High tech

ハイテク業界の未来予測 : より短いサイクルが協調設計を加速し、複雑性を増大させる

Dan Headrick
26 October 2013

John Blyler氏は、テクノロジー、科学、SFについて執筆や教育、講演を行い、『Chip Design』、『Solid State Technology』、『Embedded Intel Solutions』の各誌で最高コンテンツ編集責任者を務めています。またポートランド州立大学システム工学科の客員教授でもある同氏は、大学院教育課程で教鞭を執っています。COMPASS編集部は先日、ハイテク分野のトレンドについてBlyler氏にお話を伺いました。

COMPASS: この10年間、ハードウェアとソフトウェアの協調設計の分野で、画期的な出来事を数多く目にすることになりました。次の10年の間に、何が脚光を浴びるとお考えですか。

John Blyler氏(以下JB): ムーアの法則、そしてチップやボードの設計の効率化が進んだことにより、これらの製品はコモディティ化しました。その結果、ハードウェア・ベンダーはソフトウェアで自社の差別化を図ることを強いられています。また、チップの設計時には、同時にボード設計を考える必要があるため、すべてを連携させるソフトウェアを利用したハードウェア間の協調設計に足を踏み入れることになります。

より緊密な統合に向かう傾向は強まる一方です。製品を市場へ投入するまでの時間は短くなりつつあるため、ハードウェアの設計中に、設計済みのソフトウェアが使用できる状態が求められます。以前とは逆に今は多くの場合、ソフトウェアに関するユーザーレベルの要求によって、チップ設計が決まります。

ユーザーを意識したシステムのモデリング、統合、設計において、現在の最大の課題は何でしょうか。

JB: 技術者の友人に、エンドユーザーのエクスペリエンスを意識した設計が今の動向だと言うと、困惑した反応が返ってきます。ソフトウェアは作業中の急な変更が容易なため、ソフトウェア制作にいかに当てはまるか理解するのは簡単です。しかしハードウェアの場合は、より多くの注意点が求められています。どのようにそれらを全て実現すべきか。これが、設計および製造にかかわる人達に今もなお取り組んで進められている課題です。

携帯電話の分野でも、同じ事が見られます。エンドユーザーからの情報は、ソフトウェアと電気機械サブシステムの両方に影響があるため、設計サイクル初期に提供されなくてはなりません。さらに、すべてを低消費電力かつ、環境に配慮しなければなりません。単に製品を正しく機能させるという事の外に考慮すべき要素が数多くあります。プロダクト・ライフサイクル・マネジメント(PLM)の課題への関心がエンジニアリング領域全体で高まっているのはそのためです。非常に多くの要素を同時に連携させる必要があり、PLMがその大きな助けになります。

システムのコンピューティング要素と物理的要素の統合を表すのに、「サイバー・フィジカル・システム」(CPS)という用語がよく使われます。このトレンドはどのように発展していくとお考えですか。

JB: これを表す別の用語として、インベテッド・インテリジェント・システムという表現もあります。これは、独立型のシステムが不要なほどハードウェアとソフトウェアの小型化が進んだことで可能になりました。私たちは、至るところにセンサーがあり、多数のセンサーそのものがインテリジェントに機能するセンサーフュージョンの世界で生活することになります。コンピュータがあり、独自の小規模ネットワークを使うセンサーがあり、そしてクラウドに接続する無線システムがあるのです。

このテクノロジーは生物学にさえ拡張できます。遺伝子空間と電子空間を結び付け、人体により多くの電子機器を埋め込もうとする動向は明らかです。このようなシステムはほとんどSFの世界になる可能性があります。細胞さえもトランジスタとして使われるでしょう。

「以前とは逆に今では多くの場合、 ソフトウェアに関する ユーザーレベルの要求によって、 チップ設計が決まります。」

John Blyler 氏
ハイテク関連の編集者兼教育者

無線チップ市場についてはどう見ていますか。

JB: 通信事業者の売上高、周波数帯域の取引高、60GHz帯の利用を推進する大きな波を見ると、無線接続がますます増えていくでしょう。そして無線チップは、大規模な応用にも小規模な応用にも採用されていきます。小規模な応用としては、タイヤ内のセンサーでタイヤの空気圧を監視したり、畑の小さな無線センサーで、作物への水やりが必要なタイミングを調べたりする例があります。

結果として、そのようなセンサーにどう電力を供給するかという議論に至ります。エネルギー・スカベンジャーは、タイヤの回転など、環境からエネルギーを取り入れる装置です。屋外の畑の場合、太陽光を使ったり、土壌と作物のpH(酸性度またはアルカリ度)の差からエネルギーを取り込んだりして小さなRF(高周波)回路に電力を供給し、最終的に情報をクラウドに送り返します。

どれも非常に興味深いのですが、ハイテク業界は働き手をひきつけようと躍起になっています。業界はどのようにすれば、学生たちにハイテク関係のキャリアに進む意欲を持ってもらえるでしょうか。

JB: 私は実際に、SFと科学に関する講義を持っており、若者が業界をより身近に感じられるイメージを構築する助けになっているのではと思います。しかし、テクノロジーそのものも学生を刺激し、ハイテク関連キャリアの将来性を印象付けることに役立つと思います。たとえば安価な3Dプリンターは、テクノロジーに興味を持たせる良いきっかけとなるでしょう。

「私たちは、至るところにセンサーがあり、 多数のセンサーそのものがインテリジェントに 機能する世界で生活することになります。」

John Blyler 氏
ハイテク関連の編集者兼教育者

ハイテク関連のキャリアについて語るときに見落とされがちな要素に、対人スキルが上げられます。技術レベルの高い人たちは、優れた対人スキルと感情知能指数も持ち合わせている必要もあります。私は、オンラインの発展とソーシャルメディアによって、対人関係の能力が少しそがれてきたのではないかと考えています。グローバルな環境では、対人スキルと文化的感受性が必要であり、ハイテクの技術的側面だけに集中することはできないのです。

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