ライフ・サイエンス

シミュレーションの将来

Lisa Roner
26 October 2012

シカゴ大学のOffice of the Vice President for Research and National Laboratories(研究部門および国立研究所担当の副学長事務局)でリサーチ・コンピューティング担当ディレクターを務めるHakizumwami Birali Runesha氏は、ハイ・パフォーマンス・コンピューティング(HPC)と科学的ソフトウェアの開発において18年以上の経験を持ち、HPCに熱心に取り組んでいます。土木構造工学分野の教育を受けたRunesha氏は、ミネソタ大学Supercomputing InstituteでScientific Computing and Applications担当ディレクターとして勤務した時期に、ライフ・サイエンス分野の課題にシミュレーション技術とHPCを適用することに強い関心を持つようになりました。

Compass:  今日、シミュレーションとHPCはライフ・サイエンス業界の設計や製品開発にどのような影響を及ぼしていますか?

H.B.RUNESHA: 私は5年ほど前から、HPCがライフ・サイエンス分野、特に医療機器の設計において果たしうる役割に関心を持ってきました。ミネソタ州には医療技術関係の製品を製造する企業が多く、ミネソタ大学時代の一部の同僚と共に、医療機器の設計と最適化にシミュレーション・ベースの設計を適用できるというビジョンをもちました。コンピュータ・ハードウェアや、MRI(核磁気共鳴画像法)を始めとする画像処理技術が発展を遂げたおかげで、3Dでの再現が容易になり、患者個々人に対応した、医療機器の設計改善への道が広がります。シミュレーションを使用すると、プロトタイプを作成する前に、何千回もパラメーター検証を行って、設計を改良できます。土木構造工学の教育を受けた私にとって、航空宇宙産業と自動車産業の企業がそれぞれ航空機と自動車の設計にシミュレーションを利用し、あれだけ多くの成果を上げていることは、注目に値しました。ライフ・サイエンスにも、同じ原理が応用できます。今後は、医療機器の設計と最適化に関しても、製品開発の段階でシミュレーションとHPCが重要な役割を果たすようになると予想されます。個人的には、ライフ・サイエンス製品設計のあらゆる面で、シミュレーションが一定の役割を担うようになると考えています。 

アメリカ食品医薬品局(FDA)が進める「Innovation Pathway」と呼ばれるプログラムなど、高品質で安全な製品をすばやく患者に提供できるようにするための取り組みにおいて、シミュレーションはどのような役割を果たすでしょうか。

H.B.R:  製品の承認プロセス全体の完了には非常に長い時間がかかります。この時間を短縮できれば、今よりも格段、かつすばやく市場に製品を投入できるようになりますが、そうでない場合、他国に対する競争力を確実に失うことになります。アルゴリズム開発とコンピュータ・ハードウェアの発展によって、高解像度シミュレーションで正確な結果を出すことができるようになりました。数多くのモデルの妥当性を確認するためにやらなければならないことはまだありますが、承認プロセスだけみても、検証済みツールを使用して、できることが多くあります。たとえば、実験によるアプローチだけでなくシミュレーションも取り入れることによって、申請プロセスの改善を模索できます。今やコンピュータの利用は、実験と理論に次いで科学を支える3本柱の1つとして、ゆるぎない地位を確立しつつあります。業界の企業が、FDAが求める条件に準拠した基本的な枠組みに合意できれば、申請プロセスの簡略化に着手できます。ただし、ここで大きな課題となるのが変化を容易に受け入れない企業文化です。どのようにして、これらの企業にHPCの利用を始めさせるかが今後の課題です。しかし、それがもたらす可能性は非常に大きなものです。

シミュレーションとイノベーションはどのような関係にあるとお考えですか。

H.B.R:  私たちは、ブレインストーミングや試験利用など、ミスをしても構わない手段を与えられると、より独創性を発揮します。新しいアイデアを思い付くたびにエンジニアに、100万ドルの実験予算が与えられるわけではありません。シミュレーション・ソフトウェアを使えば、そのようなコストをかけずにアイデアが合理的であるかどうかをテストできます。仮説に関わる疑問に答えること、それがイノベーションの真髄です。試行錯誤とテストを重ね、大胆な仮説を立てることで、より多くの疑問点を見付け、経験を積んでいく。こうした過程が非常に重要であると考えます。

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