Marine & offshore

変革の波

Lisa Roner
25 April 2013

1 min read

世界人口の増加とともに、食料、水、天然資源(石油、ガス、鉱物など)に対する需要も高まっています。海洋には、採掘されるのを待つほぼ手つかずの資源があり、船舶・海洋(M&O)業界は、イノベーションと、新たな環境上の視点に基づいた資源開発を行っています。

人口増加、工業化の拡大、限られたエネルギー資源と鉱物資源をめぐる競争の激化など、世界にはさまざまな問題があふれています。多くの場所で新鮮な水や必要な食料が不足し、いたるところでクリーンな環境を渇望する声が上がっています。

近年の世界的な不況による経済的苦況にもかかわらず、造船、漁業、国際輸送、海洋採鉱、洋上でのエネルギー生産といった各分野で専門技術を持つ船舶・海洋業界は、いまだ十分に開発されていない有望な資源を人々が利用できるようにするという特別な立場にあります。そうした資源が眠っているのは、地球の面積の70%を占める海の底です。(米国海洋大気庁は、海底の95%が未探査としています。)

豊饒の海

世界の食料製品とエネルギーの90%は船舶で輸送されています。Lori Ann LaRocco氏は近著『Dynasties of the Sea: The Shipowners and Financiers Who Expanded the Era of Free Trade』の中で、「海運によって、事実上すべての場所で生活水準が向上しています。製品や日用品が、最も効率良く生産される場所から最も利益を生む形で消費される場所へと定期輸送されています」と述べています。

しかし海の価値は、海上輸送にとどまるものではありません。大きな収益を生みながら、世界が抱える多くの問題の解決にも貢献できる、というのが海の真価です。グリーンピース・インターナショナルの元事務局長Thilo Bode氏は「海は、地球に残された最後の広大な未開の地で、我々はみな、存在そのものを海に依存しています」と述べています。作家のClyde W. Burleson氏も著書『Deep Challenge: Our Quest for Energy Beneath the Sea』で、「海には人類の未来があり、海底には膨大な鉱物資源が眠っています」と記述しています。

90%

世界の食料製品とエネルギーの90%は船舶で輸送されています。

世界各地で、海洋、洋上への関心が高まり、海の持つ可能性を理解しようという試みが始まっています。そのとき活用されるのが、安全性の高い船舶と、貨物船輸送、海底探査、海底資源の採掘を環境にやさしい手段で効率的に行う洋上技術です。船舶・海洋業界においても、安全な海上掘削技術や革新的なエネルギー生産プロセスを駆使して、新しいエネルギー資源を求める世界の声に応える取り組みが進んでいます。

環境にやさしく、クリーンに

船舶からの硫黄酸化物や二酸化炭素の排出量を削減する提案が出されています。海上輸送をさらに持続可能なものにするには、そうした提案や安全性、環境に関する規制の変更に合わせて既存の船舶を改良し、環境への配慮を念頭に置いて設計された、まったく新しいタイプの船舶を建造する必要があるでしょう。そうした動きの目覚ましい例の一つは、デンマークの造船会社Maersk社が建造中の新コンテナ船Triple-Eです。

Triple-Eという名前は、建造時の重要目標であるEconomy of scale(規模の経済)、Energy efficiency(燃費効率)、Environmental improvement(環境性能)の「3つのE」から付けられました。Triple-Eは、その大きさと燃費効率において間違いなく新しい業界基準を作ることになる船舶です。全長400m、幅59m、高さ73mと世界最大で、Triple-E以前では世界最大のコンテナ船だったEmma Maerskよりもコンテナ積載数が2,500増えて18,000 TEU(20フィートコンテナ単位)となり、積載能力が16%増加します。
しかしこれほど巨大でありながら、韓国の造船会社Daewoo社が建造中のTriple-Eは、運航効率を向上するように設計されています。Maersk社によれば、コンテナあたりの二酸化炭素排出量が、Emma Maerskと比較した場合には20%、アジアとヨーロッパの間で運航中の一般的なコンテナ船と比較した場合は50%減少します。さらに、コンテナあたりの燃費消費量は、今後数年間に運航開始予定の、13,100 TEUのどのコンテナ船よりも約35%少なくてすみます。

Maersk Line社の前CEO、Eivind Kolding氏は「世界最大の積載能力と燃費効率を誇るTriple-Eは、ビジネスの面でも環境の面でも、お客様の期待に応える力をわが社に与え、市場で優位性を発揮できる立場にわが社を導くことでしょう」と語ります。

構想中の新しいアイデア

経済協力開発機構(OECD)のディレクターで国際未来プログラム(International Futures program)を担当するBarrie Stevens氏は、これからの海洋産業では特殊用途の船舶や建造物が重要になると予想しています。深海掘削船からリグ船、洋上供給船、耐氷船、海洋エネルギー装置にいたるまで、新しいタイプのイノベーションが未来の海洋経済には必要だと同氏は主張しています。

