Marie-claude pietragalla

動きの芸術

Sabrina Khouchane
26 October 2013

マリー=クロード・ピエトラガラは、踊りと振り付けの世界を象徴する人物の 1 人です。ピエトラガラは、驚嘆すべきダンサー、ジュリアン・ドゥルオとともに、「テアトル ドゥ コール(身体劇場)」の振り付けを実験、探求するための舞台装置として設計された独特な世界を創造してきました。現代社会からインスピレーションを引き出す同時代のアーティストでありながら、過去と現在の振付を柔軟に取り入れ融合させ動きの芸術を探求する、ピエトラガラ氏にお話を伺いました。

Compass: アーティストになった決定的な理由は何ですか。

マリー=クロード・ピエトラガラ(以下MCP):子供のころはとても恥ずかしがりやでしたが、パリ・オペラ座の舞台裏を紹介したテレビ番組を見たときに、自分が進むべき道がはっきりしました。生きたパフォーマンスとしての踊りは、それまでとは違う、身体を使うコミュニケーションを私に教えてくれました。特に魅了されているのは、その瞬間を生きているという実感と、限界を越えて自分の肉体を動かすという考えです。また、踊りはさまざまな芸術を混在させることができます。音楽、演劇、視覚芸術に加え、今ではデジタルアートも取り入れられます。人間的な要素もきわめて重要で、ステージに立った瞬間に、観客との関係をはっきりと実感できるのです。

今の地歩を築くまでに、どのような課題を克服してきましたか。

MCP: 真の課題は、自分自身に課しています。目標や理想を持ち、それに向けて努力するようにしています。パリ・オペラ座では認められたアーティストとしての安心感を味わいました。

その後、すべてを後にして、新しいアイディアを常に生み出したいという欲求から、自由に創作できる新しい世界を構築する賭けにでました。子供のような活発な好奇心を持ち続け、自分の努力を客観的に見る必要があります。踊りは動きがすべてです。絶え間ない動きの中にいるわけですから、どのような動きをしているのかを常に問いかけます。何についても確実なことなどありはしない、何かを伝え合い続けることが常に必要なのだと私は信じています。そうしなければ、創造力は死に絶えてしまいます。

新しい作品の踊りや振り付けを披露するときには、観客にどのようなエクスペリエンスを得て欲しいと考えていますか。

MCP: 踊りは、社会的な区分にかかわりなく、幅広く多様な観客に開かれたものであるべきです。踊りを積極的に浸透させる必要があります。踊りには、ステージで演じられる物語を越えて、観客がアーティストから伝えられるエネルギーを感じる感覚的な要素が存在します。踊りは、単なる分析の対象ではなく、多くは直感的なものです。

「時々の時代背景や最新のテクノロジーを取り入れて、新しいエクスペリエンスと生きている瞬間を持てることが、興味をかき立てるのです。」

マリー=クロード・ピエトラガラ氏
ダンサー兼振付家

新しい振り付けを作るときには何からインスピレーションを得ていますか。

MCP: インスピレーションの源はとても多様です。時事的な話題や歴史資料である場合もあれば、著名人、文学、絵画、音楽、映画などの場合もあります。(劇作家の)ウジェーヌ・イヨネスコは、アーティストが舞台などに立っているのは、疑問を投げかけるためであって、答えを与えるためではないと語りました。アーチストは、観客が芸術作品を自分の流儀で経験し、自分で結論を引き出すようにしなければなりません。『Mr&Mrs Dream』では、それを実践しています。劇場では予期しない要素が提供されるだけでなく、夢と想像力が息づきます。観客は各自、自分が見たいものを見るのです。たとえば、北京でわれわれの『Marco Polo』という作品のプレビューが上演されたときには、文化的な差異のため、振り付けは中国の規準で解釈され、こちらが考えていたのとはまったく異なるメッセージが観客に伝わりました。時々の時代背景や最新のテクノロジーを取り入れて、新しいエクスペリエンスを持てることが、興味をかき立てるのです。

最新のテクノロジーは、作品を構成する重要な要素になっていますか。

MCP: ええ、それが作品の展開を左右するので重要です。たとえば、『Marco Polo』でアニメーション画像を取り入れたときは、ファンタジーの世界で踊ることになりました。これが、さらに先進的なテクノロジー、つまり3Dを試してみたいと思うきっかけになりました。それは、人間の関係は、画像の中ではどのように見えるか、どう歪めることができるか、あるいは想像上の関係や超現実的な関係になるかという着想の、自然な延長線上にあります。踊り以外の芸術形式を踊りに反映させる必要があります。芸術の各分野とテクノロジーを共存させることで、着想や物語、振り付け、イベントが形になります。21世紀のアーティストは、テクノロジーとともに生き、それを利用して成長します。テクノロジーには、わたしたちをパフォーマンスとイノベーションの競争に導く、上昇する渦巻きのような性質があります。新しい作品の振り付けを作るときには、すばらしい手段となってくれます。

Related resources