Daniel patterson

手ごろな価格の健康的な食べ物で、 経済的に恵まれていないコミュニティに変化を

Rebecca Lambert
21 November 2016

アメリカで有名なシェフ二人が、ファーストフードをまったく新しいものに作り変えています。カリフォルニア州の困窮したいくつかの地区で、6ドル以下の「バーグ」(バーガー類)や「フォールディー」(メキシコ料理風のサンドイッチに似たもの)を提供しているのは、ミシュランの星を獲得したサンフランシスコのレストランCoiのシェフDaniel Patterson氏と、ストリートフードの王様と呼ばれるKogi社の創立者Roy Choi氏です。彼らは現在、ワッツとオークランドの二か所にあるLocoLというレストランや屋台式フードトラックを運営する共同事業により、健康的な外食の選択肢が限られているコミュニティに、手ごろな価格で、おいしくて健康的な食べ物を提供することを目指しています。COMPASS誌では、LocoLの使命と将来の目標について、Patterson氏により詳しいお話を伺いました。

COMPASS: 飲食業界に関わるようになったきっかけは何ですか?

DANIEL PATTERSON氏(以後DP): お金を稼ぐために14歳で皿洗いとして働き始めました。ですから、キャリアを築こうと考えてこの業界に入ったわけではありません。しかし、キッチンで仕事をし続けました。その環境が大好きで、仕事も得意でした。20歳になる頃、これが生涯続けていきたい仕事であるとはっきり認識しました。したことがある仕事は、この他にはありません。そして、身を粉にして働いています。私は負けず嫌いで、現状に満足することなく、いつも、より良くしたいと考えています。そして、ある種の執拗さ、言い換えれば、ストイックな労働観を持ち自己満足を避けることが、人を成功に導くのだと思っています。

何がきっかけでLocoLのアイデアが生まれた のですか?

DP: 5年前にサンフランシスコ市テンダー ロイン地区の地域サービス(Larkin Street Youth Services)でボランティアをしました。こ の組織は、ホームレスになってしまった子供 や若者を受け入れて相談に乗り、住居や職業 訓練を提供しています。私は、彼らが料理の仕方を知らないことに気付き、「それなら、レ ストランは月曜日には閉まっているので、10 人から15人の子を店に連れて行き、初歩の料 理教室をしよう」と提案しました。

彼らには、よ い食べ物の味の記憶がないのは明らかでし た。だから、そうした食べ物を欲していなかっ たのです。いったん味わいさえすれば、ひらめ きが生まれるように味覚が目覚めたのです。 私はできるだけ多くの子に到達する方法を見 つけたいと考えていました。彼らのほとんどは ファーストフードを食べているので、本物の 食べ物を出すファーストフード・レストランが あればいいのではと考えたのですが、それを 実現する方法が分かりませんでした。しかし その後、コペンハーゲンで開催された2013年 のMADフードフェスティバルでRoyの講演を 聞いたのです。飢えと責任についての彼の話 は素晴らしく、私のアイデアを形にできるのは 彼だ、と思いました。 数ヵ月後、彼に電話したところ、「いいね、やろ うじゃないか」と言ってもらえて、そこから動き 始めました。

LocoLのモットーについて教えてください。

DP: 人々に食事を提供し、そうすることで、愛 や思いやり、優しさ、深い同情を伝えたいので す。人が生きていることは、その人がどのよう に人を引き合わせるかという点で、各人固有 のものです。私は米国の歴史は、住民の一部 を差別し、時には意図的に敵対敵してきた歴 史であると思います。その結果、一部の地区で は周りと同じ生活を送れなくなっています。 食は、他のどんな手段でもできない変化を起 こすことができます。おいしいものを作ってい る人に腹を立てる人はいないでしょう!私たち のビジネスが目指すところは非常に政治的で すが、それに関わる人はそうではないのです。

ワッツ店のオープン記念イベントで共同創設者のRoy Choi氏およびDaniel Patterson氏と記念撮影をする ロサンゼルス市長エリック・ガルセッティ氏(Image: © Audrey Ma)

あなたとChoi氏が良いチームであるのはなぜ ですか?

DP: Royと私が得意なことの一つは、存在して いない何かを思い浮かべて夢想し、それを現 実のものにすることだと思います。ロサンゼ ルス全体にわたる地域のコミュニティで人々が料理をする方法を変え、存在しなかったビ ジネスモデルを取り入れました。そして、近 隣地区全体にわたって浸透し、役立つように なった多くのことを行いました。まったく同じ 倫理的目的を持つパートナーを見つけられて とてもラッキーだと思います。

地域のコミュニティにこのような違いをもたら していることについては、どのようにお感じで すか?

DP: 最初のレストランをオープンしたのは ワッツ地区(貧困と人種問題に関わる社会不 安の代名詞的な地区の名前)でした。その界 隈に住む人たちの活力は、私が今まで見たこ とがないほど素晴らしいもので、私は人生観 が変わりました。レストランを通して、知らな かった事柄を教え合いましたが、私たちが出 会ったのは、互いの立場からは中立な、食べ 物を介してでした。それがLocoLの最も説得 力のある側面です。グループに参加した人の 生い立ちは様々ですが、食事を挟んで一緒の 席に着くわけです。料理は、気前のよさと与え ることの表れである行為です。LocoLの才能 ある従業員には、一緒にプログラムを始めた コミュニティの出身者が多数います。会社の 目標の一つは、コミュニティの中から雇用し、 昇進させることです。

どのようにメニューを企画したか教えてくださ い。何がヒントになりましたか?

DP: 私たちはファーストフードを作ろうと考え ていました。なので、住人が慣れてるもの、つ まりバーガー類、フライドチキン、サンドイッ チから始めました。しかし、これらの食べ物を より健康的なものにして、環境への影響が小 さくなる方法を見つけたかったのです。それ で、「バーグ」の30%は穀物と豆腐にしました。 メニューのおよそ50%は野菜だけでできてい ます。それを宣伝してはおらず、ただそのよう になったのです。 人々は世界中で、切り落とし肉や多量の野菜 と穀物を使うことで、費用をかけずともしっか りとした食事をしています。私たちは、何千年 も続いた伝統に目を向けています。つまり、長 い間調理に使われてきた調味料、香辛料、穀 類、デンプン食品、野菜に関する領域です。こ れはまさに、米国ではあまりうまく行われてい ないことです。 Royと私は密接に連携してメニューに取り組み ました。彼は、人は何が好きで、何が嫌いか、鋭 いセンスを持っています。彼がときおり「これ を試したらどうだい」と言い、私がキッチンへ 行ってそれを作ります。それから試食し、検討 します。食べ物がなお進化の最中であるとい う意味では、本格的なレストランのようです。

出店したコミュニティにはすでに大きなインパ クトを及ぼしています。どのような遺産を残し たいと考えていますか?

DP:どのようにしたら好ましい変化が起こせ るか、どのようにしたら人々に幸せをもたら し、彼らの人生を少しでも良いもの出来るか ということだけで、それさえできれば十分だと 考えています。LocoLは、あちこちへと広がっ た、すばらしく喜びにあふれた非常に大きな 取り組みです。長い間続くことを願っています が、どんな将来が待っているかは分かりませ ん。しかし、5年のうちには、LocoLに来店した 人がRoyや私のことを知らず、LocoLがそれ自 体独立したものとして存在していればと思い ます。それこそが成功でしょう。こうしたコミュ ニティは自分のために声を上げることができ ますから、私たちはそれに耳を傾けていく必 要があります。◆

Peek inside LocoL’s Watts location:
http://3ds.one/LocoL

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