Martin edlund氏

海に秘められた「確かな自然エネルギー」の活用を目指すMinesto社

Lindsay James
13 June 2019

太陽は常に輝いているわけではなく、風も常に吹いているわけではありません。しかし海流は、常に流れています。この普遍の事実にヒントを得たMinesto社のCEO、Martin Edlund氏は、力強く流れ続ける海のエネルギー資源を活用することにしました。彼の使命は、100%再生可能なエネルギーシステムを実現することです。

単に気候変動を懸念するだけの人がいる中、海流を利用して発電する水中用の凧を製造しているMinesto社のCEO、Martin Edlund氏は、地球上の全温室効果ガス排出量のおよそ60%を占めていると科学者が予測している化石燃料への依存度の抑制を目指して、果敢に行動することにしました。

Edlund氏は「エネルギーシステムの非効率性は地球にとって大きな脅威の1つであり、我々がこうした現状を変えていきます」と語ります。

このビジョンの実現に向けて、彼は全身全霊を打ち込んできました。「私はスウェーデンに住んでいますが、製品の市場は世界規模で、お客様も世界中にいらっしゃいます。我々の主力製品は英国で導入されています。ここ数年間は自宅で寝るよりもホテルの部屋で過ごすことのほうが多く、このプロジェクトを必ず成功させるつもりです」

Edlund氏は壮大なビジョンを描いています。世界で最も重要な未開発エネルギー資源、すなわち海に眠っている運動エネルギーを活用したいと考えています。潮の干満は地球や月、太陽の間の引力によって生じます。この相対的な運動が絶え間ない潮の流れを生み出し、理論上は世界のエネルギー需要の3倍に及ぶエネルギーを生成することができます。

Edlund氏は次のように説明します。「我々のビジネスコンセプトは、潮の干満や海流を利用してコスト効率性に優れた方法で電力を作り出す技術を開発・販売することであり、やるべきことは明確です。世界のエネルギーミックスに貢献し、100%再生可能なエネルギーシステムへの移行を後押ししたいのです」

Martin Edlund氏 Minesto社CEO (Image © Dassault Systèmes / Jeremy Levin)

太陽光発電や風力発電も進展してはいるものの、こうした再生可能エネルギーは、化石燃料の代わりとなって増え続ける世界のエネルギー需要を満たすには十分ではないとEdlund氏は考えています。「再生可能なエネルギーを一段と普及させたければ、エネルギーの生成に貢献できる新しいシステムが必要です。そこで登場したのが、我々の潮汐システムです」

Minesto社の「Deep Green」という製品は、緩やかな潮流や海流の流れる海中で運用される、凧に似た装置です。この海中用の凧は、広い海の中で弧を描くように小型タービンを動かして電力を生み出しますが、そのスピードは水面下の流れの数倍に及びます。Edlund氏は、この製品で特定されている開発可能な発電量は、設備容量の600ギガワット(GW)を超えると予測しています。この数値は、競合する潮汐エネルギー技術の開発可能市場規模の少なくとも5倍です。Edlund氏は「他の再生可能エネルギー技術では費用対効果が全く望めない場所でも、我々の技術であれば大丈夫です」と語ります。

「世界で最も高まりつつある需要の1つに対応する競争がすでに始まっています。100%再生可能なエネルギーを実現できることを世界に証明できるように、我々はこの競争に勝つと心に決めています」

MARTIN EDLUND氏
MINESTO社CEO

Edlund氏はまた、安全性も高いと語ります。「ここ5年間は海洋生物にいかなる影響も及ぼすことなくトライアルを実施できています。我々の凧は海面下20メートル以上の深さで運用されますので、視界には全く入りません。凧を設置した海域の上部は穏やかに保たれますので、海上交通路としても問題なく利用できます」

このシステムの開発やシミュレーション、調整、テスト、製造はビジネス・エクスペリエンス・プラットフォーム上で行われています。Edlund氏は「このプラットフォームは我々の業務のまさに中核を担うもので、ソリューションを具体化する上で基盤となるツールです」と語ります。

北ウェールズ沖のホーリーヘッド・ディープと呼ばれる場所で、このシステムの最初の実用規模設備(500kW)の性能検証作業が行われています。Minesto社はそこで、120機の凧を水中に沈めることを計画しています。費用は1億6,000万ポンド(2億900万ドル)に及び、現地で100人分以上の雇用を創出します。

これにより、およそ60,000世帯分に相当する電力をまかなえると同社は予測しています。ウェールズ政府も、このプロジェクトの公的資金調達の第二段階に向けて、高度な事業計画でMinesto社と連携することに尽力しています。

Edlund氏は次のように語ります。「北ウェールズは他の地域よりも失業率が高く、経済成長率も伸び悩んでいます。自然に展開される我々のイノベーションは、地域の富と雇用を創出します。つまり、ソリューションを提供するだけでなく、それをはるかに上回る貢献をしています。私はこのプロジェクトがウェールズにとって新たな石炭産業になると確信しています。ただし、クリーンなエネルギーになることと永遠に続くことの2点が昔とは大きく異なります」

この「ホーリーヘッド・ディープ」プロジェクトが成功すれば、さらに設置が進みます。

Edlund氏は「フェロー諸島やフロリダ、台湾などですでに話が進んでいる」と語ります。「天然資源の場所は変わることはありませんので、我々が創出した雇用、たとえば保守や点検・修理、設置などの作業もなくなることはありません」

Minesto社にとって次の試金石となるのは、予想したとおりの電力量を長期に渡って着実に、問題なく発電することです。

Edlund氏は「今後1年以内に、フェロー諸島の送電系統への接続を終わらせたいと思います」と語ります。「送電系統に接続してしまえば、投資家のリスクも抑えられるようになり、最初の商業化実証を加速することができます。世界で最も高まりつつある需要の1つに対応する競争がすでに始まっています。100%再生可能なエネルギーを実現できることを世界に証明できるように、我々はこの競争に勝つと心に決めています」

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