核融合エネルギーの 未来を目指して

核融合が将来の世代に必要となるすべてのエネルギーを 提供すると科学者は自信をのぞかせています。

Lindsay James
17 May 2016

1 min read

核融合エネルギーの将来性は約1世紀にわたってもてはやされてきました。今後数十年間は商用生産の薄く未だに実現 しないかもしれず、また再生可能エネルギー信奉者からは、ITERなどの巨大プロジェクトはより短期的な解決策からかけ 離れた供給源であるとの不満が漏れていますが、小規模な民間ベンチャー企業は、核融合の実用化を早めるかもしれな い結果を明らかにしています。

1930年代以来、科学者は太陽が核融 合エネルギーを生み出すプロセスを 模倣できると信じています。「エネル
ギー放出を得るには、軽い原子核を融合し てより重い原子核を形成する必要がありま す」と、マサチューセッツ工科大学のプラ ズマ科学核融合センター(PSFC:Plasma Science and Fusion Center)の原子力科 学および工学科の教授Ian Hutchinson博 士 は 語 り ま す 。「 そ の た め に は 、 さ ま ざ ま な 種類の水素の混合気体を太陽の10倍の温 度(絶対温度100万度K以上。摂氏ではこの 温度はほぼ同じであり、華氏では約180万 度 )に 暖 め 、そ の 高 温 プ ラ ズ マ を 閉 じ 込 め る 必 要 が あ り ま す 。最 も 一 般 的 に は 、こ れ は ト カマクと呼ばれる環状磁気容器で行います」
(Hutchinson博士)

プラズマとは、負の電荷を帯びた電子が正 の電荷を帯びた原子核から完全に分離され た帯電した気体であり、我々が使用している このプラズマを閉じ込める容器は1950年代 にソ連の物理学者が最初にこのプラズマを 閉じ込める方法を考案したためロシア語の 「トカマク(Tokamak)」と呼ばれています。

進展

二つの話題のプロジェクト(JETとITER)がほ とんどのマスコミの注目を集めていますが、 実際にはもっと小規模で手頃な予算の取り 組みの方がより迅速に進展している可能性 があります。 

アビンドン(英国)の核融合エネルギーカ ルハムセンター(CCFE: Culham Centre for FusionEnergy)にある欧州トーラス共同研 究施設(JET: Joint European Torus)は、世 界最大・最強のトカマクです。「JETを使用し て、世界初の重水素と三重水素の核融合エ ネルギーの制御放出(1991年に実現)と核 融合エネルギーの世界記録を、1997年16メ ガ ワ ット 発 電 す る こ と に よ っ て 実 現 し て い ま す」と、CCEFのエンジニアGreg Keech氏は 述べています。

これは核融合からエネルギーを生み出せ る こ と を 証 明 し ま し た が 、J E T で は こ の 1 6 メ ガワットの核融合エネルギーを出力する のに24メガワットを入力する必要がありま した。「次の段階は入力以上のエネルギー を得ることです」と、Keech氏は言います。 「そして、それはITERが実現するでしょう」 (Keech氏)

J E T の 最 も 身 近 な ラ イ バ ル が I T E R( I n t e r n a t i o n a l ThermonuclearExperimentalReactor:国 際 熱 核 融 合 実 験 炉 、ラ テ ン 語 で「 道 」の 意 味 ) です。ITERは130億ユーロ以上の費用をか け、世界で最も大掛かりなエネルギープロ ジェクトと呼ばれています。35カ国の連合が ITERに協力しており、長さがJETの2倍で容 積が10倍のトカマクの製作成に取り組んで い ま す 。「 I T E R は 現 在 フ ラ ン ス 南 部 の サ ン ・ ポール・レ・デュランスに建設中であり、消費 電力の10倍の電力を生み出すように設計 さ れ て い ま す 」と 、I T E R の 広 報 責 任 者 L a b a n Coblentz氏は語ります。

「 実 用 的 な エ ネ ル ギ ー 量 の 生 成 に 成 功 し た ら、ITERプロジェクトは送電網に電力を供 給 す る 最 初 の 核 融 合 施 設 に な る こ と が 期 待 さ れ る 、実 用 化 に 近 い プ ロ ト タ イ プ と な る で し ょ う 」と 、K e e c h 氏 は 述 べ て い ま す 。D E M O は「Demonstration Power Plan(t 実証動力 炉)」の略です。

時間の問題

これらのプロジェクトが成功したら、特に大 規模に持続可能エネルギーを作り出す必 要がある都市化が急速に進んでいる途上 国 に と っ て は 莫 大 な 可 能 性 が あ り ま す 。「 核 融合は私たちの生活を変えるでしょう」と、 Keech氏は言います。「発展途上経済、新興 工業国、先進国世界が同じように豊富なエ ネルギーを利用できるようになるでしょう」 (Keech氏)

CCFEの責任者Steven Cowley氏は別の言 い方をしています。「核融合は40~50億年 後に太陽に飲み込まれるまで世界に電力を 供給できる理想的なエネルギー生成方法で す 。 」 と 、 C o w l e y 氏 は 言 い ま す 。「 し か し な が ら 、核 融 合 は 、実 現 が と て も 難 し く 費 用 の か かるのも事実です」(Cowley氏)

問 題 点 も あ り ま す 。I T E R プ ロ ジ ェ ク ト は 費 用 と複雑さを伴うため、2050年の2025 DEMO の完成予定まで完了の見込みはないと Keech氏は語ります。また、核融合エネル ギーは研究が成功したとしても、おそらく 2070年までは広く利用できることはないで しょう。 

“FUSION WILL TRANSFORM OUR LIVES.” 

