ベルナルドは、食器類から室内装飾品、照明器具、宝飾品、現代美術アーティストとコラボ
レーションした限定品までを手がけているフランスの磁器メーカーです。確かな目を持つ消
費者にクリエイティブな商品を届けるために、同社は従来の伝統と継続的な改革との融合を
重視しています。ベルナルドはこれまで、世界中の王室や大統領官邸からの依頼を含む特注
品のために数百にも及ぶアイコニックなデザインを生み出してきましたが、いっぽうで消費
者は常に斬新なデザインも求めています。
同社の開発責任者であるCharles Bernardaud氏は次のように語ります。「ベルナルドは常に
創造性を追求しています。お客様に当社の商品への興味を持ち続けてもらうためには、毎年
生まれ変わらなければいけません」
手作り磁器の伝統を今に伝え、150年の歴史を持つ同社は、テクノロジーを用いてイノベー
ションの課題に取り組んでいます。
Bernardaud氏は次のように説明します。「以前はデザインは手描きで行い、試作品も手作
りでしたが、今は3次元設計と3Dプリンティングに代わりました。つまり、試作品を素早く
作成できるようになったのです。実際に生産に移る前に、どのような商品なのかを極めて最
終的な製品に近い形でお客様にお見せすることができます」
テクノロジーによって、ベルナルドは、従来はどう考えても作れなかった製品も作れるよう
になりました。
Bernardaud氏は次のように語ります。「手作業では無理のある、複雑に入り組んだ幾何学
的な形態も制作し、複製することができます。たとえば現代美術アーティストのジェフ・ク
ーンズとのコラボレーションでは、5年前には不可能だった磁器作品を制作しています。ア
ーティストの要求を正確に再現するには極めて高い精度が必要であり、これはテクノロジー
なしでは達成できません」
「お客様に当社の商品への興味を持ち続けてもらうためには、毎年生まれ変わらなければいけません」
CHARLES BERNARDAUD氏
ベルナルド開発責任者
ベルナルドは確かな目を持つ消費者の好みにテクノロジーを駆使して対応していますが、こ
れはホーム&ライフスタイル業界で増えつつある大きな流れ、つまり「顧客を中心に据えた
エクスペリエンス創出プロセス」を表しています。
消費者に快適さを提供
こうした流れはデンマークのシューズブランド、ECCO(エコー)を見ても明らかです。蘭
アムステルダムにある同社のイノベーション・ラボでは最近、専門チームが顧客を中心に据
えた実験的なプロジェクトを実施しました。これはシューズ業界を一変させる可能性があり
ます。
このQuant-U (Quantified You)カスタマイゼーション・プロジェクトにはさまざまなイノベ
ーションが集約されています。同チームはカスタマイズしたコンポーネントの使用をスムー
ズに進められるシューズの製作方法を開発しただけでなく、材料メーカーと連携して3Dプ
リンターで出力できる画期的なシリコーン材を作り出し、さらには特許アルゴリズムの開発
によって、カスタマイズされた独自のシューズを店内で提供できるようにしました。
解剖学的スキャンとリアルタイムの歩き方分析、データに基づいたデザイン、3Dプリンタ
ーを融合し、それぞれの購入者にぴったりフィットするシリコーン製のミッドソールを、店
頭で1時間程度で完成させます。
ラボを統括するPatrizio Carlucci氏は次のように語ります。「純粋なシリコーンを特定の方
法で3Dプリントすることで、シリコーンの優れた性質をダイナミックに調整できるのです
。長時間立ったままで過ごす場合に対して、より多くの動きが伴う活動を行った場合などは
、緩衝性、適合性、弾力性がそれぞれ異なるため、この調整能力があれば、さまざまな状況
で最適な動きを可能にするコンポーネントを自動的に生成することができます」
人々は何を購入し、それをどのように使用するのでしょうか。デジタル時代がその前提条件
を変えるのに伴って、ECCOのラボは消費者に特化したイノベーションの重要性を実証して
います。消費財を扱う多くのメーカーが、たとえば消費者の好む写真を衣類にプリントする
といった表面的な工夫に着目する中で、このラボのカスタマイズに対するアプローチは、着
用者の歩き方や履き心地に合わせて製品を補強することで快適さや性能を高め、より快適に
過ごせるようにするものです。
カナダに拠点を置く革新的企業のアライアンス・ネットワークの一員であり、小売分野の設
