タッチスクリーン技術の革新

SF的アイデアの実現に近付いたタッチスクリーン・メーカー

Rebecca Lambert
25 October 2012

1 min read

デジタル世界は今まで以上に没入型になろうとしています。複数のユーザーや物体を認識するスーパー・タッチスクリーンに始まり、形状変化によって物理的なボタンを形成し、ユーザーに手触りの感覚をもたらすことができるタッチスクリーンに至るまで、世界中の多数のイノベーターたちがタッチスクリーン開発の限界に挑む技術を生み出しています。

2012年1月、次世代触覚技術(ハプティクス)の開発メーカーであるSenseg社は、タッチスクリーンを「フィール・スクリーン」に変える初の量産対応製品を発表しました。Senseg社の特許取得済みTixel技術は、電気的に生成した力場を使用して、物理的な質感、へり、輪郭などの感触をタッチスクリーン上に再現します。「フィール・スクリーン」を使うと、ユーザーはオンラインで衣服を選ぶときにはコットンやシルクの手触りを感じ、火山について調べるときには玄武岩や黒曜石のきめを感じ、Webでソファーを購入するときにはレザーとベルベットの手触りを比べることができます。触感をデバイス操作のガイドとして利用することもでき、視覚に頼る操作を最小限にしつつ正確な操作を行えるようにしたり、グラフィックス、サウンド、タッチを組み合わせたマルチモーダル体験を多用したりすることもできます。

Senseg社は、コンピュータとビデオの画面でのユーザー・エクスペリエンスを刷新している多くのイノベーターのうちの1社にすぎません。SID Display Week 2012では、Touch Revolution社とTactus Technology社によって、フラットなタッチスクリーンを盛り上げて物理的なキーボードにするAndroidタブレットのプロトタイプが発表されています。革新的なマイクロ流体工学技術を採用している、特許取得済みのタクタイル層コンポーネントが、タッチスクリーンの表面から隆起して現れる(元に戻ると見えなくなる)物理的なボタン、基準線、形状を次世代のハプティクス・ユーザーインターフェースに提供します。ユーザーは、これらの物理的なボタンをキーボードのキーと同様に指先で感じて押し、操作することができます。ボタンが不要になったら、スクリーン表面に引っ込めれば見えなくなります。タクタイル層は、ディスプレイ・スタック内の別の階層を置き換えるため、標準的なタッチスクリーン・ディスプレイの厚さが増すことはありません。多くの人にとって、これらのイノベーションは遠い未来の話のように感じられるかもしれません。しかし、これらはすべて実在しており、近い将来、主流製品に採用されることでしょう。

将来の予測

映画の制作者たちは、長年にわたって、高い知能をもつロボット、言葉を話すコンピュータ、3Dホログラフ、空飛ぶ自動車などのビジョンを見せて、私たちの世界が将来どうなっているかを予測しようとしてきました。そして、これらのビジョンが正しかった確率は驚くほどです。特に、将来私たちがデジタル・コンテンツをどう操作しているかを示したビジョンは、とりわけ正確であったことが判明しています。たとえば、1982年に制作されたディズニーのオリジナルSF映画『トロン』では、エンコム社の社長が大型テーブルトップ・コンピュータのタッチスクリーンを使って、邪悪なコンピュータ・システムの「マスター・コントロール・プログラム」と通信しますが、このタッチスクリーン付きテーブルトップ・コンピュータは、Microsoft PixelSense技術を搭載した今日のSamsung UR40と驚くほど似ています。

それから20年後の2002年に制作された『マイノリティ・レポート』では、新世代の想像力を形にして、トム・クルーズ演じるキャラクターが黒い手袋をはめて、自分の周りを取り囲む透明な画面に表示されたコンポーネント、グラフィックス、データを巧みに操作しています。映画で描かれた2054年はまだ遠い先の未来ですが、今日のハイテク業界は、『マイノリティ・レポート』スタイルの技術をすでに提供しています。たとえば、世界中の数百万の人たちが、Xbox 360でMicrosoft Kinectを使用し、コントローラなしでゲームをプレイしています。RGBカメラ、深度センサー、マルチアレイ・マイク、独自ソフトウェアを実行するカスタム・プロセッサを組み合わせたKinectは、全身の動きを3Dで追跡し、顔の表情を認識し、音声コマンドを理解して、新しいレベルのゲーム体験を作り出しています。ジェスチャーとタッチの両方を組み合わせた製品はまだ市販されていませんが、ハイテク業界は、このような製品を作り出す力を持っています。

13億

モバイル・デバイスで使われるタッチスクリーン・ モジュールの世界全体の 市場規模は、 2018年までに13億個に 達すると予想されています。 Global Industry Analysts社

