物流最適化にもデジタルを

デジタル・プラットフォームにより無駄のない持続可能な顧客サービスが可能に

Rebecca Lambert
7 July 2020

オランダJan de Rijk Logistics社の元CEOであるSebastiaan Scholte氏は、物流業界の効率化とサステナビリティの向上において、デジタル化が果たす役割はますます大きくなると見ています。COMPASSマガジンでは同業界の主な課題とチャンスについて、Scholte氏にお話を伺いました。

COMPASS編集部:どのようにして物流業界に入りましたか。どの点に魅力を感じますか。

Sebastiaan Scholte氏:私はメキシコでインターンシップを経験したことからこの業界が大変好きになり、後にAeromexpress社(Aeroméxico航空、Mexicana航空、Aeroperuの貨物管理を行う会社)で働くようになりました。その後、世界最大手の貨物航空会社であるCargolux Airlines International社で、中南米の販売、オペレーション、財務担当の地域マネジャーを務めました。同社に移って8年後の2010年、Jan de Rijk Logistics社で働く機会を得ました。この業界が好きな理由は、私たちの日々の生活に非常に重要であることです。物流なしには何一つ物が動きません。

現在、物流セクターで最も影響の大きなトレンドは何ですか。

Scholte氏:デジタル化と自動化が重要です。もちろん、トラックや倉庫などの物を中心とした資本集約的企業へのニーズもなくなりはしないでしょう。しかし、これからのリーダーは、しかるべきデジタル・プラットフォームを利用しなければなりません。たとえば、世界中の輸送の流れをその利用可能な全キャパシティとともにすべて見通すことができれば、オペレーションを最適化することで稼働中のトラックを20%減らすことができます。その理由は、現在、多くのトラックが積載率100%で稼働しているわけではないからです。それを知ることもなく、いくつかのトラックが同じ方向に向かって輸送することがあります。たとえば、各トラックが最大積載重量の70%しか荷を積んでいないといった具合です。

可視性が高まると、私たちは実に有益な助言をすることができます。たとえば顧客のところに行って、当社が流れを分析した結果、水曜日は午後3時ではなく午後6時まで集荷を待ってもらえるならば、他の荷物と一緒に運ぶことができ、料金も割安に済むと顧客に伝えることができます。

将来はそのようになると思います。しかし、それにはスマートなプラットフォームが必要です。

デジタル・プラットフォームは、ある輸送手段から別の輸送手段への移行にインサイトをもたらし、物流企業がどのように効率を高められるかを明らかにします。(画像 © Jan de Rijk)

現在、物流業界の企業が直面している最大の課題は何だと思いますか。

Scholte氏:人材です。欧米では人口の高齢化が進んでおり、物流業界は若い人々が働きたいと思う最も魅力的な業界とは言えません。ドライバーから倉庫の従業員に至るまで、深刻な人材不足に苦戦しています。自動化が進めば、その一部は解消されるかもしれません。

しかし、今はまだたくさんのドライバーが必要です。欧州全体でおそらく、30万人から40万人のドライバーが不足しています。

どんな課題にもチャンスが隠れていると言います。この場合のチャンスはどこにあるのでしょうか。

Scholte氏:第1に自動化が挙げられます。プロセスを効率化し、少ない資源でより多くのことを達成できるようになります。企業は人員不足を埋め合わせるために、テクノロジー・ソリューションをいっそう活用せざるをえなくなるでしょう。

人材を引きつける必要もあります。それには、よい雇用主でなければなりません。給料だけではなく、労働条件や研修なども重要です。これは企業文化の問題です。人は、自分が尊重され、努力を認められていると感じたいものです。従業員の定着率は大きな問題です。それとともに当然ながら、自動運転が実現したら、ドライバーが他の職務をこなせるように一丸となって研修に取り組まなければなりません。

Jan de Rijk Logistics社では、「自動化とスマート・システムが自社を差別化する」と語っていましたね。これらのテクノロジーにより、どのように差別化を達成しましたか。

Scholte氏:11月の木曜日は11月の月曜日と同じではありません。また、晴れの日の木曜日と雨の日の木曜日も異なります。ですから、これらの全ビッグデータを入手して組み合わせ、予測分析を行うならば、事前によりよい計画を立て、顧客に対して定刻どおりのよりよいサービスをより効率的に提供することができます。

Jan de Rijk Logistics社では1日に1,000台のトラックを稼働させていました。その最適化にはスマート・システムが必要であり、それにより、オペレーション・エクセレンスが実現でき、顧客とのやり取りの改善に役立っています。システム間の統合、予約システム、定刻どおりの配達、デジタル・フィードバック、スマートレポーティングなど、すべてが大きな差別化要因であり、顧客に対していっそうオープンで透明性ある企業となることができます。

これらのトレンドは、今後5年から10年でどれほどの変化をこの業界にもたらすでしょうか。

Scholte氏:物流と世界貿易は密接な相関関係にあると思います。ますます新しいテクノロジーが使用されるようになるのと同様に、デジタル化は非常に重要です。自動運転や倉庫でのロボットの使用、無人飛行機など、これらすべてが実現しつつあることを考えてみてください。

しかし、多くのトレンドや過大な期待がある一方で、当面は企業間取引の流れが続くことも過小評価してはなりません。したがって、引き続き機敏さを保つと同時に、変化の速度が同じレベルで進むことはないし、加速し続けていくこともないと認識しておかなければなりません。

この20年にわたりSebastiaan Scholte氏は、貨物部門での勤務を経て欧州の運輸会社であるJan de Rijk Logistics社のCEOとなり、International Air Cargo AssociationおよびCool Chain Associationを率いてきました。現在はCHAMPとWinmoreという2社のIT物流ソリューション・プロバイダーの顧問を務め、eラーニング企業IMCのアドバイザーでもあり、航空貨物業界のキャリアの宣伝にも努めています。

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