半世紀前、900年の歴史のあるデンマークの小さな自治都市カロンボーで、地域の有力者たちは、ティス湖から13キロメートルのパイプラインを建設して地元の石油精製所に未処理冷却水を供給することに合意しました。このプロジェクトは、別のプロジェクトにつながりました。燃焼して大気に放出するはずだった石油精製所の余剰ガスを近隣の工場に送って、石膏ボードの乾燥に利用することになったのです。
同様のプロジェクトがこれに続き、エンジニア、工場経営者、地域の有力者は、知らず知らずのうちに産業共生と呼ばれる新しい構想を作り上げていました。産業、農業、地域社会、市場を調整して、リサイクルと、廃棄物を含む資源の共用を促進し、効率性、生産性、生態学的持続性を高める構想です。
この構想が広がって、新しい種類の協調的な取り組みが始まりました。今日では一般的にエコ・インダストリアル・パーク(EIP)と呼ばれるもので、様々な事業を運営する様々な企業が所有物を共有して互いに協力し合います。この協力は政府や地域社会にも伸展しています。
その結果、企業はより効率的な操業が可能になり、資源はより有効に管理されて、地域社会は経済的な恩恵を受けながら、きれいな空気と安全な水を維持できるようになりました。ある企業の廃棄物は、別の企業の原材料になります。循環する経済の中で資源が配分されて、放射熱、水、廃棄物、蒸気、ガス、電気、道路、鉄道、はしけ、パイプライン、建物、施設管理、緊急対応、ロジスティクス、セキュリティ、規制順守、都市計画、コミュニティ・エンゲージメントが協調的に管理されます。
急速な普及
EIPは急増しています。世界銀行グループ、国際連合工業開発機関(UNIDO)、ドイツ国際協力公社(GIZ)の報告書「An International Framework for Eco-Industrial Parks(エコ・インダストリアル・パークに関する国際的な枠組み)」によると、2000年には50未満だったEIPが、2018年には250以上確認されており、それぞれユニークです。
エルサルバドルのミラマーEIPでは、11社の約500人の従業員が、電子機器の組み立てとプラスティック成形に従事しています。中国北東部の天津経済開発区では、10,000社の約50万人の従業員が、専用の港湾、学校、サッカースタジアム、居住地を備えた1つの区域内で働いています。
「環境保護、気候変動、資源効率は、エコ・インダストリアル・パーク(EIP)の必要性をさらに強くしています」
DAVID AITKEN氏
Carbon Trust社ポリシー & イノベーション担当アソシエイトディレクター
EIPの中には、数十年前に設立されて、近代的な工程に合わせてグリーン・テクノロジーを導入したものも、最近設立されたものもあります。また、地域レベルで開発されたEIPも、政府の手厚い支援を受けているEIPもあります。これらすべてに共通しているのは、経済と環境のメリットを共有するため、協調的でグローバルな事業に積極的に取り組んでいることです。
世界標準
EIPの急速な増加に対応して、世界銀行グループ、UNIDO、GIZは2017年12月に、EIPのパフォーマンスに関する最小限の要件を定義した、初の国際的な共同枠組みを発行しました。この枠組みが記述されたのは、さらに多くの政府と産業が独自のEIPの開発を希望しているためです。
「エコ・インダストリアル・パークについて知りたいと、韓国、日本、中国など各国の政府から人がやって来ます。開発途上国の役割は重要で、多くのコラボレーションが行われています」と、世界銀行グループの、気候に考慮した効率的な産業を推進するチームのリーダーで、報告書の主執筆者であるEtienne Kechichian氏は語ります。
Dolf van der Kamp氏は、オランダのヘレーンに広がるケメロットEIPでサービスを調整するSITECH社の検査担当マネージャーです。ケメロットでは多様な石油化学製品、特殊化学製品、プラスティック製品を製造する30の生産企業が連携しており、幅広く複雑な工程を調整して原材料の使用量を減らし、廃棄物を再利用し、最適な作業効率を維持しています。
長年の間には様々な企業の参入と脱退があり、運営をより複雑にしています。「企業が変わっても、製品ポートフォリオの整合は維持しなくてはなりません」とvan der Kamp氏は語ります。「SITECH社はサービス組織であるだけでなく、顧客が株主でもあります。できるだけ効率的に作業するには、非常に緊密な連携が必要です」
デジタル・ツール
デジタル・ツールの爆発的な増加とデータの高速化が、複雑さを増す協調プロセスを可能にしたと語るのは、ロンドンに本社を置き、EIPの急増に貢献しているCarbon Trust社で、ポリシー & イノベーション担当のアソシエイトディレクターを務めるDavid Aitken氏です。
250
EIPは急増しています。世界銀行グループ、国際連合工業開発機関、ドイツ国際協力公社によると、2000年には50未満だったEIPが、2018年には250以上確認されています。
「インダストリー4.0つまり第4の産業革命への移行は重要な進歩であり、EIPが増加した理由の1つでもあります」とAitken氏は語ります。「監視、通信、分析のための新しいテクノロジーが出現しています。これによって工業生産性と資源効率性が向上する可能性があり、EIPの重要な推進力になっています。環境保護、気候変動、資源効率は、EIPの必要性をさらに強くしています」
たとえば、モデリングとシミュレーションのソフトウェアの機能が向上すると、工場運営者は複雑な「仮想工場」を作成して、実際の工場で起こり得ることを測定し監視するだけでなく、工程管理とwhat-ifシナリオを計算して計画、管理、意思決定に利用できます。
デジタル・モデリング・ツールと管理ツールの継続的な改善も、工場経営者が、より厳格化し頻繁に変更される規制要件に対応するために役立ちます。
「要件を満たすことが容易になります」とSITECH社のvan der Kamp氏は語ります。「多くの企業が連携することで、政府や国際組織との調整ができます。関係者が皆バラバラだったら、こんなことは不可能でしょう」
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