オーストリアのタッチスクリーン開発メーカーisiQiri社のCEOであるRichard Ebner氏は、SF映画の中のアイデアが現実になるのは、アイデアの現物に対する需要があるときだけだと説明しています。「今日のフォーム・ファクタは、『マイノリティ・レポート』で見たものとは確かに異なっています。コンテンツを操作するために特殊な手袋をはめる必要はなく、技術は、壁や家具のように身の回りにすでにあるものに、緊密に統合する必要があります。私たちの身の回りこそ、技術が実際に使われる場所だからです。」タッチスクリーンの開発が勢いを増してきたのは数年前からですが、タッチスクリーンのアイデア自体は50年ほど前に生まれていました。最初のタッチスクリーンが発明されたのは、Royal Radar Establishment社(英国マルバーン)の社員であったE・A Johnson氏が静電容量式タッチスクリーンのアイデアを発表した1965年だと考えられています。Johnson氏はプロトタイプの図面や写真を使って、この技術がどのように機能するかを説明しただけでなく、航空管制にこの技術を利用すれば、管制官がレーダー画面上のブリップを直接操作できることも説明しました。最初期のこの設計は初歩的なもので、一度に1回のタッチしか認識できませんでしたが、同様の技術が今日のiPhoneまで受け継がれてきています。

iPhone世代

Apple社のiPhoneが登場して以来、タッチスクリーン市場は目覚ましい勢いで成長を続けており、この業界で成功しようという意欲に満ちた新世代のスタートアップ企業が多数生まれています。スタートアップ企業の多くは、一般への宣伝広告を供給先のデバイス・メーカーに担ってもらっているため、革新的なこれらの企業の名前は広く知られていない場合が多いのですが、その製品は、私たちの職場や家庭に急速に浸透してきています。

Apple社元社員のMark Hamblin氏を始め、タッチ・デバイス市場における業界のパイオニアたちによって設立されたTouch Revolution社は、iPhoneのユーザー・エクスペリエンスをさらに大きな規模で実現することを中心課題としています。Hamblin氏は次のように述べています。「Apple時代には、数々の重要なプロジェクトに参加しました。一番最近のものは、製品設計シニア・エンジニアとして参加したiPhoneタッチスクリーン専門のプロジェクトです。iPhoneが開発されて市場に広く受け入れられ、それがスマートフォン業界を大きく変えたのを見て、これは何か特別なことだとすぐに実感しました。そして、タッチ対応のエクスペリエンスをさらに進化させることに集中したいと思いました。」

2007年にiPhoneがリリースされる前、タッチスクリーン技術が使用されていたのは、それを試験的に導入する予算的余裕がある企業の間にほぼ限られていました。携帯電話の分野では初期的な反響がある程度得られましたが、スクリーンの応答性が低く、ほとんどのデバイスは一度に1つの接触点しか感知できませんでした。今日では、大半のモバイル・デバイスで高品質のマルチタッチ機能が標準で搭載されることがあたりまえになっており、タッチスクリーン技術の応用が急速に進んでいます。

Global Industry Analysts(GIA)社が最近実施した調査の「Touch Screens in Mobile Devices: A Global Strategic Business Report」では、モバイル・デバイスで使われるタッチスクリーン・モジュールの世界全体の市場規模は、2009年には推定販売数が1億8,430万個であったのに対して、2018年までに13億個に達すると予想されています。13億個のうち、iPhoneで使われている投影型静電容量式(PCAP)タッチスクリーンがモバイル・デバイスの最大市場を占めていて、このシェアは拡大の一途をたどると予想されています。

PCAPスクリーンでは、スクリーンを押したりスタイラスを使ったりしなくても、デジタル・オブジェクトの移動や操作を指先で簡単に行うことができます。この機能のおかげで、PCAPスクリーンは短期間に、スマートフォン、タブレット、電子書籍端末、GPSユニット、テレビなどを含むタッチスクリーン・デバイスの大半で選択される技術となりました。PCAPは抵抗膜式スクリーンなどの他の選択肢より多少コスト高ですが、多くの場合、割高な価格もユーザー・エクスペリエンスの強化によって容易に正当化されると考えられています。

Hamblin氏は次のように述べています。「iPhone以降、ユーザーが期待する事柄が大きく変わりました。今では、スクリーンがタッチ対応で、iPhoneのように動作することは皆が期待する事柄になっています。考えてみれば、タッチ操作はデジタル・コンテンツを操るうえで最も自然な方法です。子供に携帯電話を渡せば、すぐにスクリーンに触れ始めるのですから。」

