20年前、貴重な時間をかけて標準部品のCADモデルを検索、さらには作り直しまでしている設計のプロを支援する目的で、TraceParts社を創業しました。同時に、部品メーカーがインターネットの力を利用して新規顧客、新規市場を開拓するのを支援したいと考えてもいました。
2001年にインターネットは爆発的な進化を遂げ、1990年代半ばのグラフィカルHTMLページという初期の粗削りなものから、わずか数年のうちにイノベーションの力によって高度なオンラインシステムへと様変わりし、データベースのやり取りや取引実行が可能になりました。
そこで同年、Traceparts.comを立ち上げ、2Dモデル、3Dモデル、図面などを含め10万点に上る部品を扱ったオンラインデータベースの提供を開始しました。最初の1年間でこれらのファイルは6,800ダウンロードされました。業界内で紙のカタログや煩雑な企業向けファイルサーバーがまだ使用されていた中で、このデータベースは大きな成功を収め、創業当初のデジタルカタログの配布媒体であったフロッピーディスクをはるかにしのぐ大躍進となりました。現在、このデジタルライブラリでは1億点を超える部品情報を扱い、年間8,000万を超えるCADファイルがダウンロードされるまでになりました。
これにより、OEMでは設計やエンジニアリングで費やされていた何千万という時間を節約できただけでなく、新たな部品を不必要に導入していたことで上流、下流の工程にかかっていた膨大なコストも大幅に削減できるようになりました。ダウンロードされた製品の85%が購入につながるという、部品メーカーや販売業者にとっては大規模でもっとも適格な新規顧客ベースへのアクセス手段となっています。またサプライヤーにとっても、顧客のニーズや嗜好に関して、重要なデータ主導の視覚化が得られるようになりました。
オンラインカタログを企業間マーケットプレイスへ
そして現在、企業間(B2B)オンラインマーケットプレイスという新世代の技術により、サプライヤーやバイヤーに仲介業者不要の、地域、規模、プロセスといった取引上の障壁も取り除かれたオープンで直接的なエコシステムがもたらされています。これはすなわち、メーカーにとっては標準部品や機器の直接購入、カスタム製造の直接契約への道が開けたということです。
このマーケットプレイスは、調達のプロフェッショナルにとっては適格なサプライヤーを発掘して業者リストを拡大する手段となり、同時にサプライヤー側にとっても新たなビジネスの機会を見出す場となっています。また等しく重要なのが、CAD設計者と購買業者の連携を長らく妨げてきた、システムサイロが崩壊したことです。
革新的な企業間マーケットプレイスのイノベーターとの提携は、当社のお客様であるメーカーのCADコンテンツ向けの重要な新しいチャネルです。こうした提携により、メーカーが接触できる見込み客の数を即座に増大できます。また、販売サイクルの加速、調達プロセスの一新、ライフサイクル可視性の増大といった、さらなるメリットももたらされます。
マルチチャネル戦略
CADコンテンツという物理的ではないものを扱う販売業者として、新興する企業間マーケットプレイスに参画していくべきだという当社の経営判断は理にかなったものです。当社のモットーは、「製品コンテンツをどこにでも」というものです。マーケットプレイスを介した標準部品へのアクセスの最大化により、あらゆる関係者に対して目に見える形でメリットをもたらします。
一方、商品の販売代理店側からみると、この企業間マーケットプレイスという新たな存在は破壊的な変革力を持ち、対応を迫られるでしょう。とはいえ、OEMやサプライヤーにとってもメリットがあることは明らかです。ですから当社のお客様に対しては、当社がすでに提携しているマーケットプレイスはもちろんのこと、それ以外のマーケットプレイスにも取引パートナーとして参加することをおすすめしています。
「企業間インダストリアル・マーケットプレイスという強力な存在の出現は、企業にとって、切実な、緊急ともいえるレベルでデジタル店舗の整備に意欲的に取り組む新たな原動力となっています」
Gabriel Guigue氏
TraceParts社共同創業者兼代表取締役
また、お客様に対しては、自社ウェブサイトにSaaS(Software as a Service)の企業間eコマースソリューションを統合することも検討するようおすすめしています。ビジネスを拡大するためにはマルチチャネルで販売やマーケティングを展開する戦略が有効であることが実証されており、そうすることで顧客のニーズや嗜好に関する価値あるデータを収集できるようになるためです。
デジタルでコンテンツを提供
マルチチャネル戦略を展開する、その第一段階となるのは標準化されたデジタル形式で製品情報を作成することです。3DモデルやBIMモデルは、最近の企業間コマースやインダストリー4.0のビジネスモデルでの基盤となっています。当社の推定ではオンライン3Dカタログを備える部品メーカーはまだ20%にも達していないため、この戦略には測り知れないほど大きな成長の余地があります。
このような理由から、当社では、お客様が紙のカタログをデジタル化し、部品の3Dモデルを構築することの支援に、事業のかなり多くを注力させています。企業間インダストリアル・マーケットプレイスという強力な存在の出現は、企業にとって、切実な、緊急ともいえるレベルでデジタル店舗の整備に意欲的に取り組む新たな原動力となっています。
Gabriel Guigue氏は、TraceParts社の共同創業者兼代表取締役です。1998年に同社を創立するまでは、アラブ首長国連邦ドバイ市のTrouvay & Cauvin社や台湾台北市のルノーグループで調達やマーケティングに携わっていました。Emlyon経営大学院卒、サン=ロマン=ド=コルボッシュ在住。プロフィール