Natural resources

鉱業の未来を見据えて: 天然資源分野における持続可能な イノベーションの重要性を訴えるAnglo American社CEO

Tony Velocci
19 October 2014

世界の鉱業をリードするAnglo American plc社の最高経営責任者を務 めるMark Cutifani氏は、テクノロジーと イノベーションを通じて、鉱業が現代生 活にこれまで以上に大きく貢献するこ とになると考えています。

COMPASS:世界が繁栄するうえでの鉱業の 重要性についてどのようにお考えですか。

MARK CUTIFANI氏(以下MC):鉱業なしに、 現代の生活は成り立ちません。あなたが手に しいるスマートフォンには、76種類も鉱物 が使われています。経済面から見ると、鉱業 は世界の国内総生産(GDP)の8%から10%を 占めています。私たちが生産している製品と、 それが他の産業に与える影響の大きさを考 慮すると、鉱業は直接または間接的に世界経 済の45%を動かしていることになるのです。

他方、鉱業は世界屈指の環境に優しい産業 の一つです。私たちは、ただの水を飲料にし、 空気を清浄化するための製品を生産してい ます。私たちが掘り返しているのは、地表の 1%足らず。排出している炭素ガスの量は、世 界全体の2.5%未満です。そして、私たちが生 産する化学肥料のおかげで、本来必要な土 地の半分で世界の食糧需要を満たす生産量 することができます。

COMPASS:地球の資源が枯渇しつつあると いう不安は感じていますか。

MC:過去5,000年間のテクノロジーの進歩 は、三つの点で鉱業を支えてきました。第一 に、より効率的に資源を抽出できるようにな りました。その結果、グレードが低く質の悪い 資源も抽出できるのです。世界の資源は枯渇 とはかけ離れた状態にあります。 第二に、材料科学の進歩により、100年前に 比べても大幅に少ない量の金属を使って同 じ結果を出せるようになりました。つまり、1人当たりの鉱物資源の消費量が減ったという ことです。たとえば、一部の用途では十中 八九、今ほど鉄鉱石を使わずに済むようにな るでしょう。なぜなら、同じニーズを満たすことのできる材料がほかにも見付かると思われるからです。

「他の業界の仲間から 学ぶべきことはたくさんあります。」

MARK CUTIFANI 氏
ANGLO AMERICAN PLC 社 最高経営責任者

第三に、多くの在庫を抱える中、テクノロジー が急速に進展しているという点です。未来の ことは分かりません。100年後には、今日では 想像もつかないようなテクノロジーを使って 材料を調達できるようになっているでしょう。 ひょっとして月で採掘している可能性すらあり ます。誰があり得ないと言えるでしょう。

COMPASS:あなたは、ご自身が「飽くなきイ ノベーター」と呼ぶ他業界から鉱業界は学ぶ 必要があると、かなりはっきりと発言してきまし た。鉱業はディスクリート産業から何を学ぶこ とができるのでしょうか。

MC:製造業界は過去70年から100年にわた り、イノベーション力、基本プロセスの運用、 そして市場へ迅速な対応が競争優位性を左 右する環境に置かれてきました。この三つの すべての面で、他の業界の人々から学ぶべき ことはたくさんあります。

COMPASS:鉱業界が革新性を高めるために 用いる必要があると思われるスキルは具体的 にありますか。 

MC:学ぶべきことの多い領域は三つ存在し ます。一つ目は、革新性を高めるための方法 を概念化しモデル化することです。ダイナミッ クな環境で効果を高めるために役立つシナリ オをモデル化すれば、いかにイノベーション を行うべきかを理解するための大きな助け になるでしょう。二つ目は、トヨタの経営手法 が例示しているように、従業員が生み出した アイデアをプロセスに組み込むことです。そし て最後に、顧客と株主のために製品からより 多くの価値を生み出すことができるように、 処理技術を改善する必要があります。以上の 三つは、私が思うに、鉱業界が他の業界から 学ぶべきことの多い領域です。

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