High-tech

企業成長期における 困難

Allan Behrens
23 November 2016

新興企業の設立は、どの業界でも簡単で はありませんが、急速に変貌を遂げるハイ テク業界では、持久力と柔軟性の両面で 特別な取り組みが必要になります。本誌 COMPASSは、そのような企業に共通の課題 と戦略を見出すために、実際の経験から学 んだことや今後やり方をどう変えることがで きるかについてハイテク新興企業4社の創 業者からお話を伺いました。

成長中のハイテク新興企業では、刺激的で やりがいが感じられる一方、ストレスのたま ることや困難もあります。急成長している小 規模企業は、機動性が高く熱意に溢れてい ますが、資本不足やスタッフ不足のほか、組 織の成長が急速すぎてインフラの対応が間 に合わないなど、制約も受けています

成功した新興企業ならではの極めてユニー クな特性を維持しながら、そこからの進化を 図ることが課題です。こうした微妙なバラン スをとる行動にどのように取り組んでいる かを理解するために、Forbes誌の寄稿者で Inc.誌の元エディターであるBo Burlingham 氏、米国を拠点とする業界・ITコンサルティ ング会社VDC Researchのエグゼクティブ・ バイス・プレジデントであるChris Rommel 氏、および新興企業から名声が確立した企 業へと困難な移行を進めているハイテク企 業4社の創業者に連絡を取りました。 ◦ Ben Stagg氏、Halo Smart Lab(s 米国ノースカロライナ州)のCEO兼共同創業者。 同社は、竜巻の早期警報システムにネッ トワーク接続可能な煙探知器を開発。

◦ Jack Kutner氏、Bigbelly(米国マサチュー セッツ州)のCEO。同社は、コンテナの廃 棄物除去が必要になると市職員に通知 がいく、ネットワークへ接続されたソー ラーパワー廃棄物コンテナを製造。
◦ Syed Ahmed氏、Savorte(英国)のCEO兼 創業者。同社は、動画広告を再生しなが ら、同時に利用者の動きをモニターして 洗面所の保守サービスが必要な場合にス タッフに警告を出すスマート・ハンドドラ イヤーを製造。
◦ Alan Weinberg氏、Myomo(米国マサ チューセッツ州)のマーケティング担当 ディレクター。同社は、筋電装具および各 種サービスによって上肢まひの克服を支 援。

成功は計画から始まる

あらゆる新興企業の出発点は熱意と刺激的 なアイデアですが、安定した基盤を生み出 すのに不可欠な3番目の柱である「健全な事 業計画」を忘れている人が多いです。

Savortexに初期の成功をもたらした「秘訣」 について聞かれると、Ahmed氏は次のよう に答えます。「当社では、計画策定に数年を 費やしました。会社を立ち上げる前に、少な くとも2年かけて当該セクターを調査して困 難な点を把握し、その上で市場動向の検討 に着手したのです」

「当社では、計画策定に数年を費やしました。少なくとも2年かけて当該セクターを調査して困難な点を把握しました」と、 スマート・ハンドドライヤーを製造するSavorte(英国拠点)のCEO兼創業者であるSyed Ahmed氏は、 自社について述べています。(Image: © Savortex)

計画があっても、計画通りに進めることは 容易ではないと、Weinberg氏は説明します。 「現実問題として、特に製品開発やエンジ ニアリング段階の計画では、ある程度までしか予測できません。すぐ簡単に別のことに気 を取られてしまいます。新しいアイデアを調 べてみる価値がないと言うわけではありま せんが、タイミングが問題です。戦略計画の 見直しを継続的に行ってください」。

頻繁に 見直しを行うことのメリットは、資金調達の 新たな機会が出現した時点で計画は既に最 新であることだと、同氏は述べています。

「進化する企業ニーズに ツールやプロセスを適応させて 支援する必要がありますが、 実用的なものにするには、 ある程度の規模が必要です」

CHRIS ROMMEL氏
エグゼクティブ・バイス・プレジデント、VDC Research

何をすべきかだけでなく、成功がどのような ものになるかについても具体的に思い描く ことが重要であると、Burlingham氏は指摘 します。

「多くの起業家には、最終的にどこに 到達したいかという具体的な計画がありま せん。物事を行っているうちに全く意図も計 画もしていない結果となったり、理解できな い物事が起きたりするのです」

適切なシステムが コラボレーションを支援

全員が同じビジョンを共有して1つの部屋で 仕事をしていれば、コラボレーションは容易 です。しかしながら、会社が成長するのに従 い、企業の舵取りを行う人と日常業務を行う 人との間には自然と距離が生じてきます。

各従業員が創業者に直接会えないくらいの 規模の組織になると、企業は、個々の知識に 基づいた場当たり的なプロセスから組織的 なプロセスへと移行する必要に直面します。 初期段階でよく使われる実用的ながら低コ ストのツールでは、こうした移行に必要な拡 張性が担保事できない、ということがよくあ ります。

「進化する企業ニーズにツールやプロセス を適応させて支援する必要がありますが、 実用的なものにするには、ある程度の規模 が必要です」と、VDCのRommel氏はアドバ イスします。

Kutner氏によると、Bigbellyでは、導入が進 むようになった転換点は組織の「声」でした。たとえば、セールスチームが発注しにく いと不満を言うことや、カスタマーサポート が顧客満足度の管理が難しいと感じたこと です。

成長を管理しているときに、「適切な時期が くれば適切なことが起きるだろうという直感 や信念だけに頼ることはできません。企業 は、個々の事例や定性的なものから定量的 なものに基づく意思決定に移行する必要が ありました」と、Kutner氏は述べています。

環境とともに変化する

とはいえ、古くなったプロセスを自動化する ことが答えではありません。

「現状の処理手順を自動化するだけでは 無意味です。抜本的にプロセスを改革し た上で、自動化しなければなりません」と、 Kutner氏は続けます。
企業の優先事項が変化していくのに合わせ ることが難しいシステムは、全くツールを使用していないのと同じくらい問題がありま す、とStagg氏は説明します。「高度な知識と 起業家精神との間の適切なバランスを見つ けなければなりません。企業の経営状態を 確実にモニターしながら、同時に現状を打 破していくことが重要です」

「成長とは面白いものです。時には困難なこ とや面倒なこともありますが、要はバランス です」と、Stagg氏は述べています。

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