Financial & business services

完全デジタル: 銀行業界が全力を尽くして取り組む自動化の課題

Charles Piggott
19 February 2014

規制当局が透明性を求め、株主が効率化を求める中、金融サービス企業では、業務の多くで依然としてやっかいな手作業が必要とされています。すべての業務を日常の取引と同様に効率的にするため、銀行業界では手続きと文書の両方をデジタル処理することができる統合されたシステムが必要とされています。

190ヵ国、数十億人が信頼する金融サプライ・チェーンは、毎日最大で74兆米ドルが動いています。しかし銀行業界は、中心的な支払いや取引ではストレートスループロセッシング(STP)が大きな成功を収めたにもかかわらず、規制関係の手続きから新商品の開発に及ぶ多くの基本的な管理プロセスを自動化することには、悪戦苦闘してきました。

ただし、顧客、規制当局、株主の期待は自動化への取り組みは待ったなしの課題に変えました。銀行業務の監督官庁は透明性、コンプライアンス、監視の強化を望み、株主はコスト効率の向上を要求しています。そして、デジタル機器の利用に精通した消費者は、複数のチャンネルにわたるシームレスなサービスを探し求めています。

世界第2位の資産管理会社State Street Global Advisors社で、テクノロジーアーキテクチャ部門の責任者を務めるKevin Sullivan氏は、国際金融システムを崩壊直前まで追い込んだリーマン・ブラザーズ社の破綻を指して、次の通り述べています。「2008年の出来事が引き金だったことは間違いありません。あの出来事によって規制当局による監視のレベルが高まり、明らかにリスク管理や監査管理の優先度が上がりました。これは、より高いレベルの自動化が必要であることを意味しています。」

大きな障害、大きなメリット

堅牢なデジタルシステムには数多くのメリットがあります。透明性とトレーサビリティーの実現、データへのアクセス改善、誤りや不正操作が起きる可能性の低下、イノベーションのさらなる推進、商品化までの時間短縮化、コストの大幅削減などです。

金融サービスのテクノロジーと規制を専門とする顧問サービス企業Aite Group社の上級アナリスト、Nancy Atkinson氏は、次のように述べています。「銀行業務で自動化が可能なのは、残っている手作業のうち、おそらく35%から40%だと思われますが、その部分が検討の対象となっています。特に、異なるシステム間でのやり取りに手動での入力が必要とされているので、大いに改善の余地があります。」

「銀行業務で自動化が可能なのは、残っている手作業のうち、おそらく35% から40% だと思われますが、その部分が検討の対象となっています。」

NANCY ATKINSON 氏
AITE GROUP 社 上級アナリスト

もっと高い比率を挙げる人もいます。State Street社のSullivan氏は次のように述べています。「システムからは、すでに多くの手書きの指示書をなくしていますが、残りの手作業の約50%も自動化できると思っています。手作業を行うためにセキュリティーアクセスが必要な人の数も減ることになるため、自動化によってセキュリティーも強化されます。セキュリティーリスクは30%以上、おそらく50%に達するほど低下するでしょう。」

オランダに本社を置くABN Amro社で市場インフラ部門の責任者を務めるJan Paul van Pul氏は、金融サービスにおける現在のIT投資の大部分は、規制によって生み出されていると述べています。「銀行の戦略的IT投資のうち、およそ50%から70%は規制関連分野が対象となっています。その残りは、コストの最適化、費用/収益比率の改善、イノベーションの推進に向けられています。」

紙の排除

銀行業務の多くには、依然として手作業が多く必要とされています。特に、運営と管理の業務、規制や法令の順守、コーポレートガバナンスへの対処を非公式な形で実施する場合です。

こうした非公式なプロセスでは、後日調査を実施した場合、多額の費用と長い時間がかかります。電話や電子メール、ファックスを使って下した意思決定を、変更した場所やその理由、変更者記録がほとんどあるいはまったくない状態で編集されたスプレッドシートを根拠に再現しようとすると、意思決定者たちも重大なリスクにさらされることになります。

もし銀行にデジタル署名など、厳格な埋め込み文書に関する手続きによって管理された単一プラットフォームが導入され、経営幹部が協力できる体制が整っていれば、規制当局の信頼が得られやすくなるでしょう。デジタルプロセスをさらに広範囲に導入することで、顧客サービスや顧客の理解を得ることにも役立ちます。
英国に本社を置くLloyds Banking Groupのペイメントデザイン部門で責任者を務めるSailesh Panchal氏は、次のように述べています。「紙は退場間近な状態にあります。現在では、手作業の要素が含まれる新たなプロセスを導入するのは非常に困難です。そうした要素を排除するグループの指針は非常に厳格で、それが必要である明確な根拠を示すガバナンス・プロセスを経なければなりません。」

ROIの立証

英国のLloyds Banking Group社は、ITシステムのリエンジニアリングに大きな投資を行ってきました。「約50件のプロジェクトで、統合されたITシステムにアップグレードするために既存のサービスを完全に置き換える必要がありました。劇的な成果が得られた場合もあり、たとえば口座の開設と解約の時間に数時間かかっていたのが、ほぼ瞬時に行われるまで短縮されました」とPanchal氏は語ります。

経済的に不透明な時期にITプロジェクトの正当性を証明するのは困難なことです。Panchal氏は次のように述べています。「それぞれのプロセスを個々のレベルで検討しても、数字が積み上がって納得のゆく値になるという状況ではありませんでした。しかし、プロセスをグループ化するとまとまった機能が発揮されることがわかりました。そして弊社が進歩を遂げたのは、この、プロセスが連係する領域においてなのです。」

「現在では、手作業の要素が含まれる 新たなプロセスを導入するのは 非常に困難です。」

Sailesh Panchal 氏L
LLOYDS BANKING GROUP 社 ペイメント デザイン部門責任者

全面的につながり、デジタル化された銀行では、ばらばらで追跡することができない手作業に伴うリスクと費用がなくなるのと同時に、優れた透明性、情報、洞察が持つ価値を手にすることができました。今後5年間のうちに、ABN-Amro社、State Street社、Lloyds社を始めとして、早期に運営業務のデジタル化に投資した銀行が勝者となるでしょう。

Charles Piggott氏は、銀行の管理と規制に関するFinancial Times社の出版物『Global Risk Regulator』の編集長です。Piggott氏の記事は『The Banker』、『Euromoney』、『BusinessWeek』、『The Independent』、『The Wall Street Journal』の各紙にも掲載されています。

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