賢者の眼

ビジネスはプラットフォーム型エコシステムへと向かっている

Benoit Reillier
7 June 2017

B2Bプラットフォームの立ち上げ、拡大や縮小は、B2Cプラットフォームのそれとはまったくの別物です。皮肉にも15年前、大方の予想は「B2BプラットフォームはB2Cプラットフォームよりも成功するだろう」というものでした。それとは正反対の結果を招いた原因の一端は、大企業の多くが自社の取引関係の管理をプラットフォームに委ねる準備が整っていない、あるいはガバナンスの原則に同意できない、といったことにありました。

一方、まだインターネット接続すら珍しかった時期には、規模の小さな会社にとって、プラットフォームへの参加は手の届かないことでした。しかし現在は、一部の大企業がいまだに参加に消極的な反面、中小企業のほうがオンライン化を実現しています。これら中小企業はプラットフォームが世界市場へアクセスする未曾有の機会を提供するものであることを実感し、B2Bプラットフォームの成長を牽引し始めました。こうした傾向が最も顕著なのは中国です。都市部から遠く離れた地域で営業する何千もの小規模事業者は、電子商取引大手ノアリババなどが提供するプラットフォームを利用して他社に製品を販売しています。

クリティカルマス

ユビキタスな接続環境が整った現在、クリティカルマス(普及率のカギを握る分岐点)を達成するためのハードルは下がっています。B2Bプラットフォームは、往々にして極めて限定的な目的で開設されます。特定の貿易機関、特定の団体や組織を慎重に選び抜けば、そのプラットフォームに参加している購買者や小売業者を引きつけやすくなることもあります。

たとえば、大企業の多くはすでに一定の在庫や顧客ベースを持っており、これらを比較的容易にプラットフォームに移行できます。アマゾンの例をひくまでもなく、こうした企業は自社のプラットフォーム上で第三者が自社の顧客に対して販売活動を行えるようにすることで自社が得るメリットを、今まさに理解しつつあるのです。

プラットフォーム型エコシステム

企業によっては、従来のビジネスモデルとプラットフォームモデルを融合することで、企業全体の価値を各部門の価値の総和以上に高めることが可能です。一例として、アマゾンは倉庫や商品在庫を必要とする従来のオンライン型ビジネスモデルの強みと、アマゾン自身の商品を他の小売業者と競合させる場となる「プラットフォームモデル」のスケーラビリティを融合しました。このようなプラットフォームによって推進されるエコシステムは、双方のモデルの最大の長所を提供します。つまりアマゾンは、他の小売業者が提供する製品がもたらすロングテールのメリットを享受しながら、自らが提示するEコマースのバリューチェーンの支配権も握っています。その結果、究極の「ワンストップ・ショップ」が実現したのです。

しかし、ビジネスモデルの融合には異なるスキルや考え方が必要なことから、企業の多くがその実現は難しいと感じています。プラットフォームモデルはよりオープンなものであり、顧客も価値の共創に参加します。これに対して直線型のモデルは、バリューチェーンでの顧客エクスペリエンスを完全にコントロールできます。さらに、異なるビジネスモデルの融合によって、プラットフォーム上の販売者が既存の従来型ビジネスと競合する製品を提供することもあるため、競争が生まれるかもしれません。

このような緊張関係を克服するのが困難なことは明白です。誰だって、ライバル企業の手助けをしたいとは思わないでしょう。しかし私は、今後このような関係性を目の当たりにする機会が増えると確信しています。というのは、自ら業界のエコシステムを統制しなければ、誰かにその役目を取って代わられ、より大きな不利益を被ることを企業は理解しているからです。

バランス調整力

アマゾンは、異なる二つのビジネスモデルの世界を最高の状態まで引き上げたと言えるでしょう。同社は、自社ビジネスのある程度をコントロールできるという優位性と、市場開拓力を手にするというメリットとを融合させています。なぜなら、同社のプラットフォームに参加するサードパーティーの小売業者は、新しく革新的な商品やサービスを提供する可能性があるものの、それらはアマゾンだけでは生み出せなかったものだからです。

アマゾンは、いったんマーケットプレイスで何が効果的かを見定めたら、マーケットプレイスの開放性を維持したまま、手にしたメリットの一部を自社に取り込めるのです。

どの企業にとっても、共喰いは他人事ではありません。既存の提供品を置き換えるのではなく、ビジネスの他の部分を補完するようにプラットフォームを構築することこそが、アマゾンがB2Cで極めたバランス調整力です。現在同社は、新たに成長し始めたAmazon Businessによって、この成功をB2Bの世界にも再現しようとしています。

信用の概念の変化

プラットフォーム型エコシステムの構築において、もうひとつの重要な要素は「信用」です。信用の概念や他者を信用する方法は劇的に変化しています。10年前、自分の住む家を赤の他人に安心して1ヶ月間貸し出せる人などいたでしょうか?

エアビーアンドビーはこの信用問題を、賃借人と大家の双方を綿密に調査し、かつどちらにも保険を提供することで解決しました。これが発端となり、保険会社があらゆるプラットフォームの参加者を対象とする保険契約を販売するようになりました。さらに重要なことは、プラットフォームの提供企業が参加者の身元調査を実施したり、問題行為が起きた時に利用を拒否する可能性があることを明確化したりするなど、かなり厳しいルールを課していることです。

このようなガバナンス原則は、どんどんB2Bプラットフォームに組み込まれるようになってきています。購買者側には取引がうまくいかないときに孤立無援になりたくない、販売者側には顧客への到達度と支払いの確実性が欲しいという、それぞれの思惑があります。B2Bプラットフォームはますます、高品質のマッチングや取引支援を行えるようになってきています。

このような新たな保護対策を実施し、かつマイクロソフトやアマゾンといったクラウドプロバイダーがハッキングに対するセキュリティを強化していることを受け、企業は自社ビジネスのオンラインへの移行に対する安心感が増したと感じています。
B2Cの立ち上げ時と比較すると、B2Bには潤沢な財源があります。自社のビジネスを成長させたいという欲求と、プラットフォームという新世界から取り残されたくないという懸念とを受けて、B2Bプラットフォームが急速に成長することは間違いない、と私は確信しています。

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www.launchworks.co

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