デジタル化で消費動向に対応

製造プロセスの再構築で需要の変化に対応するホーム・ライフスタイル業界

Jacqui Griffiths
30 October 2019

ホーム・ライフスタイル業界のトレンドは変化が急速です。企業は消費者がいつ、どこで、どのような製品を求めているのかを常に先回りして実現しなければなりません。だからこそ大手メーカーは、よりアジャイルで柔軟かつサステナブルなサプライチェーンを必要としています。オペレーションをデジタル化すれば、季節ごとに急増する需要や、移り変わりの激しい消費者の嗜好など、目まぐるしく変化するさまざまな要求に対応することも夢ではありません。

2018年、英国のハリー王子が米国の女優メーガン・マークルと結婚すると、新婦や結婚式の招待客が身に着けていたようなアクアマリンやアールデコ調の指輪の需要が急増しました。これは、英国のウェブサイトProfessional Jewellerによれば、その年の同国におけるジュエリーの売上に影響を及ぼしたトレンドの1つに過ぎません。トレンドを引き起こしたその他のイベントとしては、デビアス社によるブランドLightboxの立ち上げを受けて、ラボ・グロウン・ダイヤモンド(合成ダイヤモンド)の需要が急増したことや、チャームが再流行した結果、デンマークのジュエリーブランドPandoraが手掛ける新しいコンセプトのブレスレットが記録的なスピードで完売したことなどが挙げられます。

こうした需要の急増は、ジュエリー業界に限ったことではありません。ホーム・ライフスタイル業界のあらゆる企業は、市場のトレンドを見極め、それに対応すれば、大きな見返りを得られる可能性があります。ただし、変化に乗じられるだけのアジリティを備えていることがその条件です。

製造の再考

テクノロジーの高度化もまた、企業が製品の開発・製造のあり方を見直すことを迫られている背景にある動向の一つです。

「消費者製品のコネクテッド・デバイス化が進むにつれて、製品ライフサイクルは短くなります。なぜなら、最新のデジタル・テクノロジーに常に対応しなければ製品の意義を保てないからです」と話すのは、米国ミネソタ州に本社を置くプロトラブズ社の社長兼CEOを務めるVicki Holt氏です。同社は、医療機器、電子機器、家電、自動車および消費者製品業界の企業向けに、カスタムのプロトタイプとオンデマンドの生産部品を製造しています。「そこでメーカーは、市場投入までの期間を短縮できる製品開発手法を見出す必要があります」

消費者は、個々のニーズに合わせてカスタマイズされた製品も求めています。「メーカーはこれに対応すべく、製品のマス・カスタマイゼーションを進めようとしていますが、そのためには、少量を経済的かつ確実に素早く生産できるデジタルなマニュファクチャリング・プロセスとサプライチェーンを開発しなければなりません」と、Holt氏は述べます。

そのようなスピードとアジリティを実現する方法は一つしかありません。それは、デジタル・マニュファクチャリング戦略を柱とした新たなビジネスモデルを採用することです。

需要の変化への対応

Pandora社にとって需要に対応するということは、1,500種類に及ぶデザインのジュエリーを年間1億1,700万個生産することを意味します。しかも、毎年500以上のラインが新たに追加されるという複雑ぶりです。同社はさらに、100カ国以上に広がる7,800以上の販売店を横断して、それらのジュエリーを消費者が買いたいと思う場所とタイミングで買えるようにしなければなりません。その複雑さたるや畏敬の念すら覚えるほどです。

Pandora社は、タイに構える3つの工場の戦術的な運用上の生産計画をデジタル化することで、自動生産と手仕上げの併用化を進めています。

今日のメーカーは消費者の需要に迅速に対応するために、市場投入までの期間を短縮できる製品開発手法を見出さなくてはなりません。(Image © Protolabs)

一方で同社は、サプライチェーンをデジタル化すれば、季節的な消費者需要のピークを計算に入れることにより、稼働率の高さと期日通りの引き渡しを実現するために必要なアジリティを手に入れることができます。これは、どのような結果をもたらすのでしょうか。Pandora社は、生産リードタイムを大幅に短縮することで、新製品を市場に投入するまでの期間を短縮し、需要の急増に応え、自社の現代的なジュエリーに対する顧客の関心を高めることができると考えられます。

「当社の生産能力拡大プログラムを支える先進的な計画システムは、生産能力、効率、アジリティの向上を通じて、大切なお客様の需要に応えることを可能にするでしょう」と、Pandora社のグループ・オペレーション担当シニア・バイス・プレジデントを務めるThomas Touborg氏は述べています。

製品の引き渡し

キッチンの設計は、カスタマイズが命です。

英国の市場分析会社Trend Monitor社は、“2018 Kitchen Purchasing Trends(2018年のキッチン購買トレンド)”と題するレポートにおいて「キッチンが実用的な場所から家庭のエンターテインメントと余暇の拠点へと移行し続けるに伴い、新たなキッチンの設置に影響を及ぼす判断はいっそう複雑化する」と指摘しています。

キッチンとバスルーム用のカスタム備品・収納ソリューションの分野においてフランス最大のメーカーであるSchmidt Groupe社は、CuisinellaとCuisines Schmidtというブランドの製品を、欧州全土に広がる610店舗のネットワークを通じて販売しています。同社は、設計から生産、流通に至るまでの顧客価値創出のあらゆるステップを管理する類まれなエコシステムを有することを自負しています。

Schmidt Groupe社はそのエコシステムを支えるために、フランスとドイツの4つの工場を横断して生産を最適化することを可能にするビジネス・イノベーション・プラットフォームを導入しました。販売・オペレーション計画、大日程計画、全体輸送計画、リソース最適化の各機能と、生産能力および納期回答力に関する重要なインサイトにより、同社は資源を最適化し、ビジネスに不可欠な活動を同期することができるようになりました。

このプラットフォームは現在、1日当たり2,000件の注文の履行計画を立て、200件の納品のスケジューリングを支援することで、納期順守を実現しています。

「Schmidt Groupe[元SALM]は、プロセスの継続的な改善をはじめとするイノベーションに絶えず取り組んだ結果、この業界においてフランスではリーダーに、欧州では第5位の企業になりました」と語るのは、Schmidt Groupe社でプロジェクト・マネジャーを務めるJacques-André Feraud氏です。「このソリューションにより、当社は欧州全土で確実な納期を回答できるようになりました。このことは、当社が卓越したサービス水準を維持するための助けになっており、ひいては国際的なプレゼンスをさらに拡大することを可能にしてくれるでしょう」

即応態勢の実現

消費者の需要の変化に対応するには、供給から生産、納入に至るまでのバリューチェーン全体を巻き込む必要があります。その鍵となるのがデジタル化です。「製品ライフサイクルの短縮と、カスタマイズに対する需要の高まりは、デジタル・マニュファクチャリング技術、ビジネスモデル、そして顧客が求める製品の価値を高める方法のイノベーションに引き続き拍車をかけるでしょう」と、プロトラブズ社のHolt氏は述べています。

「製造をデジタル化すれば、プロトタイプと少量のオンデマンド製品を素早く確実に生産できるようになり、製品開発者、エンジニア、サプライチェーン・マネジャーが業務パフォーマンスの改善に役立つツールを利用できるようになります。その結果メーカーは、イノベーションを加速させ、リスクを減らし、サプライチェーンを最適化することで、消費者の需要に応えて競争優位性を獲得することが可能になるのです」

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