322キロメートル(200マイル)の距離の旅行を、通勤の足のような手早さと手軽さと手頃な料金で実現できる未来を想像してみてください。イスラエルのEviation Aircraft社のCEO兼共同創業者のOmer Bar-Yohay氏は、その未来はすぐそこまで来ていると確信しています。実現するのは、まるでタクシーのように乗りたい時に呼べる小型の電気飛行機です。
Eviation社はこのビジョンをAlice Commuterと名付けた同社初の有害ガスを排出しないフル電気飛行機に具現化し、6月に開催された第53回パリ航空ショーに初出展しました。
航空業界や航空宇宙業界で15年のキャリアをもつBar-Yohay氏は、Aliceを彼のビジョンを実現するための第一歩と捉えています。
「妻にはよく、誇大妄想家と呼ばれましたが、そのたびに難題を解決したいだけだと反論していました。特に、土台から崩壊している世界の交通システムを何とかしなければという思いが強かったのです」とBar-Yohayは述べています。
彼は、問題の本質は旅行者が航空会社の都合や制約に合わせなければならない点にあると考えています。
「考えてみてください。自動車で街に出かけようとすると、いつも決まって渋滞に巻き込まれます。高速鉄道を利用する場合は、都市の中心地から別の都市の中心地までの区間しか移動できません。飛行機はどうかというと、目的地とは違う方向に2,000キロメートル(1,242マイル)飛んでから、目的地の方向にさらに200キロメートル(124マイル)飛ぶということも日常茶飯事です。飛行機を降りた後も、目指す場所まで車で移動する必要があるでしょう。この問題でもっとも憂慮すべき点は、私たちがそれを自覚していないことです。ソリューションを想像できないから、問題に気づかないのです」
Bar-Yohay氏はソリューションをただ想像しただけではありません。彼はクラウドベースのビジネス・エクスペリエンス・プラットフォームからのサポートを得て、実際にソリューションを創造しました。
「私たちが選んだのは最高レベルのソリューションです。当社のエンジニアが初の乗客9人乗りのフル電気飛行機の設計、シミュレーション、製造を実現できたのは、このソリューションのおかげです」
Aliceを電気飛行機としてゼロから設計する過程で、空力設計、構造的統合、サブシステム統合、制御ソフトウェア、温度管理システム、および推進システムに革新的な技術が導入されました。あらゆる要素が全体的に改善された結果、Aliceはこれまでにない性能を備え、採算の取れる製品に仕上がりました。
「テクノロジーがもたらしたこの手軽さを、人やモノの移動にも実現できるよう、私たちは行動を開始すべきです」 OMER BAR-YOHAY氏
EVIATION AIRCRAFT社CEO兼共同創業者
この飛行機は、900キロワット時のバッテリーを搭載し、1回のチャージで1,046キロメートル(650マイル)の飛行が可能です。オペレーティングコストは1マイルの飛行で1シート当たりわずか7〜9セント、飛行機全体では1時間当たり約200米ドル(従来の航空機の場合、約1,000米ドル)となる予定です。
「2017年半ばに開発を始めたAliceの完全版モデルは、年内にデモンストレーション飛行を予定しています。さらに2021年までに認可を得て、最初の実証試験用路線での運行を開始する計画です」
Bar-Yohay氏は、Aliceの当初の利用用途として、地方空港間を結ぶローカル路線の乗客輸送を想定しています。維持費が高く、理想的とは言えない顧客エクスペリエンスしか提供できない老朽化した航空機の後継にAliceを据えようと考えているのです。彼は、Aliceは通勤者を交通渋滞から解放し、地域交通の定義を一新するだけでなく、有害ガスを排出しないフル電気飛行機の存在を周知するものでもある、と話しています。
「望んでいるのは、誰もが暮らしたい場所で暮らし、理にかなった場所で働ける社会です。今私たちは、IT革命の真っただ中にいます。自分の手の平からいつでもどこへでも情報を転送できる時代です。テクノロジーがもたらしたこの手軽さを、人やモノの移動にも実現できるよう、私たちは行動を開始すべきです。これが可能になれば、地球はより良く、よりクリーンに、より効率的な場所になるでしょう」
このビジョンの達成の鍵を握るのは、持続可能な選択肢をより経済的に実現することだとBar-Yohay氏は話します。「これこそがAliceが優れている点です。Aliceは交通業界に革命を起こす製品になると私たちは考えています。その日が来るのはもうまもなくです」