサイクル工程で除 去できるため、リサイクルが可能な製品を 開発できるようになるでしょう」

米国バージニア州で板紙やプラスチックの 梱包材を製造しているミードウェストベー コ社の戦略的顧客パートナーシップ担当バ イスプレジデント、John Perkins氏はバイ オマテリアルを用いることで企業は自社の ブランド戦略も強化できるようになると語 ります。

800万トン

毎年およそ800万トンの プラスチックゴミが 世界中の海に流出しています。

「天然由来の環境に優しい製品を提供する 企業は梱包材も同じように環境に配慮し て調達・製造する責任がある、と消費者は 考えます。私どもはお客様の再生レジンや バイオプラスチック、バイオポリマー、堆 肥化が可能な材料、リサイクル可能な板紙 などの使用を促進し、お客様のカーボン・ フットプリント目標の達成を支援します。 たとえばフランスのヨーグルトメーカーの ダノン社には、同社が販売する製品の繊維 素材に使う再生品の割合を増やせるように 支援しています。また、コカ・コーラ社に対 しても板紙を使用した梱包材の割合を増や せるように支援しています」(Perkins氏)

従来の方法を根本的に見直す

日用品・消費財メーカーに製品を提供して いる梱包材企業はまた、新しい製造技術を 用いてパッケージのデザインを最適化し、 バージン原料(未使用の原料。再生原料の対 語)の使用量を削減しています。

FPIのDyer氏は次のように語ります。「メン バー企業の多くが、軽量包装材を使用する 技術を用いて梱包材の原材料使用量を減ら しています。たとえばデザインを変えたり、 プラスチック樹脂の代わりに炭酸カルシウ ムやタルクなどの再生可能な材料を使用し たりしています。ただし、軽量包装材を使用 することによって製品の機能性が損なわれ てはいけません。食品サービス会社にとっ ては機能性が極めて重要なのです」

たとえば、ミードウェストベーコ社が軽量 包装材を使用する技術を用いて、2011年に ウォルマート社向けに開発した医薬品用 パック、Shellpakはプラスチック使用量を 18%削減しました。Perkins氏は、「私どもが 最も重視したのは、プラスチック使用量を 確実に削減しながらも、高齢の患者でも簡 単に開けることができ、誤開封を防げる子 供にも安全な製品を開発することでした」 と語ります。同氏によると、ミードウェスト ベーコ社はその後、プラスチックではなく 板紙を使用してShellpakをリニューアルし たということです。「また、安全な梱包材を 求めるお客様に以前お使いいただいていた塩化ビニルクラムシェルに替わる100%再 生可能な板紙、Natralockという製品を開発 した時には、商品の盗難防止効果を確保す る必要がありました」

ミードウェストベーコ社と同じように、ア ムコール社もこの技術を使い、2012年以降に製造したボトルで12,000トン以上のプラ スチック樹脂を削減しました。アムコール社のSchwarze氏は、「2013年に は米国で人気のある飲み物、Powerblock III ジュース用のボトルの底と側面のデザイ ンおよび、製造工程を変更して、使うプラ スチック樹脂(レジン)を8グラム以上削減 しました」と語ります。これにより同社は、 2012年以降2,000トンのレジンを削減したということです。アムコール社はまた、空気ではなく実際の  製品、すなわち液体の飲料を加圧してプラ スチックのボトルを同時成形・充填するシ ステム、LiquiFormも共同開発しました。

Schwarze氏は次のように説明します。「LiquiFormは複数の生産段階を統合し、ブロー成形工程や充填工程を別々に行うこと で、消費エネルギーを大幅に削減します。予 備試験では、生産や輸送全体に要するエネ ルギーを、LiquiFormによって20~30%削減 できることがわかっています。最初の実用 モデルは、2015年後半から2016年前半にか けて現場に投入したいと考えています」

Natralockは、安全な梱包材を求める顧客が以前に使っていたPVC(ポリ塩化ビニル)クラムシェルに替わる100%再生可能な板紙。(Image: © MeadWestvaco)

製品のライフサイクルを 伸ばす/header>今日では、梱包材による環境への影響を大 幅に減らすためには原材料をどのように調 達・輸送して製造、その後どのように処分さ れるべきか多くの企業は認識しています。 最初に使用した後も、何度でも再利用や回 収が可能な材料を使うようにするために、 C2C(cradle-to-cradle)と呼ばれる完全循環 型の手法を導入している企業もあります。 自然界のプロセスを模倣して設計される C2Cは、無駄をなくし、環境に多くのメリッ トをもたらす製品を開発することです。ミードウェストベーコ社のPerkins氏は次の ように説明します。「C2Cのライフサイクル 手法を導入すると、単にリサイクルが容易な 材料から梱包材を生産するよりも多くのメ リットがあります。私どもは、環境的に持続 可能な方法で育成・収穫・生産・リサイクルさ れた認定繊維のみを板紙に使うようにして います。また、自社の板紙製品を何度もリサ イクルできるようにコーティング剤の使用 も最小限に抑え、植林も行なっています。」ミードウェストベーコ社はカールスバー グ・サーキュラー・コミュニティにも参加し ています。これはデンマークのビールメー カー、カールスバーググループが立ち上げ たC2Cプロジェクトで、目標とするのは、当 初の品質を維持しながらもリサイクルが可 能で際限なく再使用できる梱包材料の開発 を促進することです。アムコール社は、自社開発したAdvanced Sustainability Stewardship Evaluation Tool(ASSET)も使用しています。このツールを使 うと、パッケージング・ソリューションを商 品化する前に、容器のさまざまな種類やデ ザインについてライフサイクル全体の評価 を迅速に実行し、環境への影響を正確に計 算することができます。

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