進むクラウド化

企業は競争の激しいビジネスで成功するための手段としてパブリッククラウドを活用しています

Jacqui Griffiths、Rebecca Gibson
17 November 2017

1 min read

上市までの時間短縮、コスト削減、パートナー・顧客企業とのつながり、といったメリットをクラウドはもたらしてくれます。しかしクラウドが全て同じというわけではありません。オンプレミス、プライベートクラウドの双方を試した組織は、パブリッククラウドでしか得られない優位性を獲得するため、パブリッククラウドへと移行しつつあります。

25 以上の主要都市で、駐車が容易になったのはなぜでしょう?SpotAngelsという米系企業が提供するサービスによるもので、このサービスのおかげでドライバーは駐車スペースを見つけ、駐車した場所を思い出し、警告テキストで駐車違反を避けられます。コネクテッド・カーやプラグイン機器といったモノのインターネット(IoT) ソースからのデータと、アプリユーザーからの更新情報を組み合わせるこのサービスを可能にするのは、クラウドコンピューティングです。

SpotAngels 共同創始者である Aboud Jardaneh氏は以下のように述べています。「クラウドは当社の活動に欠かせません。しかし、真の変革は多くの既存組織が、様々なコネクテッド機器からのデータをホストしてくれたことによりもたらされました」

「例えば、都市はリアルタイムの交通情報といったコネクテッド機器からのデータをクラウドに置いています。BMWといった一部の車両メーカーが製作する車は全てクラウドにつながり、データを提供、それを第3社がエクスポートできます。コネクテッド・カーでない車のドライバーはアフターマーケットプラグイン機器を使って車をクラウドにつなげます。こうしたデータソースの増加は、その上にサービスを構築する当社のような会社に大きな変化をもたらしてきました」

27%

IDC調査によるパブリッククラウドソフトウェア総支出の前年比成長率

クラウドにより業界、政府、IoT機器、個人間のコラボレーションが促進され、よりスマートなサービス、摩擦のないカスタマー・エクスペリエンスを実現する上で、クラウドが果たす重要な役割を理解する企業が早い勢いで増加しています。結果的に、世界中の企業が場所や時間に関係なく最先端の技術にアクセスでき、IT管理を簡素化し、コスト削減を可能にするクラウドの恩恵にあずかろうと躍起になっています

クラウドに向って

アメリカに本社を置く、グローバル経営コンサルティング会社であるマッキンゼー・アンド・カンパニー社によると、クラウド採用を決めた企業は上市までの時間、コスト、品質、ビシネスの俊敏性の観点から大きな改善を実現しています。マッキンゼーのパートナーであるIrina Starikova氏はクラウドを採用することで企業が得る価値について最近のポッドキャスト:『Learning from Leaders in Cloud-Infrastructure Adoption(仮訳:クラウドインフラの採用をすすめる経営者から学ぶ)』で以下のように述べています。「多くの経営者がクラウド採用を通じて確認する最も大きなメリットは上市までの時間です。

つまり、クラウド・サービスを使用することで新しいアプリケーションを以前よりかなり迅速に展開できます。数週間かかった展開が数時間、ときには一時間以内で完了します。これが上市までの時間にとって重要なのは、製品に対する変更を以前よりずっと早く展開できるようになった、あるいは社内プロセスの一部を変えることでかなりのスピードアップを行った点にあります」

米国のグローバルテクノロジー調査企業であるIDC社もまた、クラウド特有のメリットが採用を促進していると考えています。IDCでSaaS (software as a service)、エンタープライズアプリケーション、インダストリークラウド担当プログラムバイスプレジデントを務めるEric Newmark氏は以下のように述べています。「パブリッククラウドのソフトウェア支出は前年比27%ほど伸びています。これは市場の勢いとより多くのプロバイダーが従来のソリューションよりもクラウドソリューションを推している点に牽引されています。クラウドユーザーはビジネスアジリティとセキュリティの向上、人員の生産性の向上をパブリッククラウドへの興味をひかれたトップ効果としてあげています」

「バックボーンとしてのクラウドがなければ、画的IoT アプリケーションは日の目を見ることはなかったでしょう」

Siki Giunta氏
アクセンチュア クラウド、インフラ担当マネージング・ディレクター

SpotAngels 社の駐車サービスのような、生成された膨大な量のデータを、リアルタイムで収集、分析、行動する必要があるIoT アプリケーションにとってクラウドは特に重要です。

アクセンチュアでクラウド、インフラ担当マネージング・ディレクターを務めるSiki Giunta氏は最近のブログで以下のように述べています。「バックボーンとしてのクラウドがなければ、画期的IoT アプリケーションは日の目を見ることはなかったでしょう。IoTの成功はリアルタイムで大量のデータを収集、処理、分析できる能力にあります。次に、膨大な計算、分析処理能力と堅牢で柔軟なバックエンドインフラが必要です」

