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パワーアップ

Lynn Manning
25 April 2013

国際連合の推定によれば、世界の人口はいまや70億人を超え、2100年ごろには100億人に達します。発展途上国における工業化の進展と相まって、人口増加がエネルギー需要の拡大につながるのは確実です。しかしそのエネルギーは、どこから、どのような形で届くのでしょうか。この問いに、世界の各国はそれぞれ違う答えを出そうとしています。

エネルギーのコップには、「まだ半分入っている」のか、「もう半分しかない」のか、どちらでしょうか。その答えは、コップを誰が見ているかで異なります。

• 現在の米国では天然ガスが豊富ですが、地下水の汚染やその他の副次的な悪影響が増加中です。

• 日本では2011年の地震と津波により、福島の原子力発電所がほぼメルトダウンに至りました。ドイツ市民は原子力発電反対に転じました。

• 急速に工業化が進む中国では、旧式の石炭火力発電所に依存しているため、スモッグによる健康リスクが住民を脅かしています。

エネルギー構成を評価する際の基準が異なっていれば、価格、入手性、信頼性に応じて、エネルギー政策は国ごとに大きく異なるものになるでしょう。

天然ガス

米国では、天然ガスブームによって低価格のエネルギー供給に明るい見通しが立つようになり、一部の専門家は米国が「天然ガスのサウジアラビア」になる準備ができたと述べています。しかし『Fortnightly』誌編集者のMichael Burr氏によれば、エネルギー業界は依然として不確実性を抱えています。Burr氏は、「地下水の汚染や、水圧破砕による地震の誘発といった懸念があり、連邦、州、地方のレベルで厳しい規制が導入される可能性がある」と指摘しています。

とはいえ、天然ガスは化石燃料の中では「最もクリーン」だと見なされており、大気汚染に関する規制を満たすことも、石炭と比べれば容易です。米国の電力大手NRG Energy社のDavid Crane氏は、『Fortnightly』誌が開催した2012年のCEOフォーラムで、「現在のガス価格の状況では、ガス火力以外のベースロード発電所を建設するという選択肢はないはずです。石炭火力や原子力を正当化する方法は思い付きません」と述べています。

“「21世紀が終わりに近づくにつれて、石油と石炭の重要性は少しばかり失われ、天然ガス、原子力、再生可能エネルギーが占める割合が増えると考えられます」” 

Scott Tinker博士
経済地質学研究所ディレクター兼テキサス州代表地質学者

原子力による発電

しかし、非営利組織Electric Power Research InstituteでAdvanced Nuclear Technology Program(先進原子力技術プログラム)を担当するKen Barry氏は、石炭や原子力への投資を正当化できると信じていることが明らかな国もあると語ります。Barry氏は、中国、ロシア、インドが先頭に立ち、世界各地で66か所の原子力発電所が建設中であり、提案中や計画中の原子力発電所はその他に487か所あると指摘しています。

Barry氏は「こうした国々では原子力発電に付随する課題とともにそのメリットを評価し、原子力を推進することを決定しました。原子力産業は過去から多くを学び、次世代の設計はベストプラクティスに忠実なものになります」と述べています。同氏は、特に使用済み核燃料の貯蔵をめぐって、原子力が政治的な障壁に突き当たっている国もあると語りました。

石炭の状況

さまざまな選択肢があるものの、国際エネルギー機関(IEA)によれば、発電量に占める割合の点では、依然として石炭が世界で最も中心的な燃料(40%超)であり続けています。IEAのチーフエコノミストであるFatih Birol氏は、最新の『World Energy Insight』の記事で、
「(石炭は)発電の大黒柱であり続けており、新興国の急速な工業化を支える燃料として、何億人もの人々をエネルギー不足から救い上げる助けとなってきました」と記述しています。

急速な成長を続ける中国は、石炭の純輸出国から純輸入国になりました(消費率の点では米国やインドを上回っています)。しかし石炭を燃やすことには、多大な代償が伴う可能性があります。Birol氏は、「クリーンコール」にCO2の回収・貯留(CCS)を加えたテクノロジーを活用して、最終的には石炭の継続利用とCO2排出量の削減を両立させることが可能だと指摘しています。
しかしCCS技術は、いまだ試験的段階にあります。イギリスでエネルギー小売事業を手がけるRWE npower社は、最近ウェールズのアベルサウ発電所で、最初の1トン分のCO2回収

に成功するという画期的な成果を上げました。RWE Generation社でイギリスの無煙炭・ガス事業の責任者を務めるKevin Nix氏は、「このパイロットプラントによって、産業規模でのCO2の回収が実現可能かどうかについて、貴重なデータが得られるでしょう。また、この技術をどう利用すれば、石炭火力発電所で炭素排出量を削減できるかを理解する助けになるでしょう」と述べています。

そして、代替エネルギー

成の一部であり続けており、新しいテクノロジーへの継続的な投資によって、コスト効果が向上しています。

『Windpower Engineering』誌編集者のPaul Dvorak氏は、次のように述べています。「テクノロジーの実用化への流れの中で、風力タービンの収益性を向上させる取り組みが多数進められています。素材とテクノロジーの進歩によって、エネルギー効率とコスト効果の両方が高まるはずです」

553

世界各地で建設中もしくは提案・計画中の原子力発電所は計553か所にのぼります。  ELECTRIC POWER RESEARCH INSTITUTE

業界の観測筋は、天然ガスのコンバインドサイクル火力発電(CCTG)についても楽観視しています。CCTGでは、最大60%という前例のない発電効率が実現される(典型的な石炭火力発電の効率はわずかに約33%)ほか、起動と停止の所要時間が短いため、風力や太陽光のように発電量が変動するエネルギー源と組み合わせるのに最適です。

適切なエネルギー構成

各国がエネルギーの他の選択肢について調査を続ける背景には、規模の課題があります。しかし現在のところ、専門家の意見は、今後数十年間は化石燃料が最重要であり続けるという点で一致しています。

経済地質学研究所のディレクターでテキサス州代表地質学者(State Geologist of Texas)である Scott Tinker博士は、『2011 Global Energy Utilities & Mining Conference』というレポートで、次のように述べています。「21世紀が終わりに近づくにつれて、石油と石炭の重要性は少しばかり失われ、天然ガス、原子力、再生可能エネルギーが占める割合が増えると考えられます。しかし、石炭と石油がエネルギー経済の重要な部分であるのは変わらないでしょう。豊富に存在し、効率的で手ごろな価格なので、置き換えるのは困難なのです」

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