Thanks to modern technologies, transaction costs are falling dramatically. But transaction costs are the entire reason for vertical integration. So, in many instances, vertically integrated business definitions are breaking up. This redefines not just businesses, but entire industries.
Within any value chain, you typically have different functions with different characteristic economies of scale: intense in some functions, negligible or even negative in others. But because they were tied together in a single business definition, these effects tended to offset each other: the big company might enjoy economies of scale in its factory, but the small competitor might be advantaged in being closer to the customer, both physically and emotionally. This is why, averaged across the value chain, we have typically seen only gently increasing returns for corporations as a whole. Moreover, small operations close to the customer are characteristically most nimble and innovative; large operations with scale economies and standardized processes are most efficient. With the two kinds of activities tied together, corporations have lived with a trade-off between innovation and efficiency, a trade-off that no amount of clever internal organization can finesse.
フィリップ・エバンス氏はBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)のシニア・アドバイ ザーであり、フェローも務めています。BCGでメディアとインターネットの実務を立ち上げ、 多くの本を書いています。これには『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌に最も貢献した人 に毎年贈られているマッキンゼー賞を受賞した『Strategy and the New Economics of Information』も含まれています。デジタル・ビジネスに関する詳細は、同氏の論文 『Borges’ Map:Navigating a World of Digital Disruption』http://digitaldisrupt. bcgperspectives.com/、および『Reinventing the Company in the Digital Age』で同氏 が担当した章「From Deconstruction to Big Data:How Technology is Reshaping the Corporation」https://www.technologyreview.com/s/537461/from-deconstructionto-big-data-how-technology-is-reshaping-the-corporation/を参照してください。プロフィール
どのバリューチェーンにも通常はさまざまな 機能があり、それぞれが、さまざまな特徴の 規模の経済と。極端に強い機能もあれば、取 るに足らないかマイナスになる機能もありま す。しかしどの機能も、一つのビジネス定義の 中で互いに束ねられていたため、こうした効 果は互いに相殺する傾向にありました。つま り、大企業は自社の工場内で規模の経済を享 受するかもしれません。一方で競合する小さ な企業は、物理的にも情緒的にも顧客にさら に寄り添うかたちにするほうが有利になるか もしれません。こうした理由から、私たちがこ れまで目にしてきたのは、バリューチェーン全 体で平均すれば会社組織全体で緩やかな右 肩上がりになる収益だけでした。
さらに、顧客に寄り添う小規模経営には「俊敏 性と革新性に優れている」という特徴があり、 一方で標準化されたプロセスを備えて規模の経済を享受する大規模経営には「効率性に 優れている」という特徴があります。こうした 二種類の活動を束ねながら、会社組織はこれ まで、イノベーションと効率性という二律背反 を抱えてやってきました。この二律背反は、ど れほど優秀な内部組織でもうまくやってのけ ることのできないものです。
しかし、取引コストに対する執拗な下げ圧力 がテクノロジーによってもたらされ、バリュー チェーンを束ねていた力が徐々に緩んでい ます。企業は次第に不利な機能を脱すること ができますし、またそうしなければいけませ ん。その結果が「デコンストラクション(脱構 築、破壊の意)」、つまりバリューチェーンの崩 壊であり、ビジネスモデルの再定義となるの です。企業が自社をデコンストラクションする とき、私たちはそれをアウトソーシングある いは投下資本の引揚げ(不採算部門の売却) と呼びます。そしてデコンストラクションが完 了した時、私たちはそれを今までのバリュー チェーンの崩壊と呼びます。
こうしたものの反対側に位置するのが、規模 の経済が伴わないかそれがマイナスになる 活動です。取引コストを重視する必要性から 解放され、より大規模な経済活動に組み込ま れていた活動は、現在では非常に小さな企 業や個人でも行えます。彼らは多くの場合、プ ラットフォーム・プロバイダーによって実現さ れる大規模コミュニティ内で活動します。こう したコミュニティのメンバーは、互いに競合 することもあれば協力し合うこともあります。 彼らはミツバチの群れのように、互いの仕事 を大勢で真似たり、やみくもにいろいろなこと を試したりして成功を積み重ねます。彼らの 集団行動が効率的であることはまれですが、 その適応性や、試験的であること、革新性とい う点では並外れています。これを示す有名な例が、iPhoneやAndroidな どのプラットフォームの開発者コミュニティ の登場です。こうした開発者は、どちらかとい
“THE CORPORATION OF THE FUTURE WILL INCREASINGLYNEED TO ACT AS PLATFORM RATHER THAN ACTOR, CURATOR RATHER THAN MANAGER, ENABLER RATHER THAN DIRECTOR.”
