勉強男子の作り方

テクノロジーを活用し、男女間の学習ギャップを解消

Sean Dudley
25 April 2013

世界の学力試験の統計データに表れているように、男女の学習到達度には明確な差が存在し、男子が女子に後れを取っています。しかし教育現場では、男子児童・生徒の潜在的な学力を最大限に引き出すために役立つ新たなツールとして、タブレットやインタラクティブ・ゲームが利用されています。

従来の学校教育が男子に対して女子ほどの効果を上げていないことを示す証拠は、枚挙にいとまがありません。以下は、その一部です。

• 米国の独立研究機関Center on Education Policyが発行した2010年度の報告書では、米国のすべての州で男子の読解力が女子よりも低いことが立証されている。小学校では、読解力が「習熟している」とみなされるレベルに達している児童の割合が、女子では約79%であるのに対し、男子では72%にとどまっていることが明らかになっている。同様の格差は中学校や高校でも見られる。

• ジャマイカ教育省による報告書の統計データによれば、第4学年で言語運用能力の試験に合格した児童の割合は、女子では81%であるのに対し、男子では59%。また、算数の試験で優秀な成績を収めた児童の割合は、女子が55%であるのに対し、男子は36%にとどまっている。

• 英国のJoint Council of Qualificationsは2012年、セカンダリー・スクール(中・高等学校)の試験で女子の73.3%が合格点に達したと公表した。同様の結果を収めた男子の割合は、わずか65.4%だった。

• フランスの中等教育および職業訓練の修了試験においては、男女間で4ないし5パーセント・ポイントの成績差が常に生じている。しかも、フランス国民教育省によると、この試験では過去20年間一貫して男子の成績の方が低い。

好ましからざる要因

Michael Gurian氏は画期的な著作『Boys and Girls Learn Differently!』で、「女性が男性よりも優れている二つの機能領域は、記憶と感覚的な情報の取り込みです。それに対して男性は、空間的作業と抽象的推論の機能領域において女性よりも優れています。男子はいわゆる「男子脳」のおかげで、空間的な位置関係の処理が女子よりも得意」であると述べています。要するにGurian氏は、男女の学習パターンの基本的な違いを明らかにするとともに、生まれながらの情報の受け取り方と解釈の仕方の違いに応じて、男子と女子を異なる方法で教育するのが有効であると示唆しているのです。

しかし、ほとんどの学校ではそのような教え方を採用していません。「教育は過去100年ほど変わっておらず、農業またはフォード主義訳注1的なモデルに基づいています」と話すのは、ペンシルベニア州立大学教育学部教授で教育を専門とするAlison Carr-Chellman博士です。「つまり、教師が子どもたちの集団の前に立って情報や経験を与え、それが終われば子どもたちは次の授業に移るというやり方です。心の結び付きはほとんどなく、特に情報化時代においては、このような教え方は生産的でも適切でもありません」

「性別に基づく学習は現実のものとして受け入れられ、幼稚園から大学に至るまでの教室の設計、構築および活用方法に多大な影響を及ぼしています」

Michael Gurian氏
『Boys and Girls Learn Differently!』著者”

この問題は広く認識されています。この問題に取り組むためのプロジェクトとして、男子児童・生徒の学習を支援・発展させることを目的とした指導プログラムやカリキュラムの再開発も実施されています。ところが残念ながら、これらの取り組みは限られた成功を収めるにとどまっています。

しかし、テクノロジーが男子との関わり方を改善する手段であるという見方が次第に高まっています。Gurian氏の所見どおり、さまざまなテクノロジー・ソリューションが視覚・空間学習における大きな強みを発揮することにより、男子児童・生徒がこれまで以上に授業に没頭できるようになります。

リッチな体験を実現

映像、音声、写真および生のウェブ活動を一体化させたインタラクティブ・ホワイトボードのような視覚的なテクノロジー・ソリューションは、視覚学習を好むという男子の性質に対応しています。タブレットやタッチスクリーンも教育現場で勢いを増しつつあり、すでに優れた成果を報告している学校もいくつか存在します。

