Industrial equipment

カスタマイズの管理

Lindsay James
23 June 2018

産業機械の顧客から、独自の要求に合わせてカスタマイズした製品を、既製品と同じ期間で製造するように求められることが増えています。工場では、デジタル・テクノロジーを導入することで、この高い期待に応えようとしています。

ヘンリー・フォードの時代から、大量生産では、標準化した製品を生産することが当然とされてきました。産業機械(IE)企業にとって重要なのは、適切な「速度と供給量」を実現することで、生産速度と供給量の向上に優れた企業が事業で成功を収めてきました。

しかし、それは過去の話です。

「デジタル・テクノロジーの発展により、多様なオプションを選べるようになった顧客から、パーソナライズした製品を求められることが増えています」と語るのは、ロンドンに本社を置くアクセンチュア・デジタル社の代表取締役Yen-Sze Soon氏です。「IEメーカーは、変化する顧客の期待に応えるために、または関連他社に取って代わられるリスクをなくすために、ビジネスの変革が必要であることを認識しています」

「大量カスタマイズが現実になってきました」と語るのは、ボストンを拠点とするアナリスト企業LNS Research社のMatthew Littlefield氏です。「速度と供給量では、IE企業は契約を獲得できなくなっています。顧客の成果につながる製品の提供へと移行する必要があり、それには柔軟性と敏捷性が必要です」

コロンバスを拠点とするエンジン・メーカーのCummins社で製造ITと産業用制御を担当するディレクターRachel Lecrone氏は、これが難しい課題であることを十分理解しています。

「カスタマイズ製品には常に高い需要がありましたが、この傾向が加速したのは最近のことです。たとえば、エンジンの後処理システムをトラックに据え付ける方法は、発電機または農業システムのトラクターに取り付ける方法とはまったく違います。梱包も、顧客とのタッチポイントも、排気筒の給気口と排気口も、すべて異なります」

Darin Schmidt氏は、カンザス拠点の農業用自動車メーカーAGCO社で、製造作業の中央エンジニアリング・マネージャーを務めていますが、Challenger、Fendt、GSI、Massey Ferguson、Valtra等のブランドで、もっと多くのカスタマイズ・オプションを提供しなくてはいけないと感じています。

「現在は、自動運転車に向かう大きな流れがあります。しかし、このような自動車の用途は、市場の分野によって異なります。種まき、刈り取り、農薬散布などの操作毎に特有の技術的な課題があるのです」

デジタル・アプローチ

カスタマイズの課題は、デジタル変革によってのみ解決できるとSoon氏は語ります。

「デジタル・テクノロジーは産業を根底から変えて、数十年も続いたビジネス上の慣習、慣例、運用モデルを崩壊させました。進化と競争力を求めるメーカーにとって、これは導入せざるを得ない技術です。IE企業は、デジタル・テクノロジーを完全に受け入れなくてはなりません。アクセンチュア社は、インダストリーX.0でデジタル変革の定義を示し、企業が高度なデジタル・テクノロジーを使用することで中核事業、従業員、顧客体験、そして最終的にビジネス・モデルが変化することを説明しています」

デジタルによって自社を変革した組織は、大きなメリットがあることに気付くだろうと、Littlefield氏は語ります。

「デジタル・サービス企業は、ITと事業運営を組み合わせて、成果報酬型の変革サービスを顧客に提供する必要があります。業界リーダーはこれをさらに一歩先へと進めて、機器の『デジタル・ツイン』を作成し、顧客資産の全ライフサイクルを最適化するように支援します。デジタル変革の結果、ベンダーは、データ・アクセスの増加、顧客インティマシーの強化、付加価値サービスの提供能力がもたらすメリットを享受できます。一方、顧客は、ビジネス上の最重要点にリソースを集中できるというメリットを享受できます」

