世界中の農業ビジネスで進化し続けるニーズに応えるために、複雑性がますます問題になってきています。
機械の技術進歩は、もはや機械の大きさや馬力に関連付けられるものではないと、ドイツに本社を構える世界的農業機械メーカー、CLAAS Groupの技術システム担当取締役Thomas Böck氏はいいます。
「今日、インテリジェントでエネルギー効率の高い機械が重視されるようになってきています。つまり、作業効率を上げながら運転コストを最小限に抑えられる機械です。農業機械のスマート化がますます進み、IoT(モノのインターネット)対応した、作業工程を自動的に管理する機械で、生産プロセス全体を通して効率性を向上させています」
農業事業者は生産性の向上と農作業のスピードアップのために最新テクノロジーの採用に非常に積極的であると、調査コンサルティング会社Market Research Futureの「Agriculture Equipment Market Research Report, Global Forecast to 2022(農業機械市場調査レポート、2022年までのグローバル予測)」の中で指摘されています。しかし、農業機械メーカーは原材料の価格変動の問題に直面し、コスト管理が難しくなっています。そのためMarket Research Futureは、メーカー各社が新しいテクノロジーとビジネスモデルを市場に導入できる、素早く効率的なプロセスを確立することを推奨しています。
CLAASのBöck氏は次のように述べています。「私たちは農業機械の開発と製造を革新的な方法で行わなければなりません。農業界が直面しているグローバルな問題に効果的に対応するには、プロセス、システム、ツールが革新的でなければなりません」
それを達成するためにCLAASでは、製品イノベーションを実現するためにあらゆる専門分野が利用できる単一のデジタル・プラットフォームを採用することで、社内の広範なナレッジとノウハウに迅速にアクセスできるようにし、可視性の高いコラボレーションを促進してインテリジェントなイノベーションを実現しています。
「イノベーションを成功させるためには、単一のプラットフォーム上でさまざまな専門分野を連携させることが欠かせなくなっています」
GREG GORBACH 氏
ARC ADVISORY GROUP デジタル化・IoT担当バイスプレジデント
この戦略は、CLAASのような農業機械メーカーだけでなく産業機械業界全体でも幅広く採用されていると、世界的なテクノロジー市場調査会社ARC Advisory Groupでデジタル化とIoTを担当するバイスプレジデント Greg Gorbach氏は語ります。「産業機械業界でイノベーションを成功させるためには、単一のプラットフォーム上でさまざまな専門分野を連携させることが欠かせなくなっています」
全体像の把握
Gorbach氏は次のように述べています。「エコシステム、データ、メンテナンス、カスタマー・エクスペリエンスなどの要件を満たす、より高性能で「つながる」産業機械が顧客から求められるようになる中、競争力のある新たな差別化要素が産業機械メーカーの課題になってきています。こうした新しい製品はますます高性能で複雑になり、メーカーは常に少なくとも一つ以上のインテリジェントなエコシステムに参加する必要に迫られています。このようなニーズに対応するには、製品とサービスのライフサイクルのあらゆる段階において、複数の分野、部門、顧客を含む関係者を巻き込む必要があるのです」
単一のプラットフォーム上ですべてを連携させることで、組織は抜本的なデジタル・トランスフォーメーションが進む市場での競争力を高め、ビジネスのスピードを大幅に加速させることができます。
Gorbach氏はさらに次のように述べています。「破壊的な革新技術が、今はまだ予想できない方法で、産業機械業界の期待とプロセスを変えていくことになるでしょう。分散されたシステムをつなげるだけでは不十分です」
必要とするコネクテッド・イノベーションを実現するには、社内部門からパートナーならびに顧客に至るまで、産業機械メーカーのあらゆる関係者が同じデータを使用し、同じ目標に向かってリアルタイムに連携できるプラットフォームが必要です。
Gorbach氏は次のように述べています。「こうした領域にきちんと目を向けることで、企業は変化の激しい時代に効率的なビジネスを進めることができ、統一された1つの企業、つまりインテリジェントなコネクテッド・エンタープライズとして行動できるようになります」CLAASは、まさにこの考え方を採用して、全社規模のプラットフォームを実装しました。
CLAASでデジタル製品エンジニアリング部門の責任者を務めるNico Michels氏は、次のように述べています。「私たちは、この戦略プラットフォームを、着想から生産、サービスに至るまで、エンジニアリングとデジタル化におけるすべての業務で使用しています」
Böck氏は次のように述べています。「どの拠点からでも、同じ製品やオブジェクト上で連携して作業を行うことができます。エンジニアリング部門だけでなく下流プロセスのあらゆる部門が、必要に応じて製品や特定のオブジェクトに同時にアクセスすることが可能です」
このプラットフォームの一つのメリットとして、複数の分野に影響を与える意思決定をすべて可視化できることが挙げられます。各分野のスペシャリストは、要件が競合したときにバランスを調節して最善の結果を得る解決策を連携しながら見つけることができます。
CLAASのCIOであるBernhard Schuchert氏は、次のように述べています。「製品情報の統一を図ることが重要です。すべての関係者が最新の設計データを使用する統合型ソリューションにアクセスすることで、データの重複がなくなり、情報の整備は一度だけでいいのです」
将来を見据えたアプローチ
単一プラットフォーム戦略の採用はCLAASのような業界をリードするメーカーの間では進んでいますが、大半の企業が未だ山積みの課題を抱えていると、プロフェッショナル・サービス・ネットワークのPwCが、「Global Digital Operations Study 2018(2018年グローバル・デジタル・オペレーション調査)」で警鐘を鳴らしています。
「インダストリー4.0によって、製造業は、わずか10年前には想像さえできなかった斬新な方法で急速に変化してきているものの、このオペレーション革命から真の競争力を得られるところまできている企業はほんの一部でしかありません。我々が『デジタル・チャンピオン』と呼ぶ、こうした企業は、単なる自動化とネットワーキングの枠にとどまらない、広範に及ぶ極めて革新的なビジョンでデジタル化をとらえているという点で注目に値します」
CLAASは、単一デジタル・プラットフォームを採用したことで、製品だけでなく事業全体を未来に向けて対応させることができます。
Böck氏は次のように述べています。「当社の農業機械を未来に向けて対応させるには、既存の機械に新しいテクノロジーを採用するか、現行のテクノロジーをアップグレードする必要があります。そうすることで、この先何年も機械の所有者に持続可能な付加価値を提供することができるのです。当社で開発している農業機械の設計データはすべて同じプラットフォーム上で格納、管理されているため、機械のライフサイクルを通して簡単に新しい機能を追加してお客様に提供することができます。新たなテクノロジーが登場するたびに新しい機械を開発する必要はありません。当社の対応は加速し、ソリューションの費用対効果が高まったことでお客様の満足度向上にもつながっています」
「今までのやり方を見直して再構築する機会に恵まれたので、プロセスの大幅な改善ができました。このプラットフォームがあれば、将来の準備は万全です」とMichels氏は述べています。
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