パブリッククラウドは前述の優位性を提供する主要アーキテクチャとして浮上してきました。マッキンゼーは多くの組織が最初はプライベートクラウドプラットフォームを構築するものの、最終的にパブリッククラウドに容易に移行できるようにする機能も考慮して構築をすすめていると言います。

2016年に同社が行った『Leaders and Laggards in Enterprise Cloud Infrastructure Adoption(仮訳:エンタープライズクラウドインフラに先乗りする企業、乗り遅れる企業)』調査では、大半の企業経営者がオンプレミスやインフラでは不可能なビジネスシナリオがパブリッククラウドにより実現できると答えています。調査対象の半分以上がここ3年以内に少なくともアプリケーションの一部をクラウドに移行する予定があると回答しています。「彼らの最終的な目標は基幹となるエンタープライズ・システムの多様な要求を満たすクラウドプラットフォームを開発することである」と報告書はまとめています。

ビシネスエコシステムの革命

企業がクラウドのメリットの獲得に動く中、マッキンゼーが『デジタル・エコシステム』と呼ぶ、新たな競争分野がうまれています。同社が2017年7月にまとめた報告書『Competing in a World of Sectors Without Borders(国境のない世界での分野競争)』においてマッキンゼーは、オンラインエコシステムがいかにして従来のサプライチェーンを置き換え、バリュー提供に対する考え方に変革をもたらしているかについて説明しています。

デジタルな連続性がこの転換を可能にしています。

アマゾン ウェブ サービス(AWS)のディレクター、Miguel Alava氏は以下のように述べています。「クラウドでは機器やアプリケーション、接続を購入する必要がないため、関係者によるネットワーク参入の敷居を下げます。取引先、顧客、プロバイダーといった関係者はそれぞれ必要な情報に即時アクセスでき、バリューチェーンのニーズを素早く特定できます。企業と顧客の距離が近づきます。全員がバリューチェーンのオーナーであることからコミュニティ意識が育成されます。バリューチェーンは進化し、新しいニーズに対応するための新しいパートナーを開拓できます」

クラウドにより実現されるエコシステムがもたらすこのようなメリットがイノベーションが生まれる豊富な土壌を育成する、とエキスパートは言います。

『Digital Disciplines』の著者であるJoe Weinman氏は以下のように述べています。「クラウドはグローバル・コラボレーションを可能にし、結果として閉じられた研究開発がオープンイノベーション、さらにはクラウドで実現するイノベーション・ネットワーク、アイデアマーケット、ハッカソン、コンテスト、課題を通じた不定期な高速イノベーションへと道をゆずりつつあります。一部では選定サプライヤーの管理から変化し続けるサプライヤー集団へとエコシステムが進化し、様々な会社がリアルタイムで入札に参加、企業ニーズに答えます」

新しいマーケット、新しいモデル

クラウドで新しい協業の考え方がもたらされ、顧客志向のイノベーションのうねりを巻き起こしています。
 
バンクーバーに拠点をおく、総合建設技術会社であるCadMakers Virtual Constructionでは例えば、クラウドを使用して50名のクラウドユーザーと顧客の間のシームレスなデータコラボレーションを促進しています。

「パブリッククラウドはビックデータ、アナリティクス、マシンラーニング、人工知能、モバイル、IoT といった主要テク ロジーの集合体です」

『DIGITAL DISCIPLINES』著者 JOE WEINMAN氏

CadMakersのオートメーション・リード、プロジェクト・モデリング・デザイナーであるRyan Yee氏は言います。「プロジェクトエンジニアがドキュメントを作成、保存すると、マスター・モデルに照らし合わせ、変更はすぐにクラウドにアップロードされます。分離されたモデル、誤ってデータを上書きするリスク、複雑なチェックイン、チェックアウト手順がなくなります。

現場では、ファイルをローカルにダウンロードしなくてもデータにアクセスできます。それによりどんな問題でも顧客と話し、素早く解決できます。これによりプロジェクトの引渡しリードタイムが短縮されました。コストがかからず、設定もシンプルなため、一部のお客様にはクラウドの個別ファイルへのアクセスを付与しています。お客様にモデルを確認いただいて、プロジェクトの進捗に応じてお客様と協業するためです」

ノルウェーの電力供給会社Agder Energi ではMicrosoft Azureのインテリジェント・クラウド、Power BI、Azure IoT Hubをパイロット・プロジェクトで使用し、分散リソースを活用して、電力需要を予測、満たすのを助ける、“好循環フィードバック”の作成に取り組んでいます。インテリジェントなクラウドベースのソリューションにより同社では需要を予測、どの電力源がピーク需要を充足できるかを特定できます。また、再生可能エネルギーのグリッドミックスへの統合もこうしたシステムで容易に実施できるようになり、新しい変電所を建設しなくても需要に応えることができます。

