High-tech

テクノロジーとデザイン、 投資を一つ屋根の下に

Youngjin Choi
20 November 2016

まだ駆け出しのデザイナーだったキム・ヨンセ氏が米国シリコンバレーに来た当時、多くのハイテク企業は韓国を低コス ト商品を製造する国ととらえ、優れたデザインを生み出す国だとは認識していませんでした。今日、アイコニックな製品の デザインで数多くの著名なデザイン賞を受賞したキム氏は、韓国の若手デザイナーがこの分野でますます活躍できるよ う、インキュベーターの立ち上げに乗り出しています。

キム・ヨンセ氏は世界で最も有名なハ イテク製品デザイナーの一人です。 16に及ぶ著名なデザイン賞を受 賞し、象徴的な製品を数多く手がけ、主要メ ディアからも高い評価を受けています。マイ クロソフト社創設者のビル・ゲイツ氏も、キ ム氏のiriver MP3プレーヤーを「デジタル時 代をリードするデザイン」と賞賛しています。

米国シリコンバレーでハイテク分野のデ ザイン会社、INNO DESIGNを設立してから 30年になりますが、キム氏は自らのルーツ を見失ってはいません。韓国出身のデザイ ナーとして苦悩した日々を、今でも覚えて います。それは、自分が手がけることの多い 韓国企業、たとえばLG社やサムスン社など の製品が「すてきなデザイン」の代名詞と なる前のことです。最初に手がけた製品は ProTechという革新的なゴルフバッグでし たが、そのとき銀行の融資で資金を調達し たリスクを彼は忘れません。見本市の小さ なブースで、自分が手がけたサンプル品を 置き、それを市場で販売するためのスキル は何も持ち合わせていなかったことを自覚 して辛かったことを覚えています。

こうしたことを忘れずにいるからこそ、キム 氏は韓国の板橋テクノ・バレーの中心部に 新たにDesign Accelerator Lab(DXL-Lab) を開設し、ハイテク分野の将来を担う優れた デザイナーの誕生を全力で後押ししている のです。キム氏は次のように語ります。「DXL-Labで はテクノロジーとデザイン、投資を一つ屋根 の下に集結させました。すべての参加者が 自分の成功に思いを馳せられる、世界で初 めてのプラットフォームになるでしょう」

ハイテク分野の デザインの難し

キム氏はDXL-Labのことを「次の世代が自 分の業績を超えられるようにするチャンス」 と捉えています。

キム・ヨンセ氏(多くの賞を受賞したデザイナー。INNO DESIGN社創設者) (Image: © Lee Nam Sun)

「INNO DESIGN社に入社したいデザイナー が列をなしていますが、全員を雇うのはとて も無理です。私のこれからの夢は、多くの若 手デザイナーが後に続くのを後押しするこ とです」(キム氏)

ハイテク製品のデザインには業界特有の難 しさがあり、DXL-Labへの応募者のほとんど が抱いている「テクノロジーのコンセプト」 だけでは不十分であるとキム氏は語ります。 優れたデザインには「テクノロジーにできる こと」が必ず織り込まれていなければいけま せん。それが、単に消費者の興味や関心を 引きつけるだけでなく、テクノロジーがどの ように機能するのかをわかりやすく伝え、う まく引き立たせることです。

キム氏は『Wired』誌で次のように話してい ます。「私は、デザインの大きな流れは”私自 身”だと考えています。コンシューマーを感動 させられないデザインは彼らの心に残りま せん」。そして最近では、次のように説明を 補足しています。「世界のひのき舞台では、 デザイナーはもはや脇役ではありません。 今やデザイナーは、知らないうちに中心的 な役割を担っているのです」

形と機能が融合したデザイン

既存のアクセラレーターは、ハイテク製品 で形と機能を独自に融合させて、消費者を 楽しませる方法をほとんど知りません。この 方法こそがINNO DESIGN社の成功の核心 にあるスキルであり、キム氏がDXL-Labに 集うスタートアップ企業と共有するモットー、 「Design Together」を具体化したものです。

キム氏の哲学により、INNO DESIGN社では デザインを「常に美しい」、「機能的に使いや すい」、「製造しやすい」の三点を軸にして評 価しています。INNO DESIGN社は、DXL-Lab のスタートアップ企業がこの3点を達成でき るよう支援し、成長の可能性を秘めているプロジェクトには直接投資します。キム氏は「こ うしたプロジェクトはINNO DESIGN社が管 理します」と語ります。

成功へのプラットフォーム

スタートアップ企業を支援するために、 DXL-Labでは、成功を目指しているデザイ ナーをINNO DESIGN社の専門家や投資して くれそうな投資家とつなげるクラウドベース のビジネスプラットフォームを提供していま す。デザイナーはこのプラットフォーム上で 自分たちのプロジェクトを立ち上げ、INNO DESIGN社が最善の企画を支援します。ベン チャー投資家は推移を見守り、自分たちの投資基準を満たすプロジェクトを探すことが できます。一連のプロセスはすべて、プラッ トフォーム上で行われます。

写真の自転車はINNO DESIGN社が特許を持つ折りたたみ式自転車フレームとスタートアップであるHycore社が製造する 電動式の自転車用ホイールを提携の元、組み合わせて開発されました。(Image: © Hycore)

韓国にあるINNO DESIGN CenterがDXLLabの開発事業を指揮する本部となり、 INNO DESIGN USAはハイテク・スタートアッ プ企業の世界市場に向けた製品投入を支 援することになります。DXL-Labでは、10名 の意欲あふれる起業家と個別に話した後で キム氏が選んだスタートアップ企業を4社送 り出しています。

キム氏は「エンジニアは高い技術を習得し ている人が多いのですが、製品を実際に 作って売る方法はまったくわかっていませ ん」と語ります。それは、ProTechを発売しよ うとした自身の経験からキム氏がよく覚えて いる現実なのです。

未来をデザインする

Hycore社はキム氏が選んだスタートアップ 企業の一つで、電動式の自転車用ホイール を製造しています。電動ホイールとバッテ リーを自転車の後輪に取り付けると、自転車 は自力走行します。

「私のこれからの夢は、 多くの若手デザイナーが後に続くのを 後押しすることです」

YOUNGSE KIM氏
多くの賞を受賞したデザイナー。INNO DESIGN社創設者

「昨年、海外出張からの帰り道でHycore社 に関する記事を読み、私はすぐにその会社 に連絡して会う約束を取りつけました」とキ ム氏は語ります。その席でキム氏は、Hycore 社にINNO DESIGN社が特許を持つ折りた たみ式自転車フレームを提供しました。キム 氏は「INNO DESIGN社の自転車をHycore社 のテクノロジーと統合できれば、両製品の価 値が高まり、Hycore社のブランド価値も高 まるでしょう」と語ります。開発された製品は 2017年3月に発売予定です。

無名であることや苦しかったこと、韓国人で あることがどういうことなのかを自分が覚え ているからこそ、キム氏はお返しとして支援 をしています。「私は自分のデザイン力を活か して、韓国の産業を成長させたいのです。デ ザインの時代に影響を与えたいのです。その 出発点となるのがDXL-Labです」(キム氏)◆

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