EPINOV

患者個人にあわせた脳治療

Elly Yates-Roberts
7 July 2020

てんかんがその患者に及ぼす影響は多岐にわたります。手足が不随意に律動するけいれんなど、動作の突然の変化として現れることもあれば、発作によって運動能力や意識の喪失が引き起こされることもあります。世界保健機関(WHO)によると、てんかんは世界中で 5,000 万人以上の人が患っていると推定される、最も一般的な神経疾患の 1 つです。

それにもかかわらず、薬物療法で効果がみられるケースは多くありません。

仏マルセイユにあるティモーネ病院の神経学教授であり、各患者の脳をバーチャル3Dでモデル化することによりてんかん手術と術後の管理を改善することを目的とした共同プロジェクト「EPINOV」* のリーダーであるFabrice Bartolomei氏は、次のように述べています。「てんかん患者の約30%に今日利用可能な薬剤に対する耐性があります」

薬剤抵抗性てんかんの現在の治療では、外科医が患者の脳のてんかん原性領域(発作として知られる電気活動の突然の乱れを引き起こす領域)を取り除く必要があります。ところが、この領域を見つけるのは非常に難しい場合があります。

Bartolomei 氏は次のように述べています。「臨床医は現在、MRIや脳波測定といった非侵襲的検査の記録、問診表、侵襲的アプローチにより取得した頭蓋内記録を組み合わせて使用して、脳のどの部分を切除する必要があるかを特定しています。ただし、これらの検査記録の結果を解釈することは容易ではありません」

EPINOVは2018年、手術が必要な部位を外科医が特定できるようにすることを目的として、研究者、臨床医、開発者のチームによって開発されました。コンピュータモデルは、各患者の脳の生理機能を動的な電気活動とともに表示します。これは、以前は実行できなかったことです。(持続可能なイノベーションを実現させるソフトウェアを開発するダッソー・システムズは、EPINOVのインダストリー・パートナーメンバーです。ダッソー・システムズが構築したリビングハートモデルは、臨床試験で使用するために米国食品医薬品局(FDA)によってテストされており、新しいバーチャル脳モデルの開発も進められています)

このプロセスの臨床試験は、12人程の患者を対象に2019年6月にフランスで開始されました。各患者の脳のバーチャルモデルを作成するのに2か月もかかりません。臨床試験のデータは、バーチャル脳技術が外科的決定にもたらす付加価値の検証や、改善点の指摘に使用されます。

Bartolomei氏は次のように述べています。「このプロジェクトの目標は、患者の脳の上にてんかん原性領域を重ねて表示する3D版の臨床医向けツールを開発することです。これによって、異常のある脳領域を特定するプロセスが簡素化され、手術によって患者が発作から解放されます。また、患者の生活の質にほとんどまたはまったく影響を与えることなく、効果的な個別化治療を改善して提供できます」

EPINOVは、フランス国立研究機構(ANR)の第2弾プログラム「将来のための投資計画」の一環として、ANRが監督する公的助成金(参照番号: ANR-17-RHUS-0004)によってサポートされています。

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