パーパスの力

「パーパス」に忠実なブランドが大きなビジネスの成功を収める理由

Lindsay James
23 November 2020

明確なパーパスを中心に事業を構築する組織は、単なる財務実績をはるかに超えた成果を達成することができます。そのような企業は従業員と顧客をいっそう満足させることができ、最終的にはすべての人にとってよりよい世界を構築する手助けをします。

米コロラド州の発明家であり、オフィスインテリアでも名高いハーマンミラーの子会社であるハーマンミラー・リサーチの社長、ロバート・プロプスト氏が、「現在のオフィスは不毛の地です。活力を奪い、才能を押し込め、達成を妨げます。目的が達成できない状態や、努力が実らない状態を目にするのはいつものことです」と宣言したのは、1960年のことでした。

プロプスト氏はその後8年を費やし、世界初のオープンプランのモジュラーシステムであるアクションオフィスシステムを開発しました。今よりも生き生きと、イノべーティブに、もっと生産的に働けるようなオフィス環境を創り出したい、という同氏のパーパス(目的意識)が込められた、各コンポーネントを自由に組み替えられる画期的なオフィスシステムです。

このシステムはたちまちヒットし、世界中の職場のレイアウトを変えただけでなく、ハーマンミラーをインテリア産業のリーダーな地位に引き上げました。実際、20世紀半ば頃には、ハーマンミラーは現代オフィス家具の代名詞となっていました。伝説的デザイナーのジョージ・ネルソン氏やイームズ夫妻(チャールズ・イームズおよびレイ・イームズ)と協力し、同社はインダストリアルデザインの古典となる製品を数多く世に出していきました。

1960年代、ハーマンミラーはより健康的で革新的な、いっそう生産的な職場を創るために、組み合わせが自由なコンポーネントからなる世界初のオープンプランのオフィスシステムとして、「アクションオフィス」を開発しました(Image © Herman Miller)

ハーマンミラーのサステナビリティ担当ディレクターを務めるGabe Wing氏は、同社が継続的に成功を収めている要因はパーパスへのコミットメントを続けていることにあると述べます。「当社のパーパス(事業目的)は、人類のためにデザインするということです。パーパス・ドリブン・カンパニーであるということは、毎日自分が職場に出勤する理由が分かっているということです。どの職位にあろうと、その共通の理由のために皆が働いているのです」

「パーパス・ドリブン・カンパニーであるということは、毎日職場に出勤する理由が分かっているということです。どの職位にあろうと、その共通の理由のために皆が働いているのです」

ハーマンミラーのサステナビリティ担当ディレクター、Gabe Wing氏

従業員でも顧客でも、その間に大きな忠誠心を育むのはこのパーパスであると、Gabe Wing氏は述べます。「自社の従業員がみな、大きなパーパスを共有してその達成に取り組むとき、彼らは自発的に努力し、求められれば喜んでそれ以上の働きをします。そして、顧客が購入するのも単なる製品ではありません。ブランドとよりよい世界を創るという理想の支援を選択しているのです」

決意の報酬

カナダのアパレル企業であるtentreeもまた、この種のアプローチの利益を享受しています。製品が1つ売れるたびに10本の樹を植えると約束する同社について、CEOのDerrick Emsley氏は、「まず、植樹のために企業が存在し、アパレルブランドは副次的なものです」と説明します。

tentreeのメッセージは顧客の間に共感を呼び、同社はこれまでに4,900万本以上の樹を植えました。「当社のチームは3倍の規模に成長しました。わずかばかりのTシャツを作っていた当社は、ほんの5年の間に、年に50万着以上を生産するようになりました」と、Emsley氏はケーススタディの中で述べています。

カナダのアパレル企業のtentreeは、製品が1つ売れるたびに10本の樹を植えると約束しています(Image © tentree)

優れたパーパスがよりすばらしい成功をもたらす事例は、これだけではありません。デロイトの直近のレポートによると、パーパス・ドリブン・カンパニーはより高い市場シェアを獲得し、競合企業よりも平均して3倍速い成長を遂げながら、より高い従業員満足度を達成しています。実際、デロイトが実施した別の調査では、パーパス・ドリブン・カンパニーで働いていると述べた従業員の73%が仕事に没頭しているのに対し、パーパス・ドリブン型とは言えない企業の従業員ではわずか23%にすぎませんでした。

これに加えて、今日の企業は自社のパーパスに関連する問題に対処する責任を強く持つ顧客は、全体の55%を占めます。「ミレニアル世代とZ世代は、自分たちの価値観と一致する企業をひいきにし、支援する確率が高いという、当社の2019年ミレニアル年次調査の結果を合わせて考えるならば、顧客やクライアントは企業やそのブランドが支持するものを本当に気にかけていることが分かるでしょう」と、米デロイトのCMO、Suzanne Kounkel氏は述べます。

55%

の消費者が、今日の企業はパーパスに関連する課題に対処するにあたり以前より大きな責任があると、考えています

パーパス・ドリブン・カンパニーはまた、新型コロナウイルスによるパンデミックのような試練の時期に、いっそう繁栄する傾向があります。「私の好きな格言の一つは、小説家のジェームズ・レーン・アレンの言葉です。『逆境が人の性格を形成するのではなく、逆境がその人の性格を暴くのだ』と、彼は述べました。パーパスについて、正にそのとおりだと思います。この世界的パンデミックの時期に、私たちはそれを目の当たりにしてきました」と、Kounkel氏は述べます。「現在の環境では、企業は自社が支援することと自社の位置づけの両方の点で、自分たちが果たすべき役割は何かを決める必要があります。これを適切に行った企業は、自社のパーパスに忠実であり続けた企業として大きな注目を浴びています」

新型コロナウイルスによるパンデミックの間、ハーマンミラーは自社の従業員のためにフェイスマスクやフェイスシールドなどの個人防護具(PPE)を製造し、グローバルな物資不足の負担とならないようにしました(Image © Herman Miller)

実際、新型コロナウイルスによるパンデミックの間、ハーマンミラーは自社の製造能力を利用して、現場の医療従事者のためにフェイスマスクやフェイスシールドなどの個人防護具(PPE)を提供しました。同社はそれにより、「人類のためにデザインする」という自社のパーパス(事業目的)に忠実であり続けたのです。「私たちはまた、自社の従業員に使ってもらうことで彼らがグローバルな物資不足の影響を被らないようにするためにも、PPEを製造しています」と、Wing氏は述べます。

よりよい未来を創る

多くの企業がパーパスの力を実証する中、今日では企業の成功とは単なる財務実績をはるかに上回るものであり、そのことをかつてないほど多くの企業が理解しつつあると、Kounkel氏は考えています。

「クライアントや同業他社との話し合いにおいて、ステークホルダーが要求する活動に明確な変化が見られます」と、Kounkel氏は述べます。「ますます多くの大手企業が自社の企業戦略にパーパスを組み込み始めており、その結果、より大きな成功を収めています。最終的には、世界を以前よりも良いものにするために自分たちの仕事があるのです」

Wing氏もこれに同意します。「私たちは心躍る新しい旅の途上にあります。当社の一連のブランドが成長し進化する中で、私たちはパートナーと協力して進み、驚くほどすばらしいもの、すなわち誰にとってもよりよい世界をデザインするために役立つ知識と知見を求めて相互に助け合うことでしょう」

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