フランスを拠点とするEcoceane社の斬新で画期的な油汚染処理船は、そうしたイノベーションの格好の例です。従来の油汚染処理船は、75%の水と25%の炭化水素を回収して、後行程で分離しますが、Ecoceane社のシステムは、油から水をすぐに分離してエマルションを防ぎます。たとえば同社のCatamar船は、海上で1時間に100m3以上の炭化水素を回収できます。これは従来の海洋汚染処理船の約10倍に相当する能力です。

Maersk社新コンテナ船Triple-Eの名前は、Economy of scale(規模の経済)、Energy efficiency(燃費効率)、Environmental improvement(環境性能)の「3つのE」から付けられました。(写真:Maersk社提供)

Shell社がオーストラリア沖に設置を計画しているPreludeという浮体式液化天然ガス(FLNG)施設も、特殊な技術の一例です。LNGの取引量は2035年までに倍増すると予測されています。Shell社によれば、Preludeを使うことによって他の方法ではコストがかかりすぎたり、技術的に困難を伴ったりする洋上ガス田開発が、可能になるということです。

全長488m、幅74mのPreludeは、世界最大の浮体式洋上施設です。この巨大なプラットフォームの上で、採取した天然ガスをマイナス162°Cにまで冷却して体積を600分の1に凝縮し、世界中の顧客に向けて輸送できるようにします。外航航行輸送船にLNGと他の液状副産物(凝縮液とLPG)を積み込んで、市場に届ける予定です。本格稼動すれば、年間3,600万トン以上のLNGを生産します。

Shell社のプロジェクトおよびテクノロジー担当ディレクターであるMatthias Bichsel氏は次のように述べています。「FLNGは容易に実現できるものではありません。当社のLNG、洋上、深海、海洋技術、そして数々の大規模プロジェクトでの成功を通じ実証された能力によって、我々はFLNGの成功の前提となる企業力を持ち合わせた比類ないポジションを確立しています」

洋上のイノベーション

特に洋上でのエネルギー生産においては、さまざまなイノベーションの事例が業界全体で見られます。

海洋再生可能エネルギーの分野では、エジンバラを拠点とするPelamis Wave Power社とスウェーデンのMinesto社が、イノベーションの先駆者です。

Pelamis Wave Power社は、洋上で使用する画期的な波エネルギー変換装置(名称Pelamis)を開発しました。Pelamisは複数の円筒を滑節で接続した連接構造をしており、装置の半分は水面下に沈んでいます。波がPelamisを揺り動かすと、水撃ポンプの原理によってPelamisの動きを電気に変えて発電する仕組みになっています。Scottish Power社やフランス電力公社(Électricité de France)などのエネルギー供給企業も同社の技術を使用しています。
一方Minesto社は、潮流のエネルギーを利用します。Saab社からのスピンオフ企業である同社は現在、低速の潮流を利用してエネルギーを作り出す「海中凧」を開発中です。Minesto社の開発マネージャーであるArne Quappen氏は、同社の革新的な技術を利用すれば、既存の技術ではコスト面で採算が取れない場所にもプラントを設置し、運用できると述べています。

36,122平方メートル

全長488m、幅74mの威容を誇るPrelude(Shell社)は、年間3,600万トン以上のLNGを生産する世界最大の浮体式洋上施設です。

従来から石油・ガス資源の洋上生産に従事する企業も、環境保護を重視したイノベーションを実践しています。英国のTechnip Umbilical Systems社は、油田やガス田と船舶、洋上プラットフォーム、陸上施設をつなぐ深海ライフラインを提供する会社です。海中という過酷な条件の中で資源を保護する同社の製品は、厳しい要件を常に満たさなければなりません。一般的な供給ケーブルの設計寿命は25年ですが、環境への貢献を誓うTechnip Umbilical Systems社の製品は、平均よりもはるかに高い基準をクリアしています。「25年の設計寿命の供給ケーブルを、疲労寿命に関しては250年となるように設計しました。オフショアの供給ケーブルに破損があってはなりませんから」と同社のR&Dシニア・エンジニアのIan Probyn氏は述べています。

新たな時代

前述のような技術的な貢献や創造性が発揮された例が、船舶・海洋業界では数多く見られます。課題が多いということは、その分だけチャンスがあることを意味します。経済的にも環境的にも、資源の輸送から深海での掘削まで、船舶・海洋業界には、あらゆる人々にとって持続可能で豊かな世界を作り出せる可能性があり、その可能性は、海そのものと同様に、無限に広がっています。

Related resources

Subscribe

Register here to receive a monthly update on our newest content.