最初はガスがあり、ガスだらけでした。惑星はありません。固体は何もありません。
では、そのガスから惑星を形成し始めるきっかけとなった力は何でしょうか?
科学者は、45億年以上前に激しい雷現象がダストとガスの雲に当たってダスト粒子が「粘着性」を帯び、互いに密着したと推測しています。この塊が他の塊と結合して大きくなって小惑星になり、最終的に惑星になったのです。このサブミリメートルからミリメートルのコンドリュールと呼ばれる球状ダストが隕石内で発見され、この理論の説得力が高まっています。
地球には強力な重力があるため、コンドリュール形成に必要な無重力に近い状況を完全に再現することは不可能です。そのため、ゲーテ大学フランクフルトの教授Frank Brenker氏とBjörn Winkler氏は、学生と技術者、ハッカースペースのプログラマからなるチームを編成し、国際宇宙ステーション(ISS)で可能な無重力状態の実験を考案しました。
EXCISSの導入
ISSでの空間と研究時間、そして資材をISSに運ぶロケットの積載重量をめぐる競争は熾烈です。学生たちは、ドイツ航空宇宙センター(Deutsches Zentrum für Luft und Raumfahrt e.V:DLR)のÜberflieger(優秀者)プログラムマネージャーJohannes Weppler氏が運営する全国コンテストを見つけました。このコンテストへの24の参加者の中から、ゲーテ大学フランクフルトの実験(EXCISS:Experimental Chondrule Formation at the ISS(ISSでの実験的コンドリュール形成))を含む3つが宇宙への旅に選ばれました。
「この実験が計画どおりに進むと非常に楽観的に考えています」
JOHANNES WEPPLER氏
ドイツ航空宇宙センター ÜBERFLIEGER(優秀者)プログラムマネージャー
「この実験が計画どおりに進むと非常に楽観的に考えています」とWeppler氏は述べ、誰もが望む受賞者にEXCISSを選んだ理由を説明しています。
この実験は、2018年後半にドイツの宇宙飛行士でISS船長のAlexander Gerst氏が実施しました。
雷現象
ISSのサイズと重量の制限を満たすほど小さな機器を作成し、惑星形成以前の状況を再現することは非常に大きな課題でした。この実験は、ISSの実験庫に入るように特別に作成された10 x 10 x 15センチメートル(約4 x 4 x 6インチ)の容器Nanolabに収まらなければいけませんでした。
この実験は、Nanolab内のガス状ダストにさまざまなエネルギーレベルを衝突させることを目的としています。
「コンデンサの充電電圧を変化させることで、雷現象のエネルギーを3ジュールから30ジュールの任意の値に調整できます」と、この実験を考案し、実験装置を作成した博士課程学生の1人Dominik Spahr氏は語ります。
データの取得
この実験から分析用のデータを取得する方法を見いだすには、巧妙な手法が必要です。光学顕微鏡を備えた高性能ビデオカメラで、雷現象中と雷現象と雷現象の間のダスト粒子の振る舞いを記録します。しかし、カメラ自体はエネルギーサージから守る必要があり、これはフェライトビーズを含む保護シールドで実現しました。
静止画像も撮影するビデオカメラは電子実験ノートに接続し、自動的にデータを取得します。ISSは無線で地球と接続されているので、日々の結果はクラウドコンピューティングベースのプラットフォームであるサイエンスクラウドに送信されます。チームメンバーはこのプラットフォーム上で毎日の結果を入手し、翌日のテストの前に必要な調整を行えます。
ダスト粒子の変化やコンドリュールの存在の確認は、(たとえそれがあったとしても)Nanolabが地球に戻ってきた後にしかできません。「電子顕微鏡などのさまざまな手法を使ってダスト粒子を分析します」と、EXCISSプロジェクトの博士課程学生のリーダーTamara Koch氏は述べています。「ダスト粒子を地球上で実施した実験結果や隕石で発見された天然コンドリュールと比較します。これには少なくとも数カ月かかります」
ネクストジェネレーション
このプロジェクトは、ドイツとヨーロッパ全体の宇宙に対する取り組みの新しい時代の到来を表しています。
「もちろん、宇宙では米国とロシアの2国が優勢で、最も際立った勢力です」と、Weppler氏は言います。「とはいえ、ドイツも重要な役割を果たすことを目指しています」
そのため、ドイツは欧州宇宙機関への財政貢献が2番目に多い国であり、DLRは国際的なパートナーと一緒に多くのプロジェクトを行っているとWeppler氏は述べています。熱烈なスタートレックファンのWeppler氏は、若者が宇宙について野心的に考えるのを後押しする機会を歓迎しています。
米国のこのテレビシリーズのキャッチフレーズは、「人類未踏の宇宙に勇敢に航海する」というものでした。この信条は、明らかにWeppler氏に影響を与えました。
「スタートレックへの愛着は、私にとってこれまでも、そして今でも大きな刺激となっています」と、Weppler氏は語ります。「この実験は、スタートレックの中核概念の1つである宇宙探査に関連しています。彼らはISSで独自の実験を行った最初のヨーロッパの学生です。まさに『ヨーロッパ学生未踏の宇宙に勇敢に航海する』と言えますよね」
ダッソー・システムズは、BIOVIA学術会議を介してEXCISS実験を支援しています。 For more information, please visit: go.3ds.com/gUs
To hear the Goethe University team talk about
the project, please visit: go.3ds.com/Goethe