GREG KEECH
ENGINEER, CULHAM CENTRE FOR FUSION ENERGY

眉唾ものか

批評家は、これらの核融合炉が決して商業 ベースでエネルギーを作り出すことができ ず、未知の危険性を引き起こすことを懸念 し て い ま す 。核 融 合 炉 は や は り 、今 日 の 核 分 裂炉のように放射性廃棄物をもたらします。 「ITERは再生可能資源や省エネなどのエ ネルギー問題から注意をそらそうとしてい ます」と、SortirduNucléaireのCharlotte Mijeon氏はSmartPlanet.comの2013年の 記事で述べています。

このような理由から、アムステルダムに拠点 を置くグリーンピース・インターナショナルの 核エネルギーおよびエネルギー政策の専門 家でポーランドに住むJan Haverkamp氏は、 核融合エネルギーは決して有望なエネル ギー源になることはないと主張しています。

「1979年に原子物理学の教授は、私に核 融合エネルギーは50年先の話だと話し ま し た 」 と 、 H a v e r k a m p 氏 は 語 り ま す 。「 現 在でも50年先の話です。「The Energy [R] evolution Scenario」やその他のレポート は、再生可能エネルギーがご存知のように 世界に電力を供給でき、それをより公正な 方 法 で 実 現 で き る こ と を 示 し て い ま す 。核 融 合エネルギーは誇大妄想的な技術的解決 策にすぎません」(Haverkamp氏)

米ニュージャージー州にあるエネルギー 省プリンストンプラズマ物理研究所(PPPL: Princeton Plasma Physics Laboratory)の 所長Stewart Prager氏はこのようなコメン トは短絡的であると考えており、結果がわか るまで核融合エネルギーの可能性を無視す る の は 無 謀 で あ る と 主 張 し て い ま す 。「 再 生 可能エネルギーだけで将来に十分なエネル ギーを供給できるかどうかは誰にもわかり ま せ ん 」 と 、 P r a g e r 氏 は 言 い ま す 。「 す で に こ こまで来ており、時間や費用を障害にするわ けにはいきません」(Prager氏)

欧州の核融合研究者のために英国オックスフォードシャー州アビンドンにある核融合エネルギーカルハムセンターが運営する欧州トーラス共同研究施設(JET)実験の内部 (Image: © CCFE)

代わりの道筋

ITERは計画の遅れと予算超過に悩まされて お り 、費 用 は 5 0 0 億 ド ル 以 上 に お よ び 、プ ロ ジェクト当初の見積りの約10倍に達しかね ません。その一方で、世界中で進行中のいく つかの小規模な単独の核融合プロジェクト の方が費用と商用化に要する時間の双方と も削減に成功しているように見えます。

米カリフォルニア州アーバインのすぐ東、 サンタアナ山脈の懐にある企業、Tri Alpha Energyは、トカマクよりも小規模かつ簡単で 費用がかからないとうたわれる線形原子炉 の試験を行っています。この原子炉は、30年 から50年と見積もられているトカマクには るかに先んじる10数年で商用核融合エネル ギーをもたらす可能性があります。

一方、カナダのバーナビーでは、General Fusionの研究者が蒸気駆動ピストンを使っ た原子炉を設計しています。General Fusion はベンチャー投資家やカナダ政府から約1億 米ドルを調達しています。「General Fusion が成功したら、他の取り組みより数十年先ん じて現実の核融合動力炉となるでしょう」と、 同社の技術および企業戦略略部門のバイス プレジデントであるMichael Delage氏は語 ります。

全般的に見れば、業界専門家は核融合の未 来に自信を持っています。「胸躍る時期です」 と 、 D e l a g e 氏 は 言 い ま す 。「 こ こ 何 年 か の う ちに、おそらく全世界の一つ以上のプロジェ クトが核融合による電力の生産に成功する と確信しています」(Delage氏)

Hutchinson氏は、核融合はいつか実現する だけでなく実現しなければいけないと考え て い ま す 。「 か な り の 労 力 を 払 わ な け れ ば い けませんが、核融合は将来世代にとって不 可欠なエネルギーです」(Hutchinson氏)

核融合の潜在力は世界を変えるとPrager 氏は言います。「将来は核融合エネルギー に な る こ と に 疑 問 の 余 地 は あ り ま せ ん 」と 、 P r a g e r 氏 は 語 り ま す 。「 今 後 数 年 間 に 与 え る 衝撃に対して私が感じる興奮を言葉で表す ことは困難です」(Prager氏) ◆ 

Will fusion power become a reality?
http://bit.ly/FusionReality

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