IE業界の企業では、どのようなことが大きな傾向となっていますか。
多様性に対する要求がここ数年ますます強くなっています。どの顧客も独特な機能やデザインを求めており、それがメーカーにとっては複雑性の増加につながっています。IE企業では、個々の製品それぞれの開発において、設計時間をかけすぎている傾向が見られます。顧客に提供する製品が独特のものだと、利幅の縮小とコストの増加を招き、最終的には利益が減少することになります。このような受注設計生産型のアプローチ方法によって生じる複雑性は、設計だけではなく、購買、品質管理などの関連業務においてもコスト高の要因となり、企業の潜在力にマイナスの影響を及ぼします。
IE企業が直面しているもう1つの課題は、顧客に設計の改善を提案したり、自社の機器モデルを使用するよう説得したりできるよう、顧客のプロセスに可能な限り早い段階で関与することです。こうすることによって、全関係者のリードタイムを短縮でき、顧客は、すべてを専用仕様にする場合よりコスト効果の高い価格提示を受けられるようになります。
これらのモジュールはあらかじめ定義されているため、IE企業は顧客の仕様決定プロセスの早い段階で提示でき、イノベーションと品質改善により多くの時間を費やせるようになります。競争力の観点から見ると、これは大きな前進です。モジュール化は、IE企業が新たなレベルに移行するための変革要因となります。
90%
モジュール式アーキテクチャを 開発することで、 MTS Systems Corporation社は 全体の部品種類数を 90%削減したのです。
モジュール化を検討するのに適さないのは、どのような企業でしょうか。
ワンオフから量産まで、メーカーの規模を問わずモジュール化のメリットを享受できます。例としては、1か所限りの発電所を建設するABB Power Systems社や、1つのモデルを10万台以上製造するWhirlpool社などが挙げられます。ただしモジュール化によって大きなメリットが得られる企業は、製品の品揃えの中で、一定レベルの複雑性が存在する企業や、イノベーションが行われる頻度が高い企業です。多くのIE企業はこのカテゴリーに当てはまるので、モジュール化の導入に最適な候補となります。
モジュール化のおかげで目覚ましい改善を遂げている企業の例は多数あります。例えば、自動車、航空宇宙、建設、生体医学関連の各業界向けに機械的試験装置を製造しているMTS Systems Corporation社では、油圧サーボ式ロードフレームの設計を行っていますが、このフレーム用のモジュール化アーキテクチャを開発することで、全体の部品種類数を90%削減したのです。以前は150の製品バリエーション(つまり、市場に提供する製品数が150)を製作するのに11,000種類の部品を必要としていましたが、わずか800種類の部品で10万を超える製品バリエーションを製作できるようになりました(よって市場カバレッジが大幅に拡大)。これ は、驚くべき設計効率です。
「モジュール化によって 大きなメリットが得られる企業は、 製品の品揃えの中で、 一定レベルの複雑性が存在する 企業や、イノベーションが 行われる頻度が高い企業です。」
Johan Källgren氏
Modular Management社パートナー
モジュール化が最近になって注目されるようになったのはなぜですか。過去に普及しなかったのはなぜでしょうか。
Volkswagen社を始めとした企業では、20年以上前からモジュール化が導入されていますが、モジュール化アーキテクチャの実現が戦略として広く受け入れられるようになったのは、ごく最近のことです。モジュール化のアプローチは目に見える成果をもたらすため、人々はこのアプローチへの信頼を強めています。それではなぜ、このアプローチが過去には普及しなかったのでしょうか。「モジュール化」は正しい方法で行われなければ、長く困難な課題になりかねないからです。企業は、自社のビジネスについて長期的な視点を持ち、多大な投資を行わなければなりません。モジュール化のメリットを最大限に引き出すためには、部門を超えて主要な人材をすべて関与させる必要があります。実施前の時点で、モジュール化を進めることを決断するためには、経営上の勇気と力強い経営陣が必要であり、メリットが目に見えるまで2年、あるいは3年待つ必要があります。
モジュール化を進めることを検討中の企業が、決定前に考慮しておくべきことは何ですか。モジュール化を成功させるために重要な要因は何だと思いますか。
企業はまず、将来の方向性と、それ を達成するうえでモジュール化をどのように役立てることができるかについて、非常に明確なビジョンを持たなければなりません。首脳陣は、サプライ・チェーン、研究開発、販売、経営層の各分野で、モジュール化の部門横断的な経済価値を把握し、モジュール化を中心とした現実的な戦略を策定する必要があります。モジュール化の決定は企業の最上層部が行うべきものであり、研究開発部門の手に委ねるべきではありません。研究開発部門はモジュールを設計することはできても、それを単独で定義することはできないからです。2番目の成功要因は、顧客について理解することです。技術的な視点、たとえば研究開発の視点でモジュール化を開始した場合、適切な商品を市場に届けることはできません。企業はアーキテクチャの正しい構築方法を理解していないと、間違った方向に導かれる可能性があります。
モジュール化を進めることを検討中のIEメーカーと話をする際に、指摘されている注意点は何でしょうか。
モジュール化への移行は困難を伴う可能性があります。経営管理者は、モジュール化を進める価値について理解すると同時に、このようなプログラムを実行するためのリソースを組織内で確保しておく必要があります。リソースを確保せずにプログラムを続行することは得策ではありません。
顧客とモジュラーソリューション・コンサルタントとの間に良好な協力関係を築くための基盤は何でしょうか。
コンサルティング・ファームは、モジュー ル化を導入した体制への移行を進める顧客企業をファシリテーターとしてサポートします。そのため、相互の信頼が欠かせません。また、役員レベルの支持を得ることが重要です。これにより、日常的に経営陣に情報を発信する声を確保できる他、日々疑問に答え、モジュール化プロジェクトの進捗に合わせて成果を示し、以後の段階に向けた基盤を築くことができます。こうした役員レベルの支持を得ることが、プロジェクトを失速させずに成功まで到達する助けとなります。協力関係の基盤は、コミットメント、支持、信頼の3語にまとめることができるでしょう。これらこそが持続可能な成功の秘訣なのです。モジュール式アーキテクチャを構築した企業は通常、競合他社と比べ、長期にわたり高い収益性を確保しています。
1990年代初め、ストックホルムのスウェーデン王立工科大学とIVF社*の専任研究チームが、 モジュール化が推進されている背景要因と、ソニーやホンダ、Scania社など多くの企業が製品設計、開発、 マーケティングの分野でどのようにモジュール化を用い、成果を上げているかについて調査を開始しました。 同チームは、この研究結果に基づき、モジュール化プロジェクトに体系的で効果的な方法で取り組み、 モジュール化を導入するためのワーキングモデルを構築しました。 このモデルと、モデルのテスト実績が、1996年に製品開発コンサルティング・ファームとして設立された Modular Management社の基礎となり、現在も同ファームの中核業務を構成しています。 Modular Management社は現在、スウェーデン、米国、およびアジアにオフィスを構えています。
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