コンパス誌:効率性や持続可能性といった目標に向けて企業が全社の足並みをそろえようとするとき、調達部門はその一環でどのような重要性を持つのでしょうか。
Jean-Pierre Pellé氏(以下、JPP):企業は部品のソーシングを総所有コスト(TCO)という大きな文脈で捉える必要があります。例えば航空宇宙業界の場合、組織は市場での競争優位を高めるために、サプライヤーと緊密に連携します。彼らは、製品の価格ばかり見ていると、効率性向上につながりうる他の多くの要素を見逃しかねないということに気づきました。そこで価格だけでなく、環境への配慮や性能も含めた製品のライフサイクル全体を考慮するTCOについて検討し始めました。その過程で、異なる部門で共有できる目標を重視するようになりました。
多くの組織では、設計、エンジニアリング、調達の各部門が縦割り型で別々に仕事をしています。なぜそうした壁を取り払うことが重要なのでしょうか。
JPP:調達部門とエンジニアリング部門には、同じ目標に向かって協力できる体制が必要です。これは市販品の生産、保守、その他の点で効率の良い、確実な製品を設計するためです。これらの部門が協力し合わなければ、それぞれの優先事項の違いが摩擦を生むでしょう。調達部門は部品コストの抑制を望みますが、製品性能を最大限に高めることに力を入れるエンジニアリング部門は、コスト削減はリスクが大きすぎると主張するでしょう。
製品を改良するために、調達部門は新しい手段を取り入れる必要があります。例えば仕様に異論を唱えたり、サプライヤーのイノベーションを取り入れたり、部品を再利用したりする方法についてです。そのためにはエンジニアリング、マーケティング、製造、その他の部門とのコラボレーションやリアルタイムの知見の共有が求められます。
効率化に向けて、ソーシングや標準化という点で活かせる機会にはどのようなものがありますか。
JPP:それは企業の属するセクターや活動内容によって異なります。その企業が手がけるのが反復的なビジネスや、ある程度規模の大きいビジネスならば、標準化やモジュラー化の方法を検討し、強固なプロセスや製品を作り上げることで恩恵を受けられます。つまり部品を大量に仕入れるため単価が安くなりますし、一度プロセスの検証を完了すれば、対処するべきリスクが減り、サイクルタイムが短縮します。これは自動車業界が典型的に行ってきたことです。例えば生産されるBMW Miniはどれも違いますが、少なくとも部品の80%は全車種に共通しています。同社には標準化やモジュラー化を実現できるだけの規模があるのです。
「調達部門とエンジニアリング部門には、同じ目標に向かって協力できる体制が必要です。これは市販品の生産、保守、その他の点で効率の良い、確実な製品を設計するためです」
JEAN-PIERRE PELLÉ氏
ARGON CONSULTING ディレクター
規模が大きくない業界でも、同様の効率化を実現することは可能でしょうか。
JPP:例えば建設業のような業界の場合、クライアントの仕様や要求によって建設方法が変わるため、プロセスの合理化はもっと困難かもしれません。しかし連携や作業方法の共有化は可能です。そしてこの点において、調達部門は市場に価値をもたらすことができます。なぜなら、調達部門はエンジニアリング部門に対して、新しい製品/テクノロジーの導入に関するサプライヤーのイノベーションや効率性の恩恵を受けたり、より効率的な作業プロセスによって製品の市場投入を早めたりする手段を提供できるからです。クライアントによって求める価値は異なりますので、エンジニアリング部門と調達部門は、彼らに提供できる価値の証拠を提示する必要があります。
設計、エンジニアリング、調達の各部門がより効果的に連携するために、企業はどのように各部門に権限を与えれば良いでしょうか。
JPP:これらの部門が同じ目標を掲げて連携できるようにするには、まずコラボレーションに対して社員がどれくらい意欲的かを把握し、彼らの利害関係を理解する必要があります。ゴールはコストの最適化だけではありません。グローバルに業績を改善することや、各職能の利害関係を理解してコラボレーションを容易にすることも目標です。職能横断的なチームは、効率的なコラボレーションを実現する優れた手段です。
調達、設計、エンジニアリングのコラボレーションを支援するという点で、テクノロジーはどのように企業の役に立っていますか。
JPP:製品イノベーションプラットフォームは、ユーザーが各自の特定の職務に必要な情報にアクセスできるように設計されています。企業の保有するすべての情報は、3D形状に基づいた新たな属性を追加することで強化されており、これが指紋のような識別情報の役割を果たすため、例えば「X用の部品は社内にあるか」といったクエリの結果を数秒で出すことができます。このようなデータ主導型の知見は、エンジニア部門とビジネス部門のシステムをグローバルに結びつける共通語の役割を果たします。
コラボレーションはどのようにイノベーションを促進しますか。
JPP:コラボレーションによって、調達部門は設計、エンジニアリング部門の信頼できるパートナーになれます。調達部門は、エンジニアリング部門がサプライヤーのエコシステムの恩恵を受けてイノベーション、効率性、市場投入スピードを強化することを支援できます。その結果、調達部門とエンジニアリング部門は、コスト、品質、サイクルタイム、サービスやその他の優先事項について、クライアントの求める価値の証拠を示すことができるのです。
Jean-Pierre Pellé氏はコンサルタントとして20年近くのキャリアを持ち、産業・エネルギー業界において、競争力、購買パフォーマンス、エンジニアリング効率、プログラム管理分野の多数のプロジェクトに携わってきました。コスト削減計画、国際的組織の最適化、調達プロセスの再定義、エンジニアリングパフォーマンスに関するミッションを率いた経験があります。 プロフィール
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