備やマーチャンダイジングを手がけるCanada’s Best企業グループの社長、Bud Morris氏は
「これを実現する鍵となるのがデータです」と語ります。
「データを収集して活用し、消費者の興味に合うようにコンテンツを管理することで、企業
は自社の商品を中心に据えてライフスタイルや文化を創出し、商品により深い愛着を感じて
もらうようにすることができます」
87%
最も急成長している企業の87%が、イノベーション文化の育成は戦略的な優先事項だと述べ ています KPMG グローバル消費財流通企業エグゼクティブ トップ・オブ・マインド調査2018
Quant-UプロジェクトはECCOに対して、たとえば、義肢・装具や医療分野への応用を含む
新たな市場を提示することができました。しかし、ECCOが現在着目しているのは購入者の
快適さです。
Patrizio Carlucci氏は次のように語ります。「コンセプトは、人々が将来的にどのような方
法で靴を購入するようになるのか、計測場所となる小売店環境のトラフィックをどのように
シミュレーションするのか、新しい顧客ロイヤルティのシナリオをどのように作成するのか
、といったことをイメージして作成されました。自分の足に合わせてカスタマイズした靴を
履くことで着用者の生活が少し改善しますので、それは変化の体験となるでしょう。こうし
た靴によってもたらされる根底を揺るがすエクスペリエンスは、多くの人々が最も求めてい
るものなのです。たとえカスタマイズされた靴を買わなくても、顧客は自分の動き方や足の
構造について多くのことを知ることができます。それが行動に対するアプローチを健康的に
改善するのに役立つ可能性があります」
イノベーションを続けていくために、新しい視点を
新しいテクノロジーが消費者の期待そのものを変化させていく中、汎用エンジンから船外機
まで、広範囲にわたる製品を開発している本田技術研究所パワープロダクツR&Dセンター
では、イノベーションについて従来とは違うアプローチで考えることが不可欠になっていま
す。
「これまでのモノとしての信頼、魅力にとどまらず、私たちのデザインを通して人々の存在
に対する共感やその場の空気感等を創っていく必要があります」と、デザイン・ブランド戦
略統括である南俊叙氏は語ります。継続的なイノベーションを通じて新しい観点を生み出す
ために、パワープロダクツR&Dセンターでは異なる業界のインプットを取り入れています
。これも最近人気のある手法です。
「家電やカトラリーのようなカテゴリーの違うプロダクトを創出しているデザイナーとのコ
ラボレーション、大手広告代理店などで新価値を創造するために設立された部署のユニーク
なクリエイターなどとのワークショップなども行っています。デザイナーやクリエイターも
バックグラウンドが異なれば、アイデア発想の手法も各々違っており、新たな視点でモノや
コトを捉えることが出来るようになりました」と、南氏は続けています。
パワープロダクツR&Dセンターでは毎年、すべてのデザイナーが一人一テーマ、ボードメ
ンバーにアドバンスデザインをプレゼンテーションするプログラムを行っており、デザイナ
ー個人による自由な発想が行える場になっています。
「ある若いデザイナーは、2011年の東日本大震災の経験をきっかけにして、ポータブル・
バッテリーのアイデアをプレゼンテーションしました」と、南氏は語ります。「そのアイデ
アは最終的に蓄電機リベイドE500として量産化され、グッドデザイン賞やJIDAデザインミ
ュージアムセレクションといった評価を受けることになりました」
無限の可能性
ベルナルドやECCO、本田技術研究所パワープロダクツR&Dセンターはそれぞれ全く異なる
企業ですが、いずれも自社製品が参入できる市場を新たに切り開く方法で、昔から立ちはだ
かってきたイノベーションの限界を打破しています。
Bernardaud氏は次のように語ります。「私どもが取り組んでいるテクノロジーは、他の市
場への参入を可能にする品質基準や精度の実現を後押ししてくれます。たとえば防弾チョッ
キや工作機械向け工業用セラミック、化粧品市場の品質基準を満たす磁器製容器など、食器
以外にもさまざまな製品に取り組んでいます。こうしたことは、テクノロジーがなければ決
してできることではありません」
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