世代に関する固定概念

専門家たちは、仕事場でミレニアル世代、 サイレントジェネレーション、ベビーブーマー、ジェネレーションX、 ジェネレーションZが相容れないという想定を疑問視

Lindsay James
20 November 2016

近代史の中で初めて、全雇用者の集団に、サイレントジェネレーション、ベビーブーマー、ミレニアル世代、ジェネレーショ ンX、ジェネレーションZという5つの世代が混在する状況になりました。このように多様な従業員を最大限に活かすため に、専門家たちは企業に対して、各グループに関する否定的な固定概念を捨てて「クロストレーニング」を行い、従業員の 力を最大化することを強く勧めています。

職場の年齢構成は変わり続けてい ます。一般に、2000年より後に生 まれた世代のジェネレーションZ の雇用は始まったばかりですが、PwC社に よる『Millennials at work: Reshaping the workplace』(ミレニアル世代が職場を変 える)という調査によれば、2020年までに、 1980~2000年生まれのミレニアル世代が 世界の全労働人口の半分を占めるようにな ります。さらには、1946~1964年生まれの ベビーブーマーと1946年より前に生まれた サイレントジェネレーションの大部分が定年 の時期にあるものの、それら世代の多くが 雇用の継続を選択しています。

コンサルティング企業Smart Workforce Strategies社の社長で、AgeLab(米国マサ チューセッツ工科大学の複数の専門分野に わたる研究プログラム)のリサーチフェロー でもあるDavid DeLong氏は次のように述べ ています。「これは、史上初めて5つの世代が 一緒に仕事をすることを意味します。多くの専 門家は、『世代間の断絶』は新たな力を生み 出すと考えています。これは世代間にはもの のとらえ方に重大な違いが存在するであろう という前提に基づく考えからです」

思い込み

ミレニアル世代は往々にして、上司から否 定的に捉えられています。ニューヨークに拠 点を構え、『残念な人の仕事の中身』(原題: What’s Stopping Me from Getting Ahead?) の著者である85歳のマネジメントコンサルタ ント、Robert Goldfarb氏は次のように述べて います。「1つの世代について、これほどのさ げすみを見聞きするのは初めてです。多くの CEOから、ミレニアル世代は怠惰である、勤労を善とする労働観を欠いている、いつも子供 の周りを付きまとう『ヘリコプター・ペアレン ト』に甘やかされてだめになっている、などと 聞きました。私には、こうした特徴の描写には 根拠がなく、厳しすぎる見方だと思えます」

44%

ミレニアル世代の44%は 今後2年以内に現在の雇用先を 離れたいと考えている

この世代についてもう一つ問題視されるの は忠誠心です。世界的コンサルティング企 業のデロイト・トウシュ・トーマツ社は、大規 模な民間組織に常勤で雇用されている大卒 のミレニアル世代7,770人を対象に、29ヵ国 で調査を行い、もし選択肢が与えられれば、 44%が今後2年以内に今の雇用先を離れた いと考えていることが分かりました。反対に、 Associated Press-NORC Center for Public Affairs Research社による最近の調査では、回 答したベビーブーマーの40%を超える人たち は同じ雇用先に20年以上在籍していました。

国際長寿センター(英国)でリサーチフェロー を務めるBrian Beach博士によれば、年長の世 代は年下の同僚からたびたび、より費用がか かり、仕事の進め方は型通りだと評されます。 「より頻繁に病気になると言われますが、実 際には、それとは逆のことが示されています」 と博士は述べています。

ただし、思い込みは否定的なものばかりでは ありません。Goldfarb氏は次のように述べて います。「ミレニアル世代は技術の扱いに非常に長けています。これは当然、ジェネレーショ ンZにも当てはまるでしょう。彼らの最大の強 みは、技術面での技量が卓越していることで、 新しいソフトウェアであれば、年長の世代より もずっとうまく操作することができます」

米国バージニア州に拠点を置き、ベストプラ クティス情報を提供するテクノロジー企業、 CEB社で人材ソリューションアーキテクトを務 めるJean Martin氏は、ベビーブーマーは、知 識から成果を生み出すノウハウを数多く持っ ていることに加えて社内外で重要な人脈や、 「その状況でどうすれば課題を本当に解決 できるか」に関する知識を持っているという 点で高く評価されています。「当社のデータで は、ベビーブーマーはプレッシャーに耐えて 仕事上の失敗に対処する弾力性を持ってい ます」とMartin氏は語ります。