Hamblin氏は、ユーザビリティの要因だけでも、家庭や職場の多くのインターフェースが近い将来タッチスクリーンに置き換わる理由になると考えています。「大型家電製品などはその例です。当社では、洗濯機や電子レンジなどの家電用にタッチスクリーン・インターフェースを開発するプロジェクトを多数進めています。」

指先でアプリを操作できる投影型静電容量式(PCAP)タッチスクリーンは、モバイル・デバイスの大半で選択される技術となりました。

メーカーにとって、タッチスクリーンには大きな可能性があります。「タッチスクリーン・インターフェースなら、洗濯機に一定数の操作ボタンを備える代わりに、複数のオプションをユーザーに提供できます。洗濯機を使う人に適した操作モードに合うインターフェースを完全に再構成できるのです。ティーンエイジャーならば、単純なオン/オフ機能だけを望むこともあるでしょうが、洗濯機を使い込んでいるユーザーならば、もっと高度な選択設定を利用したいでしょう。この柔軟性を実現できるのがタッチ・インターフェースです。また、将来も使い続けられるインターフェースにすることも可能です。メーカーが電子レンジに新機能を追加したい場合に必要なのは、ソフトウェアを更新することだけです」(Hamblin氏)。

「iPhone以降、 スクリーンがタッチ対応で、 iPhoneのように 動作することは皆が期待する 事柄になっています。 」

Mark Hamblin氏
Touch Revolution社、共同創業者

スクリーン・サイズの拡大

タッチスクリーン技術の革新を引き起こした功績は確かにApple社のものですが、他の主要テクノロジー・ベンダーも重要な影響をもたらしています。たとえばSamsung社の、タッチ機能とアンチグレア技術を統合した一連のSuper AMOLEDスクリーンは、スマートフォン市場で人気を博しています。Microsoft社は、Apple iPadタブレットへの対抗措置が遅れたことで厳しい批判を浴びましたが、タッチスクリーン・タブレットPCラインナップ、Microsoft Surfaceによってタブレット市場で巻き返しを図りたいと考えています。

実際、Microsoft社が最初にタッチ技術を採用したのは何年も前のことで、2007年5月には、市販製品によって、大規模なマルチタッチ・コンピューティング技術を市場に持ち込んだ最初の大手ハイテク企業の1社となりました。このテーブルトップ製品はその後、Microsoft PixelSenseを採用したSamsung SUR40へと進化しています。360度どの向きからも操作できる、厚さ10cm(4インチ)のこの製品は、タッチ、自然な手のジェスチャー、ディスプレイ上に置いた実際の物体に応答する水平ユーザー・インターフェースを備えており、ユーザーは情報やデジタル・コンテンツをシンプルかつ直感的に操作することができます。

ニュース専門放送局MSNBC社が報道した2008年アメリカ大統領選挙の番組では、実際に動作している第1世代のMicrosoft製タッチスクリーン・テーブルが大きな役割を果たしました。MSNBC社の政治担当ディレクター、Chuck Todd氏は、放送中にこのスクリーンを使って、当選確定までの選挙戦の情報と分析をすばやく容易に共有していました。Todd氏は、投票と選出の結果の分析、傾向データと人口統計情報の表示、投票パターンの特定と結果予想のための地図操作など、指のフリックですべてを操作しました。

一方、ラスベガスの「Rio iBar」というバーでは、顧客がテーブルのタッチスクリーンを操作することで、特製カクテルを創作して注文できるようになっています。顧客は、バーの周辺を仮想世界で散策したり、店内の別のテーブルに座っている人との交流やチャットを行ったりもできます。

Gartner社のレポート『Cool Vendors in Imaging and Display Devices 2012』で最近取り上げられた、Circle Twelve社の創業者社長であるAdam Bogue氏は、次のように述べています。「従来のコンピュータ・インターフェースは個人向けに設計されていますが、相手と実際に会って共同で作業したいときには、コンピュータが妨げになる場合があります。」

「マルチタッチ式のスマートフォンに続き、タブレットも広く受け入れられて、共同作業用の大型ディスプレイとテーブルトップ・コンピュータが今後成長するための準備が整いました。それが現実となるときには、誰が操作しているかを認識する『マルチユーザー』対応の機能がますます重要になるでしょう」(Adam Bogue氏)

isiQiri社のEbner氏は、タッチスクリーンの将来は、複数のユーザーを同時に認識できる大型デバイスの開発にかかっているという意見に同意しています。こうしたタッチスクリーンでは、1つの画面で複数の人が操作できます。