「画面上で画像とテキストを操作し、課題に対してユニークな回答ができるという点に関して、とにかく男子児童の心をつかむ何かが存在するのです。これは、白い紙を見つめることでは決して真似できません」と話すのは、米国ワシントン州スポケーンの小学校教師、Betsy Weigle氏です。

教師の支援と教師向けのコンテンツ提供を専門とするウェブサイト、www.classroom-teacher-resources.comを運営するWeigle氏は、Apple社のiPadとスマートスクリーン技術を児童の指導に利用しています。「男子児童が抱えている問題の一つは、長時間じっと座っているのが苦手であるということです。iPadのような視覚的なソリューションは、この問題への対処に役立ちます」と、Weigle氏。「教師が子どもたちに対して、ただ話をする以上のことができれば、子どもたちは必ず、特に男子の場合は情報の記憶力が大幅に増すでしょう」

英国スコットランドのグリーノックにあるCedars School of Excellenceは、世界に先駆けてタブレットを全生徒に支給した学校の一例です。タブレットの導入以来、男子生徒の集中力と成績が著しく改善したことを教師たちは確認しています。教師たちはまた、生徒が調べ物とデジタル・リテラシー・スキルの開発を容易に行えるようになり、男女双方にとって平等な競争の場が生まれ、男子生徒が持ち前の優れた視覚学習能力を活用できるようになったことも強調しています。

もう一つの例は、英国ウェールズのラネリにあるCoedcae Schoolです。この学校では、図書室用に2台のiPadを購入しました。このiPadは主に、男子の読書量増加を促すための電子書籍リーダーとして使用されています。

空間的ソリューション:インタラクティブ学習

教育用ゲームはインタラクティブな学習ソリューションの分野で大きな役割を果たしています。たとえば、ブルガリアの教育用ソフトウェア企業であるNimero社は、視覚・空間学習に言語運用能力とパズルの問題を組み合わせて、男子の学習プロセスを活用したゲームを製作しています。たとえば、Nimero社の小学校レベルの算数ゲームであるJumpidoは、一連のエクササイズとゲームで全身を使ったインタラクションを利用することで、男子を学習に没頭させるために特に適した要素である運動と競争を取り入れています。

「Jumpidoは、教室における男子児童の集中度を精神的にも身体的にも向上させます」と話すのは、Nimero社のCEOであるKiril Rusev氏です。「Jumpidoの運動と空間の要素は、男子児童の脳のプロセスに無理なく調和し、伝統的な指導手法では実現できないレベルのインタラクティブ性を可能にしています」

72%

米国の小学校では、読解力が「習熟している」とみなされるレベルに達している児童の割合が、女子では約79%であるのに対し、男子では72%にとどまっている。. Center on Education Policy(米国)2010年度 報告書

米国ニューヨーク州マンハッタンのQuest to Learnは、教室におけるテクノロジーの採用に関して独自の考え方を持った学校です。この学校では、ゲームの基本的な設計原則を用いた活発な学習コミュニティを推進することで、ゲームのような没入度の高い学習体験を生み出しています。このプロジェクトは、デジタル・ゲーム・デザイナーのKatie Salen氏が考案したものであり、教育の一形態としてのゲームに対する同校独特のアプローチは、テクノロジーをさまざまな形と目的を持った存在とみなしています。この教育手法の大きな柱であるテクノロジーとゲームは、生来の脳の機能を使って教育から喜びと楽しみを得る機会を男子児童にもたらしています。

この素晴らしき新世界

市場に出回るインタラクティブで革新的な教育用ツールの幅が広がり続けていることから、教師たちが男子児童・生徒の生まれながらの学習傾向をよりうまく活用できる可能性が高まっています。

「性別に基づく学習は現実のものとして受け入れられ、幼稚園から大学に至るまでの教室の設計、構築および活用方法に多大な影響を及ぼしています」と、Gurian氏。「女子と男子の問題に同時に対処することができるような、社会的変化の強力な中核が築かれつつあるのです」

訳注1:大量生産、大量消費を可能にした生産方式。フォーディズム。

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