このような可能性があることを理解するCummins社は、デジタル化に多大な時間とリソースを投入しています。

「過去20~30年にわたって、私たちは生産実行システム(MES)に大きな投資をしてきました」とLecrone氏は語ります。「その結果、独特な要求があった場合にも適応できる柔軟性を備えることができました。またトレーサビリティーによって、たとえ1回限りの製品発注であっても、製品を適切に構築して記録した全データから、プロセスをいかに管理したか、どのパーツを使用してその特定の製品を組み立てたか、また作成した特別な品質チェックなどを確認できるようになりました」

新しい挑戦のはじまり

品質管理と監査履歴は、Cummins社が実現したいことの開始点に過ぎません。

「デジタル変革によって実現されることをすべて調査して、何が私たちに最善の結果をもたらすかを突き止めたいと思っています」とLecrone氏は語ります。「たとえば、プロセスの3Dシミュレーションは、変化にすばやく対応するために役立つのではないかと思っています。しかし、まず手始めとしては、エンジニアリングから製造までのデジタル・スレッドを構築することを試みています。製品ライフサイクル管理(PLM)、エンタープライズ・リソース計画(ERP)、MESの各システム間は常にリンクしていますが、技術的改善として、これらのリンクを強化しようとしています。これは簡単な作業ではありません」

64%

アクセンチュア・デジタル社の最近のサーベイによると、エグゼクティブの64%は、デジタル・テクノロジーの導入による中核事業の変革と新事業の育成ができなかった場合には、生き残りが脅かされると考えています。

業界の多くの人が、これは挑戦だと感じています。「私たちが最近実施したグローバル・サーベイによると、エグゼクティブの約3人に2人(64%)は、デジタル・テクノロジーの導入による中核事業の変革と新事業の育成ができなかった場合には、生き残りが困難になると認めています」とSoon氏は語ります。

Lecrone氏は、最大の問題は、状況に応じて適切なデータを共有することだと語ります。「製品の構造情報を共有するだけでなく、製品の設計要件も製造エンジニアリングに組み込むことで、プロセス計画をさらに精巧にしたいと考えています。また、多くの異なるシステムから収集したデータを標準化して、複数の工場にわたって製品の性能をより詳細に参照できるようにすることも試みています。この情報の共有は、プロセスの標準化したパーツによって問題を解決するために役立ちます。さらに一貫したデータ・ビューを持つことができると、フィールド全体で保証問題のいくつかをうまく解決することもできます。残念なことに、データの一貫したビューの実現には苦労しています。現在もサイロに膨大なデータが保存されています」

モノのインターネット(IoT)の台頭も、状況を悪化させるばかりです。「IoTの利点の1つは、企業がより多くの情報を収集できるようになることです」とLecrone氏は語ります。「しかし、データの収集が問題になったことはありません。データを収集するためのクリエイティブな装置はたくさんあります。難しいのは「問題に取り組む人」を「データを持つ人」に結び付けることです。これを実現する最良の方法を考えています」

接続された将来

Schmidt氏は、どこで線引きするかを知ることが重要だと語ります。「新しい製品ラインの約80%のプロセスをデジタル化しました。カスタマイズの大半は、ここで発生するためです。しかし、従来製品については約20%の進捗にとどまっていると思います。デジタル変革は将来にわたって一歩先んじるために実施するものですが、プロセスによってはコストがメリットを上回ることを知っておくことも重要です」
 
一方で、Lecrone氏は、Cummins社が取り組んでいるデータの接続を実現できれば、そのメリットは取り組みに十分に見合うものだと考えています。

「この問題には、多くの人員を割いて取り組んでいます。デジタルの採用は、リードタイムを短縮するだけでなく、顧客の関心を引いて対応するための新しいクリエイティブな方法を見つけることにもつながると確信しています。デジタル変革は、製品のライフサイクル・チェーンの流れに沿って進みながら、機能間でシームレスに情報を交換することを可能にします。利用できる情報が増えれば増えるほど、顧客の高まるパーソナライズの要望に、より迅速に対応できます」

For information on Intelligent Connected Systemes for IE, please visit:
http://go.3ds.com/ozVe

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