Vrで, 百聞は一見にしかず

自動車から不動産に至るまで、売り手がVRの助けで、消費者が 購入しようとしているものを見せる時代に

Joseph Knoop
20 November 2016

数十年間にわたって、選んだとおりの仕様で組み立てられる自動車や建設前のマンションなど、まだ存在していないもの を購入する場合、消費者は不確かなものでも思い切って信じてみるしかありませんでした。しかし今、売り手の側は、没入 型の仮想現実(iV)を利用して消費者の不安要因を取り除き、顧客満足度を高めています。

題多くの消費者にとって、自動車のオ プションや新しいキッチンの設備 を選択するのはやっかいなことで す。どれだけ多くの生地見本やカラーチャー ト を 検 討 し た と し て も 、製 品 が 届 く ま で 、選 ん だ も の が ど の よ う に「 感 じ ら れ る か 」を 知 ることはできません。そして届いたあとで は 、変 更 す る の に 多 額 の 費 用 が か か っ た り 、 変 更 が 不 可 能であったりします

しかし消費者に優しい仮想現実(VR)が利用 可能になったことで、複雑な製品のマーケティ ングがずっと容易になりました。それは、製品 がまだ存在しない場合であっても同様です。

V R 用 の ヘ ッ ド マ ウ ン ト デ ィ ス プ レ イ( H M D ) を製造しているHTC Viveの、B2B(企業向け) バーチャル・リアリティー部門バイス・プレジ デントであるHervé Fontaine氏は次のように 述べています。「2Dのカタログや、ウェブで平 面画像を作るだけでは、購入の決め手にはな りませ ん 。エクス ペリエンスとV R を 合 体させ て、実際に見せて初めて信頼を勝ち取れ、より 多くの人に進んで購入していただけるのは明 白です」

カーをVRに設定する

たとえば「Audi VRエクスペリエンス」では、ア ウディの3DモデルをViveを使用して没入型 のエクスペリエンスに変えています。没入環 境に入っている間に、消費者は70種類のオプ ションのほか、色や内装を選択します。全部で 1,000種類に及ぶ組み合わせから、自分にとっ て理想的な自動車が生まれます。仮想空間で、 完成した車の周りを歩くときには、ボンネット を上げてエンジンを確かめたり、身をかがめ て下部構造を見たりすることができます。

ダ ッ ソ ー ・ シ ス テ ム ズ の「 3 D エ ク ス ペ リ エ ン ス・ラボ」で没入型バーチャリティ担当ディレ クターを務めるDavid Nahonは次のように 述べています。「お客様は自分が体験するエ クスペリエンスが正確なものであると確信し たいのです。車を購入するときに、全オプショ ンから選んだ構成にしようとしても、製造ロッ トでまさにその組み合わせが見つかること はないでしょう。販売員によっては、別個の何 台かの車ですべてのオプションを見せられる かも知れませんが、通常はお客様がそうした 情報を取り入れ、頭の中で組み立てる必要が あります。VRですべてをつないで一体にすれ ば、購入しようとしているものが実際にどう感 じられるか、正確なエクスペリエンスを得ら れるでしょう」

 Once we get to incorporate an experience with VR, common sense says that more people will be ready to buy because they will trust more in what they see.

HERVE FONTAINE
Vice President, B2B Virtual Reality, HTC Vive

VRで不動産の状況を 理解しやすく

マンションなどの不動産物件の販売は困難 ですが、それは一部には、買い手が物件の状 況を把握できる機会が限られているためで す。たとえばリゾート物件は、レンタルのハイ シーズン中に見学することはできません。転 居しようとしている買い手は、候補の物件を 訪れることができるのが週末に限られてい るかもしれません。建設前の住宅は、そもそも「実物の」部屋や内装を見ることができませ ん。しかし、不動産業者がVRでの見学会を企 画すれば、話は別です。