Agder EnergiのCEO、Tom Nysted氏は言います。「電力グリッドの効率化、予測可能性と柔軟性の向上にむけ、新しい技術を使用したいと考えています。発電会社からお客様の電力パートナーへと転身を遂げ、より積極的な役割を担うのです」

企業が必要とする高度な機能を組み込み、クラウドはITではなく、顧客、ビジネス価値を戦略的に向上しようとする組織に力を与えると、AWSのAlava氏は言います。

「オランダのPhilips社では、必要な機器やストレージ、計算キャパシティの値段を心配しなくても、提供したいサービスに注力できるようになりました。同社ではAWSクラウド上で膨大な量の患者データを格納、分析するPhilips HealthSuite デジタルプラットフォームを開発し、これまでは想像もできなかった、先進的な新しい患者向けサービスを提供できるようになりました」

クラウドへの信頼

Philips社のように、多くの会社でイノベーションが始まっており、それはパブリッククラウドのプロバイダーにより提供されるセキュリティと一貫性なしでは実現不可能なものでした。

カリフォルニアに本社を置く、航空機メーカーであるJoby Aviation社で製品エンジニアを務める、Edward Stilson氏は以下のように述べています。「データストレージ機能の拡張性を上げるためクラウドへ移行して以来、ソフトウェアのアップデートを自動的に受領し、常に最新のバーションを使用しています。クラウド上にデータを持つということは世界中のどこにいてもこうしたアップデートを受け取ることができるということを意味し、チームメンバーは単にラップトップを開いて、仕事をすすめられます」

65%

IDCは、2018年までに 企業のITアセットの65% がオフサイトの
コロケーション、ホスティング、クラウドデータセンターにおかれることにな
ると予測しています。

第三者クラウドプロバイダーに満足しているのは小規模な会社だけではありません。フォーチュン誌は最近ゼネラル・エレクトリック社が自社のクラウドセンターを世界中に建設する計画を中止し、代わりにAWS及びMicrosoft Azure パブリッククラウドデータセンター上に自社ソフトウェア、サービスをホストすることを選択したと報告しています。この報告では、GEの顧客である2社の巨大米国企業、エクセロンとニューヨーク州電力公社の経営陣による引用も掲載しています。両社とも、どのクラウドでサービスをサポートするかは大きな問題ではなく、重要なのは信頼性だけであると述べています。

この信頼は企業使用に耐えうる、セキュリティを備えたパブリッククラウドを構築するため、これまでクラウドプロバイダーが行ってきた多大な投資に裏付けられています。AWS 及び Microsoft Azureは例えば、原子力産業といった規制の厳しい業界における厳格なセキュリティ要件を満たす、「政府系クラウド」データセンターを含む、あらゆる組織にとってパブリッククラウドをセキュリティを備えた環境にするため多大な投資を行ってきました。

ダッソー・システムズの戦略的パートナーであり、フランス系クラウドインフラサービスプロバイダーであるOutscale社のCEO、Laurent Seror氏は以下のように述べています。「セキュリティではチェーン全体のデータの信頼性がかかっています。セキュリティを強化したい企業は自社では取得していないものも含め、必要な証明を全て取得しているクラウドを探せばいいのです」

ビジネスの必要条件

クラウドベースのビジネスモデルにより破壊的な変化を遂げている業界はあとを絶たず、より多くの企業がクラウドをビジネスの必須条件と考えるようになりました。

Weinman氏は言います。「最近ではデジタル先進企業、クラウド採用企業、従来の競合の間での競争が起きています。新しい競合企業はクラウドを基盤とした仮想ビジネスで得た利益を使って実世界、または「デジカル(digital:デジタル + physical:物理)」世界への進出戦略を展開しています。例えば、Netflix はビデオ店を苦境にたたせています。小売店はAmazon.comやAlibaba に苦戦しています。UberとDidiは従来のタクシーサービスに挑戦状をつきつけています。従来の自動車メーカーはTeslaのソフトウェアスキルによる攻撃を受けています。この変化を免れる業界はありません」

幅広いコネクテッド機器からのデータを活用して、空いている駐車スペースを見つけ、警告テキストを通じて駐車違反を回避するアプリケーションであるSpotAngels、こうしたサービスを裏で支えているのがクラウドコンピューティング。(Image © mikeinlondon / iStock)

あらゆる企業が自社のクラウド戦略を真剣に考える必要がある、というのがインダストリーオブザーバー全員が同意する基本ラインです。 – さもなければ、競合の後塵を拝することになりかねません。

Alava氏は言います。「クラウドはあらゆるサイズの企業、業界、地域にとって新しいモデルとなっています。企業がクラウドを採用するか否かが問題なのではなく、いつ導入し、最初に移行するのはどのアプリケーションで、何を実施して、いつ到達するかが問題なのです」

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Learn more about Spot Angels cloud-powered services
http://3ds.one/SpotAngels
 

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