コネクテッド カンパニー

企業は機械的アプローチを捨て、 有機体のように行動すべき時代に

Dave Gray 著
26 October 2013

Dave Gray氏は、著述業のかたわら、経営コンサルタントとして企業と協力し、 企業が将来の目標を実現するための方策を立案しています。 著書には、『The Connected Company』(Thomas Vander Wal氏との共著)や 『Gamestorming:A Playbook for Innovators,Rulebreakers and Changemakers』 (Sunni Brown氏およびJames Macanufo氏との共著)などがあります。 (撮影©MichelleMilla)

私たちは歴史的に、機械を設計するように会社を設計してきました。会社には一定の機能を実行させる必要があるため、その機能を実行するように企業を設計し、構築するからです。しかし機械の場合、目的をいったん設定すると、新しい状況に合わせる手段が備わってないため、陳腐化していきます。

今日の企業が急速な変化に対応するという課題に取り組んでいる状況を鑑みると、機械に倣ったアプローチで数十年間成功してきた企業が、世界の主な株価指数の構成銘柄から外れる傾向が急速に広がってきたのも当然です。急激な変化の時代に生き残り、繁栄を謳歌続けるためには、有機体のように状況に適応することができる企業が求められています。

有機体は、「学習する」という点が機械とは決定的に異なります。学習は創造的なプロセスであって、機械的なものではありません。現在の企業を機械として捉えることをやめ、生物のように学習して成長する、適応性のある複雑なシステムだと考えるようにしたらどうでしょう。その例として、都市を挙げることができます。

都市は有機体ではありませんが、そのふるまいは機械よりも生物に似ています。確かに都市には、その計画や管理を担う人たちはいますが、市民活動を統率しない点で企業とは異なります。適切な管理が行われている都市では、幅広い活動を実施するためのインフラが提供されます。その結果、都市の生産性は、企業の計画、管理体制のそれを上回ります。企業では、人を増やせば生産性は低下しますが、都市では、人を増やせば生産性が高まります。2006 年にフィラデルフィア連邦準備銀行が刊行した報告書『Urban Density and the Rate of Invention』では、地域の労働人口が 2 倍になると発明件数は 20% 増加すると指摘されています。

長寿企業

企業は都市のように繁栄することができるのでしょうか。1980年代の初めに、Shell Oil 社は 100 年以上存続してきた企業に関する調査を外部機関に委託しました。こうした企業には、「意思決定の権限が分散されている」、「価値観が強く共有されている」、「外の世界に絶え間なく意識を向けている」といった大都市との共通点が多数見つかります。このような性質が備わっていれば、容易にチャンスを見きわめられ、それをすばやく活かすことができます。つまり、長寿企業は企業目的と顧客に深くつながっており、従業員には環境が変化したときに学習、適応を摸索して、行動を可能とする幅広い自由が与えられていたのです。

つながる時代

学ぶことができなければ適応することもできず、試す自由がなければ学べません。今もなお、試して学ぶことが許されていない硬直化した方針や手続きで従業員を縛り付ける企業が多すぎます。今日のビジネス環境は不透明で、そこでは種々さまざまのことが起きます。どのような行動が優れた業績につながるかを事前に知るのは不可能です。「コネクテッド カンパニー」は、従業員が自由に決定を下せるようにすることで、学習と行動を迅速化します。競合他社がリスクを分析している間に、コネクテッド カンパニーはチャンスをつかみ取ります。また、他社が孤立して業務を行っている間に可能性に満ちたネットワークにつながり、その影響力を拡大します。周囲が計画を立てているときに行動するからです。つながった顧客たちはすでに、工業化時代の分業が進んだ企業が提供できる範囲を超えるものを求めています。将来的には、すべての企業がコネクテッド カンパニーとなり、そうでない企業は消え去ることになるでしょう。

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