フランス、スペインおよびイタリアで事業を 展開するデベロッパーのAltarea Cogedimグ ループは、そうした業者の一つです。最近ま でCogedimグループは、建設前の物件をイ メージする助けになるように、見込み客に実 際の青焼き図面と、デザイナーの完成予想図 を 見 せ て い ま し た 。今 で は 、そ れ ら に 代 っ て VRを使用しています。

Cogedimグループのマーケティング担当ディ レクターを務めるThomas Penet氏は次のよ うに述べています。「お客様がする必要があ るのは、フロアプランを選択してヘッドセット を着用することだけです。それですべての部 屋を訪れて、ベッドのスペースを確かめたり、 ソファを置く余地があるかどうかを確認した りすることができます。VRは今後1年でさらに 本格化させると思われるため、お客様の要望 に応えられるように自分たち営業対応の準備 も進めています」
Cogedimグループが建設前の集合住宅物件 で行っていることを、ダッソー・システムズの アプリケーションである「Homebyme」は、一 戸建て住宅でも、改装プロジェクト、家具の配 置などを行います。

SilabはVRヘッドセット、視線追尾システムおよびCAVEを組み合わせて消費者が店内デザインおよび POP類に如何に反応するかシミュレートするシステムを提供し、小売店およびFMCG製品メーカーを手伝っています。 (Image: © Silab/Kalista)

Homebymeは小売りウェブサイトへの組み 込みサービスや、注文住宅業者によって使用 されるオンラインの住宅デザインのサービ スを提供しています。製品戦略とマーケティ ングを担当するバイス・プレジデントを務め るMarc Pavageauは次のように述べています。 「建築業者や施工業者が求めているのは、 プロジェクトを目に見えるようにして、決定内 容が期待に沿うことを再確認することです。 仮想現実は、そのための手段と強力な付加 価値をもたらします」

「ある決定が持ち上がったときには、紙を切り 出してグラフ用紙の上でいじり回すのではな く、実際の家の仮想模型をさまざまな方向に 動かせます。バーチャルな手段でその空間に いることが、信頼のおける決定として承認さ れる助けになります」(Pavageau)

VR店舗の大きな満足

VRは、小売店舗の舞台裏でマーケティング のためにも使用されています。その目的は、 消費者がちょっとした品物を購入する場合で も、より容易に楽しく購入できるようにするこ とです。それによって、小売業者やブランドへ の思い入れが高まり、売り上げが拡大します。

たとえば、北フランスのShopping Innovation Lab(Silab)では、小売業者やメーカーが、店 舗全体の設計から棚の上で特定の品物を置 く位置に至るまで、ショッピング・エクスペリ エンスのコンセプトをまとめています。小売 業者や製品メーカーは、Silabが提供する最 新の没入型テクノロジー、低いコストで利用 できます。

Silabの開発担当ディレクター、Jean-Michel Flamant氏は次のように述べています。「私た ちが通常取り組んでいるのは、どのように製 品を見せ、店舗を構成するのかに加えて、消 費者は店内をどのように回遊するかといった 課題です。これらは、仮想環境で取り組めば ずっと早く、少ない費用で行えます。以前は、 物理的な模型で店舗設計を検証していまし た。レイアウトに問題があることが分かった 場合は、最初からやり直して作成する必要が ありました」

Silabでは、小売業者の店舗設計の支援に加 えて、消費者製品メーカーが自社製品の理想 的な棚配置を突き止めるためにも役立って います。

「没入型の3Dはすばらしいコミュニケーショ ン・ツールです。私たちは、どれが最も有効で あるかの答えを得るために、5つのマーチャ ンダイジング・オプションを試しています。こ うしたオプションは、新製品の陳列方法につ いて、ブランドがより容易に販売店を納得さ せるために一役担っています」とFlamant氏 は語ります。◆

GMC Acadiaの360度の景色を体験する :
http://3ds.one/Acadia

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