デジタルプラットフォーム 、ヘルススイート（HealthSuite） が構想段階だった当時、フィリップスは二つの転換期の渦中にありました。
一つ目は、家電、ヘルスケア、ライティングなど複数の事業を有する複合企業から、ヘルスケア全般を包括的かつ継続的にサポートするヘルス・テクノロジー企業への転換です。私たちが目指していたのは、企業顧客、一般消費者、ケアサービス事業者、さらには政府を支援することで、この継続性を健康な日常生活から専門家によるヘルスケアにつなげ、さらにそれを再び健康な日常生活に循環させることでした。点と点とを結ぶサービスやデバイスの提供はそれ以外を考慮に入れない特定の問題の解決策にはなりますが、私たちはその枠を超え、すべてを網羅した統合ソリューションを持つ必要があったのです。
クラウド上での構築
二つ目は、ますます利用しやすくなっているクラウド技術と、この技術が持つストレージ、処理能力、接続性の強みを踏まえた転換です。クラウド上のストレージでは、常時アクセスと必要に応じたスケールの増減が可能です。
クラウドサービスの提供は多くの業界に影響を与え、改革をもたらしました。もはや、利用者は今後数年間に需要が見込まれる処理能力のために先行投資をする必要はありません。クラウドなら、利用者の要求に応じてピーク時と平常時のどちらにも対応できます。それだけではなく、新しいイニシアティブにすみやかに着手し、試行したり、うまく機能した戦略を推進したりできるため、新たなビジネスモデルやイノベーションも実現します。
成長し続けるクラウドの流れを当社の事業シフトに組み込んだことで、この卓越した事業プラットフォームの新世界への道筋がはっきりと見えてきました。その答えが ヘルススイート デジタルプラットフォームです。
人へのメリット
フィリップスには独自の強みがあります。当社は世界中に拠点を持ち、そのソリューションは一般消費者から専門家まで、あらゆる領域のケア全般を切れ目なく網羅しています。一例を挙げると、当社には非常に強力な消費者ブランドである Philips Avent社の uGrow シリーズがあります（訳注：国内未発売）。その中のスマートベビーモニターという製品は、収集したデータを uGrow 育児プラットフォームに送信し、分析した情報を消費者に提供することで、ベビーの環境を最適化し、さらには、すべての関連データをケアの専門家と共有します。
また、当社の企業向け製品についても、例えば、病院の産科で使われている超音波検査機器など、極めて強力なヘルスケアブランドが揃っています。つまり、これらの製品によって、私たちは出産までの妊婦検診関連の情報と、出産後数ヵ月間の情報とを結び付けることができるのです。
当社のプラットフォームには、非常に説得力のある提案を数多く実現する力があります。当社が提供するソリューションは、患者とケア提供者とを結び付けることで、ケア提供者に患者の健康状態をより深く把握させ、データの予測分析機能を通じて患者の健康状態の悪化が明らかになった場合には、その初期段階で患者に注意を喚起させられます。だからこそ、フィリップスは最終消費者とプロのケア提供者のどちらにも豊かなエクスペリエンスを提供できるのです。配慮すべきは、母親と赤ちゃんだけでなく、赤ちゃんの家族全員だと考えています。
全参加者に利益をもたらすデータ管理
ヘルスケアにおいて、データの所有権は特に頭の痛い問題です。プラットフォーム提供者として、私たちは参加者それぞれの権利の保護と管理に努めなくてはなりません。例えば、病院内のシステムを使って仕事をする場合、データを所有しているのは病院ですが、患者側も、自分達に関わるどのデータを病院側が使えるのかについてあらかじめ同意しており、フィリップスはどちらの権利も尊重しなければなりません。一般消費者を対象とする場合、特に消費者自身がデータの所有者でもある場合は、この問題の解決はずっと簡単です。
Dale Wiggins 氏は フィリップス･ヘルススイート･デジタル･プラットフォームのバイス・プレジデント兼ジェネラル・マネージャーです。2001 年にフィリップスへ入社する前は、ヒューレット・パッカードやアジレント・テクノロジーの研究開発部門で管理、設計、エンジニアリング関連のさまざまな仕事に従事してきました。現在はボストンを拠点に活動しています。プロフィール