Ebner氏は次のように述べています。「大型LCDパネルの価格が下落の一途をたどっていることが、このトレンドの原動力となっています。30以上の同時タッチを区別できるシステムは購入可能ですが、このような規模のシステムに対する需要はほとんど存在しません。個人的には、2人から4人のユーザーが一度に同じデバイスを操作できる4タッチから8タッチ程度が需要の中心だと考えています。たとえば、タッチスクリーン式のコーヒー・テーブルで写真のアルバムを見たり各写真を拡大したりする、タッチスクリーン式の情報キオスクで情報にアクセスする、レストランで家族がタッチスクリーン・メニューを使って料理を注文する、などの用途が考えられます。」

「マルチタッチ式のスマートフォンに続き、タブレットも広く受け入れられて、共同作業用の大型ディスプレイとテーブルトップ・コンピュータが 今後成長するための 準備が整いました。」

Adam Bogue氏
Circle Twelve社、社長、創業者

たとえば、ニューヨーク市では、約250台の公衆電話を置き換える形で、81cm(32インチ)のスマート・タッチスクリーンの試験導入を実施しています。わかりやすいスクリーンは、古めかしい公衆電話より魅力的な外観で、レストラン、店舗、観光スポット、交通情報など、周辺地域に関する有益な情報を提供します。防水、防塵加工が施されたスクリーンはホースの水で洗うことができます。この試験導入プログラムが成功すれば、ニューヨーク市に12,500台ある公衆電話のすべてが置き換えられる可能性があります。

圧倒的なシェアを持つApple社のiPadに対抗して、Microsoft社が発表したSurfaceタブレットは、マグネット式コネクタでタブレットに張り付く、3 mm厚の感圧式Touch Coverキーボードが特長となっています。(写真提供:Microsoft社)

限界への挑戦

Senseg社、Touch Revolution社、Tactus Technology社などの企業にとっては、タッチ技術の普及によって、ユーザー・エクスペリエンスをさらに強化することに対する需要が生み出されていることになります。これらの企業は、こうした傾向の中で、タッチスクリーンに触覚を取り入れることに取り組んでいます。

Senseg社は、タッチスクリーンに触覚のエクスペリエンスを付け加える分野をリードしています。Senseg社の創業者でCTOでもあるVille M殻inen氏は次のように述べています。「DJミュージック・アプリではレコードを動かす感触、ゴビ砂漠の画像にアクセスするときは砂の感触、タブレットで電子書籍を読むときはページの角の感触を作り出すタッチ・フィードバックによって、ディスプレイ上のビジュアル・コンテンツを拡張できます。当社では、デバイス全体を振動させなくてもユーザーの指があるちょうどその場所に正確な感触をもたらし、同時に、モバイル・デバイスの電力はごくわずかしか消費しない非常に効率的なソリューションを開発してきました。」

Disney Research社は、REVELでそれに似たコンセプトを開発してきました。拡張現実型のこの触感技術では、仮想の触覚質感で本物の物体の質感を拡張することによって、物体の感触を変えることができます。仮想の質感は、ユーザーが装着するデバイスから取得されます。このデバイスは、ユーザーの身体の任意の場所に微弱な電気信号を送り込み、ユーザーの指の周りに振動電磁場を生成します。ユーザーが何かの表面の上で指を動かすと、特徴的な触覚質感を感じることになります。

Disney Research社では、Microsoft社のジェスチャー・ベースのイノベーションであるKinectの機能を利用し、この技術をゲーム利用のシナリオだけでなく、日常生活にも応用する実験に取り組んでいます。Touchと呼ばれる同社の静電容量式技術は、日常の物体に適用されるさまざまなタッチ・ジェスチャーを検出できます。研究者によると、この技術を活用することで、特定の方法で握ると解錠されるスマート型ドアノブの作成や、利用者の位置を検出できテーブルや椅子の製作が可能となります。また、指と指を合わせたり、手のひらを軽く叩いたりすることで電話を操作できるようになります。

こうした機能の魅力的な応用は無数に考えられます。機能がもたらす可能性については研究者の調査がまだ続けられていますが、すでにゲーム、適応型環境、スマート・オフィス、車内操作、リハビリテーションの分野への応用が有望視されています。

それでは、この種の機能が一般向けのコンピュータ画面やモバイル・デバイスに搭載されるのはいつになるでしょうか。Senseg社では、メーカーが消費者向け製品にこれらの技術を統合するのは2013年に始まると予想しています。TactusTechnology社とTouch Revolution社のタクタイル層も業界で高く評価されてきており、顧客の要望が特に多いのはゲーム・コントローラ類やナビゲーション・デバイスです。この技術を使用する当初の製品は2013年中ごろまでにリリースされる見込みです。

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