ヒューマン・タッチ

資産運用にも「自動化」の波、ただし顔の見えるものに

Miriam Gillinson
10 June 2017

テクノロジーはあらゆる産業に破壊的影響を及ぼしていますが、資産運用も例外ではありません。しかし金融サービスのように高度な個別化が行われる産業では、新しいテクノロジーは人によって行われる仕事を置き換えるのではなく、そうした仕事を増補することになる可能性が高いという点で、専門家たちの意見は一致しています。

資産運用の業界に、自動化が迅速に導入されつつあります。「ロボアドバイザー」と呼ばれる、コンピュータで動作するオンライン投資アドバイザーが急激に増えているのです。バンガード(米資産運用大手)の仮想アドバイザリープラットフォームだけでも、過去3年の間に500億米ドル近くの新規投資を引き寄せてきました。

うわべだけ見ると、従来からのマネーマネージャーは絶滅危惧種だと思われるかもしれません。それよりむしろ、業界の専門家は、人のノウハウとテクノロジーの妙技を自動化によって組み合わせることで、いっそう個別化された投資エクスペリエンスを生む可能性があると主張しています。

Citi Private Bank社で革新的金融戦略の立案を監督する部署であるGlobal Investment Labの所長、Philip Watson氏は、次のように述べています。「結局、最も強力な組み合わせは、人の裁量による投資アドバイスと自動化とを組み合わせて顧客エクスペリエンスを改善する、統合されたソリューションです」

ロボアドバイザーの台頭

Watson氏は、テクノロジー主導の破壊的影響は金融業界ではよくあることだと述べています。今回の違いは、手の届く価格で各人に向けたエクスペリエンスを作成する人工知能(AI)のロボアドバイザーが急速に増加していることです。

「登場したばかりのロボアドバイザーは勢いを増しつつあります」と述べたのは、グローバルなファンドマネジメントの動向にフォーカスしたイギリスのシンクタンク、CREATE社のCEOを務めるAmin Rajan氏です。「現在では、世界全体で900億米ドル近くがロボアドバイザーによって管理されており、この数字は2020年までに5倍になると予想されています」

ロボアドバイザーが急速に広がった理由は単純で、コストと利便性のためです。

金融コラムニストのJoy Blenman氏は最近、金融情報のウェブサイトであるInvestopediaに次のように書きました。「ロボアドバイザーを使用すると、数分のうちに、個人の条件に合わせた多様なポートフォリオを作成することができます。以前はもっぱら超富裕層が利用していた、タックス・ロス・ハーベスティング(利益が出ていない銘柄を売却して損失を出し、売却益と相殺して税額を抑制する手法)のような財産管理サービスや、認定ファイナンシャルプランナーへの相談を、一般の顧客も利用できます」

ただし金融業界は、自動化を急ぐのではなく、人とテクノロジーの強みを合体させて、より微妙な差異を重視することを選択してきました。たとえば2017年1月には、ニューヨーク市に拠点を置くオンライン投資アドバイザリーサービスのBetterment LLC社は、ロボアドバイザーと人のアドバイスを組み合わせるハイブリッド型投資サービスの計画を発表しました。その二ヶ月後、米国で業務を展開するディスカウント証券会社のチャールズ・シュワブ社は、新サービス「Schwab Intelligent Advisory」を開始しました。このサービスでは、コンピューターアルゴリズムによって作成された投資ポートフォリオ案に加えて、人によるアドバイスも電話やビデオで無制限に受けることができます。

速さと個人化のバランス

世界的ビジネスコンサルティング企業のPw社は、同社のフィンテックに関する2016年版調査レポート『Beyond Automated Advice』で、自動化によって、より個人に適合した顧客エクスペリエンスが作り出されると予測しました。

同社はこの調査レポートで、「オンラインの新しい高速なプラットフォームとアプリケーションでは、オーダーメードでありながら利用しやすい価格のサービスが提供され、リテール分野の顧客エクスペリエンスが改善されます。こうしたサービスは、投資家が投資目標を設定し、適切な製品やサービスを選択して、投資ポートフォリオを管理することに役立ちます」と指摘しています。「先見の明のあるアセット&ウェルス・マネージャーは、特定の顧客セグメントに対して、テクノロジーと人による対応の適切な比率を見つけることができるでしょう」。Watson氏にとって、このように組み合わせることは、金融業界のスキルを合体させるというありふれた事柄の延長にすぎません。

「以前のモデルは、人と人とのチームワークを通して得られる情報の強みに依存していました。たとえば、ポートフォリオ・マネージャー(PM)やリサーチアナリスト、複数の地域にわたって業務を行うチーム、リレーションシップ・マネージャー、投資アドバイザーといった人たちすべてが、少しずつ価値を加えていたのです。自動化は、AIだけでなく、人にAIを加えてその過程を拡張するものだと考えることができます」(Watson氏)。

“「最も強力な組み合わせは、人の裁量による投資アドバイスと自動化とを組み合わせて顧客エクスペリエンスを改善する、統合されたソリューションです」”

Philip Watson氏
Citi Private Bank社、Global Investment Lab所長

ただし金融業界は、自動化を急ぐのではなく、人とテクノロジーの強みを合体させて、より微妙な差異を重視することを選択してきました。たとえば2017年1月には、ニューヨーク市に拠点を置くオンライン投資アドバイザリーサービスのBetterment LLC社は、ロボアドバイザーと人のアドバイスを組み合わせるハイブリッド型投資サービスの計画を発表しました。その二ヶ月後、米国で業務を展開するディスカウント証券会社のチャールズ・シュワブ社は、新サービス「Schwab Intelligent Advisory」を開始しました。このサービスでは、コンピューターアルゴリズムによって作成された投資ポートフォリオ案に加えて、人によるアドバイスも電話やビデオで無制限に受けることができます。

テクノロジーと信頼

資産運用の自動化の将来は、テクノロジーと信頼の両方にかかっているという点で、専門家の意見は一致しています。

「市場、製品、顧客のニーズは絶え間なく展開していきます。そうした状況にあっては、人がすることに対するニーズが常に存在するでしょう」(Watson氏)。

しかしロボットアドバイザーが成功を収めるには、人のアドバイスと自動化されたアドバイスの組み合わせによって良いサービスが提供されていると消費者が感じなければなりません。

Watson氏は次のように述べています。「信頼はいかなる意思決定プロセスにおいても常に重要なものであり続けます。人による対応も含んだ総合的なソリューションに基づいて高品質で各人に向けたアドバイスを提供することは、いつでも有益です」。

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