PHILIP EVANS
SENIOR ADVISOR, BOSTON CONSULTING GROUP
うと中小企業や個人事業主であることが多い のですが、彼らは有効に機能しています。なぜ ならば、彼らが開発対象にしているオペレー ティング・システム(そしてアプリを売買する ために必要な販売・請求サービス)をアップ ルやグーグルが提供しているからです。開発 者の仕事は、単にニーズを満たすアプリを用 意することだけです。開発者はイノベーション を提供し、アップルやグーグルが規模を実現 します。
別の種類のコミュニティとして、「イーランサー (e-lancer)」と呼ばれることもある人たちが います。彼らは、イーベイやエッツィ、キック スターター、タスクラビット、エアビーアンド ビー、ウーバーといったインターネット上の プラットフォームで個人向けサービスを提供 し、自分たちの顧客を見つけている個人事業 主です。たとえば、ウーバーは、テクノロジー の導入やマーケティング、潜在的乗客に引き 合わせることができる地元のドライバーの 数、その逆も含む「ネットワーク効果」の活用 に関しては、既存のタクシー会社よりもはる かに大きな規模の経済を享受しています。し かし個々のドライバーは個人事業主で、自分 たちのスケジュールの状態に合わせて柔軟 に運転手をすることができます。わずかな違 いのように思えるかもしれませんが、ライド シェアリングやカープール、そして自律走行 車の共有さえも自動化・拡張することになる のはウーバーであり、タクシー業界ではあり ません。
一方で、純粋に協働するコミュニティの例と なるのがウィキペディアやリナックスであり、 こうしたコミュニティでは誰も製品を「所有」 せず、また貢献する人たちには金銭的報酬は ありません。こうしたコミュニティが機能する のは、全員で共有する「成果物」(百科事典あ るいはコンピュータ・プログラム)が高度に モジュール化されていて、会社組織に必要な トップダウンによる計画特性がなくても多く の人の貢献が可能になるためです。これは、
こうしたコミュニティが完全に「自己組織化」 されているということを意味するのではあり ません。テキストを編集する人やコードを保 守する人には非公式の階層があり、最終的に はある程度の権限を持っている創設者のジ ミー・ウェールズ氏やリーナス・トーバルズ氏 による認可を受けます。これとは対照的に、 ビットコイン開発コミュニティが深刻な問題 を抱えるようになった一つの理由は、「サト シ・ナカモト」とされる創設者は当初から偽名
そして言うまでもなく、最大のコミュニティ にソーシャル・ネットワークがあります。コン シューマーがジャーナリストとなる、発信す るメディアとも言えるものです。ソーシャル・ メディアはコンシューマーの注目を意のまま に操り、従来のメディアを置き換えています。 ソーシャル・メディアで個人情報の商用利用 が引き続き受け入れられることを前提にすれ ば、正確に的を絞った説得力のある広告メッ セージを配信するという点ではソーシャル・メディアが従来のメディアを圧倒することは 間違いありません。
上記のすべての例においては、コミュニティ を構成するメンバーは個人か小さな企業、つ まり経済組織の最小単位です。しかしコミュ ニティそのものは極端に大きくなる可能性が あります。これが可能なのは、グローバルなイ ンターネット・プラットフォームの進展による ものです。そしてもう一つの理由は、コミュニ ティというものが、複雑で拡張性に乏しい階 層組織間の調整の必要性に縛られないこと が挙げられます(会社組織にいる人にとって は当たり前のことですが)。また、コミュニティ が有利なのは、大きければ大きいほどメン バーが享受する価値も大きくなるという「ネッ トワーク効果」があるからです。このように、特 定のタスクでは、グローバルに拡張されたコ ミュニティは物事を成し遂げるだけでなく、経 済的にも従来の会社組織より有利です。
したがって会社組織は、規模のメリットが全く 無い、あるいはその価値を損ねてしまってい る活動を詳細に検討する必要があります。ま た、部外者が社内のスタッフよりも仕事を、特 に、独自に調整したイノベーティブな仕事を より効率化できるかを問いかける必要があり ます。多くの場合、答えは三通りあります。一つ 目は外部のコミュニティ・プラットフォームを 使用するか独自のコミュニティを立ち上げる こと。二つ目は、データやリソースを公開して 他者が探索・加工できるようにすること。そし て三つ目は、その機能に社内で対応するのを やめることです。
計画の策定や説明責任、標準化、インセン ティブなどの従来の経営手法を脱するには 長い時間を要します。これからの会社組織は ますます、自らが演じるのではなくプラット フォームとしての、また管理者ではなく専門 職員としての、そして責任者ではなく実現者と しての役割を果たす必要があるでしょう。課 題は、他者の情熱や想像力を引き出すため に、階層や管理という伝統的な概念から抜け 出すことです。◆
“THE CORPORATION OF THE FUTURE WILL INCREASINGLYNEED TO ACT AS PLATFORM RATHER THAN ACTOR, CURATOR RATHER THAN MANAGER, ENABLER RATHER THAN DIRECTOR.”
PHILIP EVANS
SENIOR ADVISOR, BOSTON CONSULTING GROUP