スペシャリスト採用サービス企業、Robert Half社(豪シドニー)のディレクターである Andrew Morris氏は、世代に関するこうした思 い込みは不当なだけでなく、チームの協力、 職場の生産性、従業員の積極的関与にマイナ スの影響を及ぼすと述べています。「世代に 関する違いによってコミュニケーションも限 定されるおそれがあり、それがスタッフの士 気低下につながる可能性があります。そして、 従業員が深く関与しなくなり、もしかすると会 社を去ることさえ考える結果になるかもしれ ません」とMorris氏は述べています。

事実と虚構の区別

オラクル社の組織開発コンサルタントで、 『Unfairly Labeled: How Your Workplace Can Benefit From Ditching Generational Stereotypes』(不当なレッテル: 世代に関する固定概念を捨て去れば職場にはいかな るメリットがあるか)の著者でもあるJessica Kriegel氏は、肯定的であるか否定的であるか を問わず、世代に関する思い込みはすべて有 害であると述べています。実際には、『世代間 の断絶』という概念全体が、映画やテレビを 含む有力なメディアが長らく語り続けてきた 作りごとなのだ、とKriegel氏は述べています。

「個人による違いはありますが、そうした違い は各世代の中にも存在する場合があります。 一つの世代全体にわたる一般論として語る意 義はまったくありません。傾向は見られるかも しれませんが、そのほとんどは、小さなサンプ ルサイズに基づく調査結果なのです。米国に は8,000万人のミレニアル世代がいますが、 対象人数が10,000人以下の調査に基づいて 一般論が導き出されます。そんな結果はまっ たく意味がありません」(Kriegel氏)

英国の建築事務所Gensler社で設計ディレク ターとストラテジストを務めるYeesan Loh 氏も、その見解に同意しています。Loh氏は ヴァージン・グループ用の最新のブログ投稿 で、「ある時代に生まれたからといって、その 世代の特徴をそっくりそのまま受け継ぐわけ ではありません。そのうえ、一つの世代は別の 世代に混ざり込むものです。世代の境目で生 まれた人たちや、より最近になって工業化さ れた国の労働者はどうでしょうか。一因となっ ている、考慮すべき要素は他にも多数ありま す」と書いています。

成功のための戦略

米国コロラド州に拠点を置く、弁護士で組 織トレーニングと組織開発の専門家である Stacey Truitt氏は、職場で異なる世代の統合 を成功させるには、企業が固定概念を払いの け、世代をまたいだ業務の実施を促す必要が あると信じています。「話を聞いたいくつかの 大企業では、複数の世代から成る助言委員会 を設けていました。これは興味をそそられる 解決策です」とTruitt氏は述べています。

デルテクノロジーズ社では、いくつかある従 業員リソースグループの一つであるGenNext が、世代間のコラボレーションを促進する助 けとなっています。デルサービス社のイギリ ス担当ディレクターで、GenNextの共同エグ ゼクティブスポンサーを務めるTim Loake氏 は次のように述べています。「GenNextグルー プは、若手従業員のためにのみ存在するわけ ではありません。デル社全体のさまざまな業 務レベルに属していて、より経験豊富な、新卒 者に対する支援と知識の提供を行うチームメ ンバーも含まれています。このグループは、す べてのメンバーがアイデアを交換し、当社組 織が、新卒者と『時代遅れの人たち』の両方が もたらす特別なスキルの恩恵を受ける本物 の機会になっています」

リバースメンター制度の導入も、帰属意識 の向上につながります。世界的金融サービ ス企業のクレディ・スイス社は、若い従業員がベビーブーマーをコーチするように取 り計らうプログラムの一環で、28歳のRené Schrackmann氏を53歳のDaniel Niggli氏の パートナーにしました。Schrackmann氏は、 ソーシャルメディア、タイムマネジメント、マ ルチタスキングなどの多様なテーマについて Niggli氏を指導しています。

Schrackmann氏はクレディ・スイス社のウェ ブサイトに掲載されたインタビューで、「私 たちの場合、マッチングがとてもうまくゆき ました」と述べています。「実際には私がメン ターなわけですが、指導が双方向に進むこ とがよくあります。Danielさんはクレディ・ス イス社に35年勤めてきました。そんなキャリ アが目の前に示されて、自分の将来の計画と どのように重なるかを思案したり、彼の意見 を聞いたりすることができるのはすばらしい ことです」◆

How does Richard Branson inspire the workforce of tomorrow?
http://3ds.one/BBC

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