没 入 型 バ ー チ ャ リ テ ィ( i V )が 成 功 を 収めている多くの分野のうち、科学 と医学の世界で最も革新的な仕事 がいくつか成されようとしています。
たとえば医療分野では、措置手順の速さ、精 度、安全性によって生死が分かれる場合が あ り ま す 。仮 想 現 実( V R )と 拡 張 現 実( A R )に よって、医師はリスクを冒すことなく、仮想の 患者に対して困難な手術の計画を練り、練 習できる手段を手にすることになります。CT ス キ ャ ン や M R I の よ う な デ ジ タ ル 診 断 を 、特 定の患者の生理学モデルを表したカスタム VRモデルに変換することさえ可能です。
HTC ViveがSurgical Theaterアプリケーショ ン を 作 り 出 し た と き に は 、ち ょ う ど そ の よ う な応用に取り組んでいました。
HTC ViveのB2Bバーチャル・リアリティ部門 バイス・プレジデントであるHervé Fontaine 氏は次のように述べています。「当初対象 としていたのは、手術する空間が非常に限 られている子供の脳腫瘍でした。Surgical Theaterは実際より大きなVR環境を生成す ることができるので、外科医は実際にその 環境に入り込み、あらゆる角度から腫瘍を見 て 、そ こ に 近 づ く 最 適 な 方 法 を 計 画 す る こ と ができます。これによって、成功率がはっきり と高まりました」
“YOU WOULDN’T EXPERIMENT WITH IMPLANTING DIFFERENT VERSIONS OF A MEDICAL DEVICE INTO AN ACTUAL PATIENT, BUT YOU CAN TEST DIFFERENT IMPLANTS IN A VIRTUAL MODEL OF A PATIENT’S ANATOMY TO EVALUATE THE BEST OPTION.”
LECTURER IN MEDICAL PHYSICS, INSIGNEO INSTITUTE FOR IN SILICO MEDICINE, UNIVERSITY OF SHEFFIELD
VRでの正確な生理学の再現
Pete Johnson氏は、zSpace社で戦略的ビジ ネス開発担当のバイス・プレジデントを務め ています。同社は、3Dの医学的モデルをVRで 表示および操作するためにカスタマイズさ れたワークステーションを製造しています。
「たとえば『Living Heart』というプロジェクト で は 、ダ ッ ソ ー ・ シ ス テ ム ズ や 世 界 各 地 の 多 数の科学専門家と協力して、体内で鼓動し ている心臓の正確なモデルを観察し、心臓 が実際にどう機能しているかを見られるよ うにしました。それは、解剖用の献体の中で は行えません。そのモデルには十分な機械 力学と流体力学が組み込まれているので、 患者への指示書から術前計画、医学研究に 至 る ま で 、あ ら ゆ る こ と に 使 用 で き ま す 」と Johnson氏は説明します。
他に類を見ない設計のzSpace社ワークス テーションによって、科学や医学では重要な メリットであるユーザー間の相互作用が促進 さ れ 、実 現 さ れ て い る と J o h n s o n 氏 は 述 べ て います。「ヘッドマウントディスプレイ(HMD) を装着した人は、孤立した状態になります。他 の人たちと相互に影響し合えてはいないの です。当社のモデルは、教室の学生であるか、 研究室にいる研究者であるかを問わず、ユー ザー間で高度なコラボレーションができるよ うな科学用の『作業台』として機能します」
生理学的観点からみた仮想人体
英国シェフィールド大学のInsigneo Institute for in silicoMedicineの研究者たちは、EUが 資金を提供したVirtual Physiological Human ( V P H )と い う プ ロ ジ ェ ク ト の 一 環 と し て 、人 体の基本的システムを3Dモデルにする開発 作業に貢献しています。
シェフィールド大学で医学物理学の講師を 務めるAndrew Narracott氏は次のように 述 べ て い ま す 。「 V P H の ビ ジ ョ ン で は 、 複 雑 な研究課題に対応するために個々に使用 す る こ と も 一 緒 に 使 用 す る こ と も で き る 、人 体のシミュレーション技術と仮想の人体モ デルを開発する必要があります。その目的 は、たとえば、心臓血管系、筋肉組織、視力、 消化力に関する疾患の治療法を改善するこ とです。医師が日常の診療で利用できるよ うに、これらの領域での知見を臨床状況に 移し変えることに大きな力を注いでいます」
手術の場合と同様に、「実世界で試すには リ ス ク が 大 き い 措 置 も あ り ま す 。そ こ で 、多 くの異なるシナリオをシミュレーションで試 してみる機能には大きなメリットがありま す」とNarracott氏は語ります。「たとえば、実 際の患者に異なるバージョンの医療デバイ スを埋め込む実験は行えませんが、患者の 解剖学的構造を表わす仮想モデル上であ れ ば 、さ ま ざ ま な イ ン プ ラ ン ト( 埋 め 込 み 機 器 )を テ ス ト し 、最 適 な 選 択 肢 を 評 価 す る こ とができます。もちろん画面上でテストを行 うことも可能ですが、VRでは全く新しい方 法で、これらのシミュレーションの結果を操 作することができます」
もう一人のシェフィールド大学医学物理学 講師であるJohnW.Fenner氏は、VRによっ て、特定の患者の治療で協力している医師 間のコミュニケーションが改善される可能 性もあると述べています。
「多くの医療にはコミュニケーションが伴い ます。外科医が外科的処置を取り入れるた めに放射線専門医と相談したり、医師が患 者に、これから受ける治療を説明したりしま す 。V R で は こ う し た 情 報 が 、言 葉 や 図 解 、あ るいはビデオよりも理解しやすい方法で伝 わります」とFenner氏は解説します。
VRでの細胞の秘密の発見
医学研究者がVRの診療シナリオへの適用 に取り組んでいるのに対して、理論を構築 する科学者は、生理学的特徴がどのように 実在の生物を成り立たせているかという最 も基本的な原理を理解するために、このテ クノロジーを利用しています。
ダッソー・システムズのソフトウェア、 BIOVIAのマネージング・ディレクターを務 めるRezaSadeghiは、次のように述べてい ま す 。「 細 胞 に つ い て 言 え ば 、 細 胞 が 何 を し ているかについては研究者全員が同意す ることも可能ですが、それをどのように行っ ているかについての意見は様々で致せず、 大部分は謎のままです。細胞の内側にカメ ラを入れることはできませんが、シミュレー ションを作成するには十分なほど理解して い ま す 。そ し て 、方 程 式 を エ ク ス ペ リ エ ン ス に変換するアルゴリズムの開発に十分な計 算能力も手にしています」
Sadeghiは、VRと高度なコンピューティング が相まって、科学研究での解決方法が変わ るだろうと予測しています。