COMPASS: CTBUHでのあなたの役割についてお聞かせください。
ANTONY WOOD氏(以下AW):2006年、シカゴに本拠を置くCTBUHの事務局長に就任して以来、当協議会の日々の運営に対する責任を負っています。それ以前の1991年から2001年までは、香港、バンコク、クアラルンプール、ジャカルタ、英国で建築士として開業し、その後2006年までは、英国のノッティンガム大学で建築学の准教授と講師を務めていました。
COMPASS: CTBUHのミッションについてご説明いただけますか。
AW: CTBUHは1969年、高層ビル関連の情報とベストプラクティスの共有を目的として設立されました。高層ビルと持続可能な都市に関する世界一の権威であるとともに、高層ビルと未来都市の構想、設計、建設、運営に焦点を絞った、専門職向けの一流のリソースです。米国、イタリア、中国に事務所を構えるほか、世界中に現地支部を置いています。当協議会の第一のミッションは、高層ビル関連の利用可能な最新の知識の交換を、出版や調査、年次の国際会議を通じて世界中で促進することです。
COMPASS: なぜCTBUHに惹かれたのですか。
AW: 超高層ビルの建設が世界的に勢い付き、北米以外でも急増し始めた時期に、このような国際的に高く評価された組織を任され、その影響力と活動範囲のさらなる拡大を目指すというのは、非常に素晴らしい機会でした。
COMPASS: CTBUHの職員が組織のミッションにどのように貢献しているのか、少しお話いただけますか。
AW: CTBUHが3カ国に構える3つの事務所、すなわちシカゴの世界本部兼学術室、上海のアジア本部、イタリアのベネチアにある調査室には、勤勉な職員ばかりが見事に集まっています。どの職員もみな、知識の普及や世界中のイベントの企画、調査報告書の作成などを通じて、多種多様な領域で各自CTBUHのミッションに貢献しています。
COMPASS: 都市居住地を後世まで繁栄させるためには、どのような持続可能なイノベーションを取り入れる必要があるのでしょうか。また、こうした状況において、超高層ビルはどのような役割を果たす可能性があるのでしょうか。
AW: 真に持続可能な都市居住地は、現代都市に暮らす人間のエクスペリエンスを最大限に高めるように設計されなければなりません。これは、特定の場所が属する地域の文化的アイデンティティーを、設計を通じて尊重することだけでなく、ある空間の社会的・物理的側面を改善させるような機能を盛り込んで、都市の居住性の向上を図ることも意味します。緑地の拡大を促すと同時にエネルギー消費と廃棄物を削減するイノベーションは、きわめて重要です。
超高層ビルは都市の延長として、このような特性を垂直型の世界で発揮しなければなりません。商業的利益よりも住みやすさを優先するのが最善のビルです。緑や、社交のための共有スペース、家族にやさしい機能を提供するビルは、持続可能な都市の未来を体現しています。また、2050年までにさらに25億人を都市に収容する必要があるという状況で、高層ビルを利用してコンパクトな環境により多くの人を収めれば、空いた土地が都市に浸食される度合いを低下させることもできます。
COMPASS: そうしたことは都市の接続性にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
AW: 都市のさまざまな層を通じて高層ビル同士を接続することが重要です。理論的には、物理的な都市インフラがビルの内部にまで続き、都市生活の日々の流れが多次元の平面に送り込まれることで、そこが都市の延長になります。これは基本的に、高層ビルが公共領域の一部となって、学校や病院、公園といった都市の機能を完備するようになり、それらの機能すべてがスカイブリッジで接続されることを意味します。その結果、地表レベルのインフラの必要性が減って物理的空間が増えることで、都市人口の急増に対応できるようになるでしょう。
COMPASS: そのようなエコシステムには、所有者、建築士、エンジニア、請負業者、下請業者、ファブリケーター、そして市民の間のさまざまな関係が必要とされるのでしょうか。
AW: こうした目標の実現に向かっては、かなり前進してはいますが、業界自体が高層ビルの商業的な成果ばかりを重視する姿勢を改め、人々の生活を向上させる場所を生み出すことにいっそう注力する必要があります。たとえば、新しいタイプの高層レベルのオープンな緑地やその他の文化・レジャー空間を高密度な都市開発に盛り込めば、利益は必ずしも向上するとは限りませんが、都市に暮らす人の生活の質が高まることは間違いありません。
COMPASS: 仮想世界――つまりシミュレーションとモデリング――は、より人にやさしい高層ビルを業界が作り出すための助けになるでしょうか。
AW: もちろんです。現に私たちは、高層ビル分野における仮想テクノロジーの新たな役割とその拡大を強調すべく、10月20~25日にドバイとアブダビで開催される2018年の中東会議で、「スマート高層ビル・シンポジウム」を実施する予定です。超高層ビルの規模と都市への影響を考慮すると、この業界におけるスマートテクノロジーの可能性は莫大であると私たちは考えています。たとえば3Dモデリングは、高層ビルの設計、評価、建築の方法を一変させようとしています。建築士にとって、顧客にもたらされると予想されるエクスペリエンスを初期設計の段階で評価できるのは、業務上きわめて貴重なことになりつつあるのです
「持続可能な都市居住地は、現代都市に暮らす人間のエクスペリエンスを最大限に高めるように設計されなければなりません」
ANTONY WOOD氏
CTBUH事務局長
COMPASS: 高層ビルの創造という分野におけるデジタル・シミュレーションの成長について、どのように予想されますか。
AW: この分野やあらゆる業界で製品ライフサイクル管理と3Dシミュレーションの役割が急速に拡大していることから、そうしたサービスに対する世界的なニーズは今後10年間で指数関数的に増加するものと予想しています。3Dシミュレーション、仮想現実、仮想世界の進歩によって、高層ビルの構想の方法は変化しつつあります。商業的な観点で言えば、このようなイノベーションによって建築士は表現の正確性を高めることができ、その結果、クライアントとの関係とステークホルダーの認識を改善すると同時に、設計を何度も繰り返す必要性を低減することができるのです。
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