「オープン・イノベーション」は2003 年にカリフォルニア大学バーク レー校で生み出された概念で、 アイデアの共有やイノベーションの促進のた めにツールやプラットフォームの共同利用を 必要とします。今日、ビジネスにおけるイノ ベーションはかつてないほど協業の中から生 み出されており、クラウドソーシングとしても 知られるオープン・イノベーションの重要性 がますます高まっています。
予算やリソースの制限、モバイル、ウェブ、コ ネクテッドデバイス等のテクノロジーの急速 な変化、持続可能な開発への要請等、どの分 野でもビジネス環境は複雑さを増していま す。このような状況で生き残るためには、社 内外のコ ・イノベーションやコ・ クリエー ションのプロセスで共有された知識を使いこ なし、コラボレーションを促進することが不可 欠です。オープン・イノベーションには、次の 5つのトレンドが見られます。
社内と社外の融合
外部のコラボレーション・プラットフォーム は、社内でアイデアを管理するプラットフォー ムへの窓口となり、時には社内、外からのア イデアを組み合わせたり、社内アイデアを外 部コミュニティで試験的に実施することを可 能にします。
例えば、フランスの通信会社SFR社は、社内 のマーケティングチームやイノベーショ ン チームが生み出したアイデアを、ユーザー や顧客の外部コミュニティで試験的に実施し ています。将来的には、新規アイデアの創出 やフィードバックの収集のために活用できる 投稿管理されたプラットフォームを通じて、社 内の「イノベーション・コミュニティ」と外部の パートナー・グループを連携させ、さらに多く のアイデアを生み出していくでしょう。
コ・クリエーション・プロセス
コ・クリエーション・メソッドでは、単独のチー ムや企業で生み出せる範囲を超えて、サービ スや製品の新たなコンセプトをより速く効率 的に引き出すために、オンラインとオフライ ンの補完的要素を活用します。従業員、顧客、 専門家、設計者、開発者が参加者や投稿者に なり得るのです。
成功の鍵は、次のポイントにあります。
- アイデアやコンテンツを生み出す時と同等 の労力をかけて投稿者を分析し選別する
- コンペティション(選抜)のフェーズとコ・ク リエーション(協業による創造作業)の フェーズを区別してスケジュールを組む
- オンライン活動とオフライン活動が相互補 完するように計画する
メタ課題とコンテスト
アイデアの創出や課題解決の方法として、コ ンテストが徐々に広まりを見せています。将 来的には、コンテストによる効果を上げなが らリスクやコストを分担できるよう、競合関係 にない企業のグループによって大部分のコン テストが共同開催されるようになるでしょう。
誰でも自由に利用、再利用、再配布できる オープンデータの登場によって、開発者が革 新的なアプリケーションを生み出せるよう多 数のコンテストが開催されています。成功に は、コンテストや課題の企画、運営、提携に 協力できる適切なパートナーを選ぶことが不 可欠です。優れたコンテストにはパートナー の協力やリソースが集まり、コンテストを多 面的に できます。健全なコラボレーショ ンの精神をはぐくむことで、知的財産を守り ながら素早く成功に向かうことができます。
「新たに台頭する新世代プラットフォームを通してオープン・イノベーション、社会的責任、集合知の融合がいっそう進んでいくしょう」
MARTIN DUVAL
PRESIDENT AND COO , BLUENOVE
アイデア管理プロセス
アイデア管理プロセスの初期段階では、各 フェーズのキーとなる投稿者を選別し、プロ セス全体を通して参加者全員を独占してしま うのを避ける必要があります。同様に、報酬と インセンティブを慎重に選定して定義し、各 参加者の貢献度に応じて提供する必要があり ます。
社外的なクラウドソーシングと社内的なコン テストの活用範囲を広げる企業が増えるにつ れ、運営する側と参加する側の信頼関係が重 要になってきます。関係性、期待値、便益性を 明確に定義するには、次の点を考慮する必要 があります。
- 参加者の資質が十分に発揮できる場面で 参加してもらう。タイミングが早すぎても遅 すぎても、リソースの浪費につながる
- プロセスの各ステップで参加者に求める貢 献度を判断するために、投稿者のプロファ イリングを利用する
- フィードバックの評価や既存手段のフル活 用および再利用可能な要素の追加を念頭 において、社内外の投稿者に対するインセ ンティブや報酬を体系づける
業界横断型コラボレーション
オープン・イノベーションとは、今までの価値 を打ち砕くようなイノベーションのことで企業 の中核事業の外から生み出さることがほとん どです。従って大手企業や機関は、より広範 囲な問題に対処できる複雑なコラボレーショ ンを立ち上げ、実行する手腕を磨かなければ なりません。
企業は様々な問題を抱えています。特に、す べての企業、業界、バーティカル市場に実質 的な影響を与えた世界的な景気後退によっ て、利害関係者のリソースに強烈な圧力がか かっていることを考えると、イノベーションの 必要性はますます切迫していると言えます。
こうした課題に対処するために、主要な企業 グループや機関は、複数のパートナーが関わ る複雑で大規模なコラボレーション・プロジェ クトを立ち上げて実施する方法を学ぶ必要が あるでしょう。スマートシティがその一例で、 都市インフラの課題を解決するために、運 輸、エネルギー、建築、電気通信といった各 分野の事業者を連携させます。
このようなコラボレーションによるベン チャー事業では、参加者候補を「Fortune500」 誌や新規企業のランキングなどに掲載される 「パートナーシップ分析結果」で確認し、パー トナーシップを締結するための動機を評価す ることが非常に重要になります。業界内での 位置づけを基準にして参加者候補にアプ ローチするだけでは不十分です。パートナー シップ締結後は、パイロットフェーズ、テスト、 プロトタイピング、モックアップなどを可能な 限り活用して迅速な知識の蓄積や成果につ なげるなど、早期にサクセス ストーリーを生 み出すことに注力して、前向きにプロジェクト を進めてください。
こうした環境ではオープン・ノベーションの概 念が最大限に生かされ、新たに台頭する新 世代プラットフォームを通してオープン・イノ ベーション、社会的責任、集合知の融合が いっそう進んでいくしょう。